(No.88)

マールブルグ病-ウガンダ
11月16日更新

 2017年10月17日、ウガンダ保健省(MoH)はウガンダ東部のクウェエン県(Kween)でマールブルグ病の流行が確認されたことを世界保健機関(WHO)に通知しました。2017年10月19日にウガンダ保健省は公式に流行を宣言しました。

 11月3日の時点で、これまで報告された3人(2人の確定例、1人の可能性例。後者は集団発生の最初の患者。)は死亡しました。そのため結果的に全体の致死率は100%となっています。患者には疫学的関連があり、1つの家族集団です。

 2番目の確定例は、死亡の前にケニアに渡航していました。ウガンダのカプコルワ(Kapchorwa)地区にあるクウェエン県およびケニアの西ポコット(Pokot)とキタレ(Kitale)県では、接触者の追跡と積極的な症例探索が進行中です。11月4日、2番目の確定例と危険性の高い接触者であるクウェエン県の医療従事者は、発症しクウェエン県にある治療施設に入院しました。さらに2番目の確定例に濃厚接触した1人はカンパラ(Kampala)に旅行していたことが報告されました。カンパラ市当局は彼女が訪れた村にチームを派遣し、接触者を追跡し、21日間のフォローアップを継続しています。

公衆衛生上の取り組み

・ウガンダ保健省はWHOと支援組織の協力のもとに、速やかにこの流行への対応に取り組んでいます。
・接触者の追跡と保健施設や地域レベルでの積極的な症例探索は現在進行中です。死亡者の報告は埋葬前の
 マールブルグの疑いについて調査され、疑わしい死亡者は安全で尊厳のある埋葬を受けました。
・隔離と治療の施設(設備)はWHO、UNICEF、そしてMSF(国境なき医師団)の物流協力を受けてカプコ
 ルワで組み立てられました。完全なトリアージ手順が実装されました。
・社会的動員とリスクコミュニケーションは現在進行中です。赤十字のボランティア、UNICEFやWHOの
 コミュニケーション専門家の協力を得て、4,000人の地域構成員がマールブルグ病に関する情報を受けまし
 た。
・心理社会的支援の専門家がクウェエン県に配備され、マールブルグ病で死亡した人の家族、医療従事者、
 そして他の地域の構成員にカウンセリングが行われています。
・入院患者の死亡を引き起こす医療従事者による誤った行動の噂や治療センターの不安を取り除くために、
 カプコルワとクウェエン県で治療施設のガイド付きツアーが組織されました。
・2017年11月7日カプコルワにおいて、ウガンダとケニアの保健当局では国境を越えた会合が予定されてい
 ます。また国境を越えた症例調査が進行中です。
・ケニアでのマールブルグ病流行について、緊急時対応策と公衆衛生緊急時オペレーションセンターが動き出
 し、準備対策も開始しました。
・2,000個の個人防護具がWHOから発送され、ケニアのトランスンゾイアカウンティ(Trans Nzoia
 County)に運ばれました。
・血液検体が採取され、ナイロビにあるケニア中央医学研究所に発送されました。
・暫定的な治療センター(カイサンガット(Kaisangat)保健センター)が任命され、ケニア赤十字がマール
 ブルグ病の治療センターを管理するための看護師を募集し、再配備しています。
・UNICEFはコミュニケーション活動や地域の関わりを支援しています。
・フランス国境なき医師団は、ウガンダ(カプコロワとカプロン)およびケニア(カイサンガット)におい
 て治療センターを設立するための支援を展開しています。

WHOによるリスクアセスメント

 マールブルグ病は高い致死率(致死率23-90%)を持ち、新興で強い毒性を持つ伝染性感染症です。マールブルグ病の流行は稀です。このウイルスは感染した人や野生動物(例えばサル、オオコウモリ)の血液や体液および組織と接触することで感染します。

 実験的な治療と候補となるワクチンが、臨床試験で検討されています。

 ウガンダは以前、エボラとマールブルグウイルスの流行を管理した経験があります。ウガンダにおけるマールブルグ病患者は、コウモリの集団が生息している洞窟に入った鉱夫や旅行者の間で、歴史的に報告されています。マールブルグ病の流行は、以下のように記録されています:

