(No.93)

黄熱―ブラジル
12月04日更新

 

 2017年の7月から10月中旬の間に、ブラジルのサンパウロ州で合計71人の黄熱の疑い例が報告されました。これらの感染例のうち、2人は確定し、6人は調査中で、63人は黄熱から除外されました。2人の確定例(そのうち1人は死亡しました)は、9月17日から10月7日にかけて同州のイタチバから報告されました。
 2017年9月10日から増加が報告されていたヒト以外の霊長類における580頭の流行が、7月から11月初旬にかけてサンパウロ州で報告されました。これらのうち、120頭が黄熱と確定診断され、233頭が調査中、74頭が分類不能、153頭が除外されました。霊長類における最も高い流行がカンピーナスの保健サーベイランスに登録されましたが、そこでは霊長類間の流行の最初の事例が、カンポ・リンポ・パウリスタ(2017年9月23日で終わる週)、アチバイア(2017年9月30日で終わる週)とジャリヌ(2017年10月14日で終わる週)の市町村において、報告されました。ヒト以外の霊長類における流行(2017年10月14日で終わる週)が、サンパウロ市市街地に位置する大きな公園でも報告されました。

公衆衛生上の取り組み

 2人のヒトの黄熱確定例とサンパウロ州における霊長類間の流行及びサンパウロ市市街地における動物の確定例により、以前は黄熱の感染伝播のリスクがないと見なされていた地域における予防接種キャンペーン開始することを、国の機関が指示しました。さらに、州と市町村の保健当局は保健ケア・サービスを強化し、リスク・コミュニケーション活動を実施しています。

WHOによるリスク評価

 これらは、2017年6月以来ブラジルで報告された最初のヒトの黄熱感染例です。これらの感染例は、以前は黄熱のリスクとは考えられていなかったサンパウロ市の市街地や市町村における動物間の流行と並んで発生していて、公衆衛生上の懸念となっています。ブラジルの保健当局は、この事例に対して、集団予防接種キャンペーンを含む一連の公衆衛生上の対策を迅速に実施してきましたが、これらの地域における大勢の感受性のある人たちに対して適切な接種率に達するまである程度の時間がかかるかもしれません。現在、サンパウロ市における未接種の人数は1千万人と高いままです。もし黄熱の伝播が以前は黄熱のリスクが考慮されていなかった地域へと広がり続けた場合、ワクチンの確保や制圧対策の実施は著しい困難に直面することになるでしょう。
 今日まで、2016年に始まったブラジルのこのアウトブレイクとの関連で、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)が媒介しているという証拠はありません。選ばれたサンパウロ州の市町村で実施された昆虫学的研究は、ネッタイシマカとヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の侵淫度が低い(サナギ指標pupa indexの範囲は0~3.1%)ことを示しましたが、ヒトスジシマカによる高い伝播のリスクは依然存在しています。
 近隣諸国の予防接種率は高いことから、地域レベルの感染拡大のリスクは低いと考えられていますが、オイアポケ、仏領ギアナとブラジルの間の国境の河川で、2017年8月フランスの保健当局者によってヒトの黄熱の感染例が発見されたことは、地域への感染拡散のリスクが存在していることを示しています。世界レベルのリスクは低く、流行地域から帰国する予防接種をしていない旅行者にのみ限定しています。黄熱ウイルスに感染して帰国する旅行者は、媒介可能な昆虫が存在する地域において、黄熱感染伝播の地域内サイクルを確立してしまうリスクを増大させる可能性があります。
 WHOは疫学状況を監視し、入手可能な最新の情報に従ってリスクを評価します。

WHOによるアドバイス

 黄熱の感染リスクがあるブラジルの地域を訪問することを計画している旅行者へのアドバイスは、渡航の少なくとも10日前には黄熱ワクチンを受けること、そして蚊に刺されないための対策を実施することと黄熱の症状と徴候を知っておくことです。WHOは旅行者が黄熱のリスクのある地域に滞在している時、そしてそこから帰国した時の健康志向の行動(health seeking behavior)を奨励し続けています。
 2005年の国際保健規則(IHR 2005)の附則7(Annex7)によれば、黄熱ワクチンを1回接種すれば持続した免疫を獲得するに十分であり、黄熱から一生涯予防できます。黄熱ワクチンの追加接種は必要ありません。もし、医学的な根拠から、旅行者が黄熱の予防接種を受けられない場合は、IHR2005の附則6と7にあるように関係当局によって証明されなければなりません。
 WHO事務局は、この事例に関して現在入手可能な情報に従って、ブラジルへの渡航や貿易におけるいかなる制限も推奨しません。
【出典】 
Emergencies preparedness, response
Yellow fever – France – French Guiana
Disease outbreak news
24 November 2017
http://www.who.int/csr/don/24-november-2017-yellow-fever-brazil/en/