(No.91)

ペストーマダガスカル
11月16日更新

 

 2017年8月1日以来、マダガスカルではペストの大規模流行が発生しています。2017年11月10日の時点で、マダガスカル保健省はペストの確定例、可能性例、疑い例を併せて2,119人をWHOに報告しました。これには171人の死亡者が含まれています(致死率8%)。

 2017年8月1日から11月10日までに、72人の死亡者を含む1,618人(76%)のが臨床的に肺ペストと分類されました。これには365人(23%)が確定例、573人(35%)が可能性例、680人(42%)が疑い例です。さらに、腺ペスト324人(15%)、敗血症型ペスト1人、分類中176人(8%)とWHOに報告されました(図1)。82人の医療従事者がペストに罹患しましたが、死者は出ていません。

図1.8月1日から11月10日までに、マダガスカルにおいて報告された臨床的な分類によるペストの確定例、可能性の高い例、疑い例と発症日


図2.8月1日から11月12日までに、マダガスカルにおいて報告された腺ペストの確定例、可能性の高い例、疑い例の地理的分布


図3.8月1日から11月12日までに、マダガスカルにおいて報告された肺ペストの確定例、可能性の高い例、疑い例の地理的分布


 2017年11月10日の時点で、追跡されている接触者は243人中218人(90%)に到達し、予防的抗菌薬を投与されています。この流行の発生以来、7,122人の接触者が特定され、7日間の追跡と予防的抗菌薬投与を終了したのは6,729人(95%)にのぼります。接触者の9人だけが症状を発症し、疑い例になりました。

 マダガスカルのパスツール研究所、マダガスカルにある国立WHO協力センターではペストの実験室診断が行われています。Y.pestis25株が培養され、全ての菌株がペスト制御のために国立プログラムで推奨されている抗菌薬に感受性がありました。

 マダガスカルではペストによる新たな患者数と入院数は減ってきています。最新の腺ペスト症例は10月24日に報告され、最新の肺ペスト確定例は10月28日に報告されました。

 ペストはマダガスカルの一部における風土病であり、WHOは、典型的なペスト流行期である2018年4月の終わりまでさらなる患者が報告されると見込んでいます。そのためペスト流行期が終わるまで制御措置を継続することが重要です。

公衆衛生上の取り組み

 マダガスカル保健省は、アンタナナリボ(Antananarivo)とトアマシナ(Toamasina)で危機管理チームを立ち上げており、全ての症例と接触者には治療薬と予防抗菌薬投与を無償で提供しています。

WHOによるリスクアセスメント

 10月中旬以降、ペストの新たな患者数、入院数、ペストを報告してくる地理的区域は減少しています。新たなペスト症例の報告の減少傾向と、ペストによる入院数の減少は勇気づけられることですが、WHOは2018年4月のペスト流行期が終わるまでマダガスカルの患者数が増えると予想しています。

 患者報告数の減少はペスト流行の終わりを示唆していますが、腺ペスト感染と、肺ペストによるヒトーヒト感染を最小化するために進行中の対策を続けることが重要です。

 ペストの新規患者数は1ヶ月以上減少傾向であり、流行への対策が効果的であることが示されています。WHOはマダガスカル保健省や他の支援組織と共に、この流行を制御する努力を継続しています。すなわち積極的な患者の発見と治療、包括的な接触者の確認と経過観察、予防的抗菌薬の投与、げっ歯類とノミの制御、安全で尊厳のある埋葬、そしてペストに対する準備や制御の長期戦略をたてることです。

WHOによる渡航者へのアドバイス

 これまでに利用出来る情報に基づくと、世界的にペストが流行する危険性は非常に低いとみられます。WHOはマダガスカルへの旅行や貿易に関するいかなる制限も行うべきではないとアドバイスしています。これまでのところ、国際旅行に関連した患者報告はありません。

【出典】 Emergencies preparedness, response
Plague – Madagascar
Disease outbreak news  15 November 2017
http://www.who.int/csr/don/15-november-2017-plague-madagascar/en/