(No.99)

ナイジェリアにおけるサル痘患者
12月22日更新

 

 2017年9月20日、ナイジェリア・バイエルサ州はヒトのサル痘感染疑いのアウトブレイクを世界保健機関(WHO)に報告しました。ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)国家標準検査機関、ダカールパスツール研究所、オルソポックスウイルスWHO共同研究所、米国アトランタ疾病予防管理センター(USCDC)により検査が実施されています。

 9月4日から12月9日の間に172人の疑い患者と61人の診断確定患者がナイジェリアの各地から報告されています。診断確定例は(同国の36州のうち)14の州および地区から報告されています。アクア・イボム、アビア、バイエルサ、ベヌエ、クロスリバー、デルタ、エド、エキティ、エヌグ、ラゴス、イモ、ナサラワ、リバーズの各州および連邦首都地区(FCT)で診断確定例が報告されており、疑い例は以下の23の州および地区から報告されています。アビア、アダマワ、アクア・イボム、バイエルサ、クロスリバー、デルタ、エド、エキティ、エヌグ、FCT、イモ、カドゥナ、カノ、カツィナ、コギ、クワラ、ラゴス、オンド、オヨ、ナサラワ、ナイジャー、リバーズの各州となっています。
 症例の大半は男性で(75%)で21-40歳(中央値30歳)となっています。レトロウイルスに対する治療が行われていなかった免疫抑制患者が1人死亡したことが報告されています。集団発生は各州内で起こっていますが、州間の疫学的なつながりは証明されていません。さらに各州内および州間で同定されたウイルス遺伝子配列から、ヒトへの感染は多発性に起こっていることを示唆しています。さらなる疫学的調査が実行されています。

公衆衛生上の取り組み

 NCDCでは緊急対策センター(EOC)の機能を廃止しているために、すべての現存する対策パートナーから構成される技術的ワーキンググループとの協働で対応することになります。診断確定患者が発生した州においてはNCDCが緊急対策チーム(RRTs)を配置し、その他の州についてはNCDCによる遠隔技術サポートが実施されます。サーベイランス、患者調査、接触者追跡調査が実施されています。2017年11月4日にサーベイランスおよびアウトブレイク対策マネージメントシステム(SORMAS)が設置され、データの処理とリアルタイムな患者と接触者のマッピングの強化に活躍しています。患者治療の施設は隔離のためのユニットも含めて設置され、緩和ケアが実施されています。患者治療のための医療従事者へのトレーニングが実施され、サル痘の危険性に対する国民へのコミュニケーションについてはマスメディアを通じて重要メッセージの流布、プレスリリース、メディアからの声明などが実施されています。

WHOによるリスク評価

 サル痘は中央および、西アフリカで孤発的に起こる人畜共通感染症です。オルソポックスウイルスによる感染で致死的になることもあります。症状はヒトの痘瘡(1980年に撲滅)と同様ですがヒトの痘瘡ほどには症状は重篤ではありません。特異的治療はなく自然寛解し、症状は2-3週間で軽快します。治療は対症療法ということになります。今回のナイジェリアにおけるアウトブレイクは1978年以来のことです。ウイルスは感染した動物(ラット、リス、サル、ヤマネ、背筋ネズミ、チンパンジー、その他の齧歯類)の血液、体液、皮膚粘膜の損傷部との接触でヒトに感染します。ヒト-ヒトの2次感染は限局的で感染したヒトの呼気飛沫やそれにより汚染された物を介して起こります。

WHOによるアドバイス

 サル痘のアウトブレイク中は呼気の飛沫、体液との直接接触、患者の皮膚創部との接触、患者の分泌物や創部で汚染されて間もない衣類のような物などが、最も感染のリスクが高くなります。ワクチンや特異的治療法がないので感染の危険性を減らす唯一の手段は、齧歯類のような野生動物との接触を減らすべく国民が警戒をするように意識づけること、ウイルスへの曝露を減らすためにできる対策を教育することです。サーベイランスによる対策と新規患者発生時にすばやく同定することがアウトブレイクの封じ込めには必須です。
 国民への保健衛生教育的メッセージでは以下の様なリスクについて焦点があてられています。
 *動物からヒトへの感染リスクを減らす事感染が発生している地域では野外で見つけられた病弱動物あるいはその死体を触ったり、喫食したりすることを避けることに重点をおくこと。疾病に罹患している動物やその感染性の組織を扱う際には手袋と適切な感染防御衣を着用すること。
 *ヒトヒト感染のリスクを減らす事 サル痘に感染しているヒトは隔離され、感染症患者を扱う医療施設において感染予防とコントロール対策が実施されるべきです。サル痘に感染したヒトと濃厚な物理的接触は避けなければなりません。手袋、フェイスマスク、感染防御ガウンはどのような環境下でも病人を扱うときには装着されるべきです。病人を訪問したり、治療をした後には必ず手洗いを実施すべきです。

WHOは利用可能な情報に基づいてナイジェリアへの渡航や交易のいかなるものも制限する事を推奨していません。現時点では国際間の旅行者がナイジェリアでサル痘と接触する危険性は低いです。

サル痘に関するより詳細な情報については以下のリンクを参照ください。
WHO factsheet on monkeypox

【出典】
Emergencies preparedness, response
Monkeypox – Nigeria
Disease outbreak news
21 December 2017
http://www.who.int/csr/don/21-december-2017-monkeypox-nigeria/en/