・2007年―4人。ウガンダ西部のイバンダ(Ibanda)県で2人の死亡を含む。
・2008年―関連のない2人。ウガンダ西部の洞窟を訪れた後に、オランダとアメリカに帰国した旅行者。
・2012年―15人。ウガンダ西部のイバンダ地区とカバレ(Kabale)県で4人死亡を含む。
・2014年―1人。ウガンダ中央部ムピジ(Mpigi)県の医療従事者。

 現在、3人が特定されています:2人の確定例と1人の可能性例です。2番目の確定例は、死亡する前にケニアを旅行しましたが、これまでにウガンダ以外でのヒトーヒト感染は確定されていません。ウガンダの保健当局はこの事件に速やかに対応し、流行を制御するための対策が速やかに実施されています。ケニア保健当局は、緊急時計画と公衆衛生緊急時オペレーションを稼働し、準備対策も始めています。家族関係者、医療施設、伝統的埋葬儀式の環境における多数の潜在的接触者が対応のために要求されています。

 感染発生地域はケニアとの国境にある農村山岳地域にあり、エルゴン(Elgon)山国立公園の北側の斜面にあるカンパラの北東約300kmに位置しています。エルゴン山の洞窟は主要な観光名所であり、洞窟に生息オオコウモリの巨大集落があり、オオコウモリはマールブルグ病を伝染させることで知られています。ケニア国境に感染地域が接近していることや、感染地域とケニアの間で国境を越える往来があることおよびコウモリの集落間あるいはヒトへのウイルスの潜在的な感染があることは、国境を越えて広がるリスクを増加させます。これらの要因は、国や地域レベルで高いリスクがあることを示しており、国際的なパートナーの支援を得て迅速で調整された対応が必要です。洞窟やその周辺地域を含むエルゴン山への観光に対しては注意を払い、適切なアドバイスと警告を与えます。この事例について、グローバルレベルでの危険性は低くなっています。

WHOによるアドバイス

 マールブルグウイルスのヒトーヒト感染は主に血液や体液と直接接触に関連しています。そして適切な感染制御措置がとられていない場合、医療関連のマールブルグウイルスの感染が報告されています。

 医療従事者でマールブルグウイルスの疑い例や確定例をケアする際は、全ての血液や体液への曝露、および汚染された可能性がある環境に対して防具なしで接触を避けるため感染制御措置を講じる必要があります。

 感染の発生した全ての保健区域では、接触者の追跡や活動性のある症例の調査などのサーベイランスを強化する必要があります。

 マールブルグ感染おける危険因子について認識を高め、ウイルスへの曝露を減らす個人防護はヒトの感染と死亡を減らすための重要な措置です。重要な公衆衛生上の伝達事項は以下の通りです:

・オオコウモリの集団が生息している鉱山や洞窟への長時間曝露によって発生するコウモリ-ヒト感染の危険
 を減らすこと。オオコウモリの集団が生息している鉱山や洞窟での作業や調査活動または観光客が訪問し
 ている間は、手袋やその他の適切な防護具を着用すること(マスクを含む)。
・感染した患者、特に彼らの体液と直接または濃厚接触から生じる地域社会におけるヒト-ヒト感染のリスク
 を減らすこと。マールブルグ病患者との濃厚接触は避けるべきです。自宅で患者のケアを行う際には、手
 袋や適切な個人防護具を着用すること。自宅で患者のケアをした後と同様に、病院にいる病気の親戚を訪
 問した後にも定期的な手洗いを行うこと。
・マールブルグ病が発生している地域社会は、人々に十分な情報を提供するように努めるべきです。地域社
 会による偏見を避けるために病気の性質を伝え、また治療センターに早期に紹介し、死体の埋葬などによ
 る感染流行の拡散防止措置を促します。マールブルグ病で死亡した人々は迅速かつ安全に埋葬される必要
 があります。

 WHOは今回の事例で利用可能な最新の情報に基づいて、ウガンダまたは感染地域へのいかなる渡航や貿易の制限も推奨していません。エルゴン山のコウモリ洞窟に入る渡航者はコウモリによる曝露やヒト以外の霊長類と接触を避けてください。そして可能な限り手袋やマスクを含む防護具を着用してください。

 マールブルグ病についておよび予防、そして制御の方法についてのさらなる情報はこちらをご利用ください。

http://www.who.int/csr/disease/marburg/en/
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs_marburg/en/

【出典】Emergencies preparedness, response
Uganda and Kenya
Disease outbreak news  7 November 2017
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs_marburg/en/