(No.85)

セーシェル-ペスト疑い例
11月02日更新

 2017年8月以来、マダガスカルは主要都市と他の非流行地域における大きなアウトブレイクを経験しています。このアウトブレイクは近隣のインド洋諸島へと広がっていく中等度のリスクをもたらします。このリスクは肺ペストの潜伏期(曝露から発症までの時間)が短いことと、空港及び他の主要な港湾における出国時スクリーニング対策によって緩和されています。詳細情報は以下の報告で閲覧することができます。

Plague outbreak situation reports

 2017年10月10日、セーシェル保健省は世界保健機関(WHO)に対して肺ペストの可能性の高い感染例を報告しました。この可能性の高い患者は、マダガスカルを訪問し、2017年10月6日にセーシェルに戻った34歳の男性です。2017年10月9日に急性の呼吸器症状を発症し、地域の保健センターを受診しました。診察と報告された最近のマダガスカルへの渡航歴にから肺ペスト感染が疑われ、直ちに隔離され、治療を受けられる病院へと紹介されました。
 10月11日に国内で実施された喀痰の迅速診断検査は弱陽性でした。2017年10月9日から11日にかけて、8人の接触者が軽度の症状を呈し、隔離されました。この他に、マダガスカルへの渡航歴がなく、可能性の高い感染例と疫学的に無関係な2人の疑い例が特定され、隔離され治療を受けています。
 合計10の検体が可能性の高い感染例(34歳男性)を含む疑い例から採取され、フランスのパスツール研究所に送られ検査されました。そして10月17日にすべて陰性であったと判明しています。
 10月13日は、搭乗機の乗客41人と乗員7人、近親者12人と可能性の高い感染例が受診した保健センターのスタッフと患者18人を含む320人を超える接触者に対する健康監視の最後の日でした。発症予防ために、全員に予防服用の抗生剤が提供されました。
 全体で1,223人の接触者が登録され、フォローアップされました。そのうち833人の接触者には予防的抗生剤投与がなされました。4人の疑い例が接触者の中から発生し、治療が行われました。
パリのパスツール研究所での陰性結果を受けて、病院に隔離されていた接触者は可能性例も含めて全員退院しました。確認された接触者については健康状態や症状のモニターと共に予防内服は中止されました。
 
公衆衛生上の取り組み

 2017年10月10日、危機緊急委員会(Crisis Emergency Committee)が、サーベイランス、接触者追跡、症例管理、隔離及び物品の供給を調整するため立ち上げられました。
 政府は、委員会の介入をサポートするために臨時隔離病棟の設置、(一方で既存の病棟の拡充)、主要な物品の調達、接触者追跡と接触者追跡要員のための拡大研修などに予算を配分しています。
 セーシェル航空のマダガスカル便は、マダガスカルからの更なる感染例の輸入の可能性を減らすために、10月8日から運行中止となりました。WHOは、渡航と貿易の制限を推奨していません。
 2017年10月10日、マダガスカル保健省は、WHOからの支援を得て、国際的な拡散を防ぐためにアンタナナリボ(Antananarivo)の国際空港における出国時スクリーニングを実施しました。WHOと支援組からのさらなる支援により、国際的な感染拡大を回避するための入国地点における対策強化が計画されています。
 WHOは、セーシェルの政府に対してWHO国際保健機側(IHR)に基づき、サーベイランスの強化、疑い例の隔離と治療、接触者の追跡調査、発病の可能性のある接触者への予防的治療など公衆衛生対策の実行をアドバイスしています。

WHOによるリスク評価

 ペストはエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)という、通常小さなほ乳類やそれらの動物に付くノミに見いだされる人獣共通感染を起こす細菌によって起きる感染症です。ノミによって動物間で感染伝播します。ヒトは感染ノミに咬まれるか、感染動物への直接接触、吸入によって汚染されます。
ペストには感染経路により3つの形態があります。腺ペスト、敗血症型ペスト、肺ペストです。
 肺ペストは最も病原性が強いペストの病型で、飛沫によりヒトからヒトへと深刻な感染を引き起こす可能性があります。潜伏期間は24時間以内まで短くなります。典型的には、肺ペストの病型は進行した腺ペストが肺まで広がったものです。しかし二次性の肺ペスト患者はエアロゾル化した感染飛沫を形成し、飛沫感染によりペストを他のヒトへ感染させます。未治療の肺ペストは通常致死的です。
 ペストはセーシェルにおいてかつて一度も報告されたことはなく、現段階において、厳密には確定された患者はいません。過去に疑い例あるいは可能性例とされたケースで死亡例はありません。セーシェル政府は、強化されたサーベイランス、隔離、疑い例への治療、接触者追跡、接触の可能性のある者への予防的治療と主要港における入国時のスクリーニングを含む予防対策を確立しました。WHOの指導のもと、10月17日には追加された医療従事者と接触者追跡調査を行うボランティアに対するトレーニングが実施されました。セーシェルで肺ペスト患者が発生する危険性は低いと考えられ、地域全体及び世界レベルでのリスクは極めて低いと考えられます。

WHOからの旅行アドバイス

 現段階では、セーシェル領域内でペスト患者は確認されておらず、国際旅行者がペストに接触するリスクは非常に低いです。WHOは入手可能な情報に基づいて、セーシェル又はマダガスカルへの渡航や貿易のいかなる制限を推奨しません。
 2017年10月3日、マダガスカルにおけるペストのアウトブレイクに関連して国際旅行者のためのアドバイスを公表しましたが、それはセーシェルへの旅行者にとっても従うべきものです。

Plague - Madagascar
国際旅行者のための情報

 10月11日、保健省はそのウェブサイト上のプレスリリースにおいて、肺ペストに対するいくつかの対策を発表しました。これらの対策の多くは国際的な交通を著しく阻害するものであるため、10月13日保健省は、国際保健機側(IHR,2005)の43.3条項によって求められていることが、これらの対策の科学的な実証と公衆衛生上の根拠を提供するであろうとWHOに通知しました。

Measures reinforced to contain pneumonic plague
 セーシェル共和国保健省
International Health Regulations (2005)
予防対策を含むペストに関するさらなる情報について、WHOのペストのウェブサイトをご覧下さい。
Plague

【出典】WHO
Emergencies preparedness, response
Seychelles – Suspected Plague (Ex- Madagascar)
Disease outbreak news
26 October 2017
http://www.who.int/csr/don/26-october-2017-plague-seychelles/en/