(No.97)

バングラデシュ コックスバザールにおけるジフテリア
12月15日更新

 

 2017年11月3日から12月12日の間に、15人の死亡を含む804人のジフテリア疑い患者がコックスバザールにおけるロヒンギャ難民の間で発生していることが報告されています。初発の疑い例は2017年11月10日に国境なき医師団(MSF)のクリニックで報告されました。疑い症例のうち73%は15歳未満で60%は女性(1%については性別についての報告がなされていません)です。ジフテリア疑い例の15人の死亡例の中で14人は15歳未満の小児です。

Fig. バングラデシュ コックスバザールのロヒンギャ難民にみられたジフテリア患者数。2017年11月3日~2017年12月12日までの発症数、(発症日は45例【5.6%】で不明です。)

公衆衛生対策
 2017年8月から646,000人以上の人々が隣国のミャンマーから人口密度の高いキャンプや一時居住地に集まってきていますが、同地では清潔な水や下水、医療機関などへのアクセスが悪くなっています。バングラデシュの保健家族福祉省の指導により、多局共同ジフテリア対策チームは難民に対して 医療および公衆衛生サービスを提供してきました。世界保健機関(WHO)は300万米ドルを緊急対応基金(CFE)から拠出してバングラデシュにおける基本的医療サービスのサポートを行っています。

WHOのリスクアセスメント
 WHOは医療専門家と共同で5価ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、b型インフルエンザ菌、B型肝炎)、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)を生後6週から6歳を小児に実施すると共に、破傷風ジフテリア(Td)ワクチンを7歳から15歳までの小児に対して行っています。必須の医薬品や対策に必要な供給や支援はWHOとそのパートナーによりリストアップが終了されています。インド血清学研究所は5価ワクチン300,000回分を対策として提供しています。
 今回のコックスバザールでのアウトブレイクは急速に拡大しています。現時点で疑い患者は全て、困難で密集した状況に置かれているロヒンギャ難民の一時居住地で発生しています。ジフテリアのアウトブレイクが現にあること自体、ワクチンの接種率が低いことを示していますが、ロヒンギャ難民の間におけるジフテリアトキソイド含有ワクチンの接種率を評価するのは困難です。バングラデシュにおける入手可能なワクチン接種に関するデータによれば、ジフテリアトキソイド含有ワクチンの接種率は高いとされています。しかしながら,地域の住民に感染が拡がることを否定はできません。WHOはバングラデシュ国内での拡大リスクは中等度であり、WHOの管轄地域および世界レベルでの拡大のリスクについては低いと考えています。

WHOよるアドバイス
 WHOはジフテリアの抗毒素、抗生物質、感染予防とコントロール対策からなるWHOのガイドラインに基づいて、時を失せずジフテリアが疑われる患者に対して治療をすることを推奨しています。若年の小児、ジフテリア患者との接触者、医療従事者は優先的にワクチン接種を受けるべきです。協同した対策と一般社会におけるその実践がさらなる感染の拡大のリスクを減らし、アウトブレイクのコントロールの助けとなります。

 ジフテリアに関するより詳細な情報は以下のリンクを参照してください。
WHO fact sheet on diphtheria

【出典】Emergencies preparedness, response  Disease outbreak news
Diphtheria – Cox’s Bazar in Bangladesh
http://www.who.int/csr/don/13-december-2017-diphtheria-bangladesh/en/