(No.11)

リフトバレー熱―ガンビア

2月27日更新

 2018年1月3日セネガル保健省(Ministry of Health)は、WHOに対してガンビア在住の52歳の韓国人男性のリフトバレー熱の感染例を通知しました。この症例はダッカの病院から報告されたものです。
 この患者は12月5日に、彼の兄弟と二人の同僚とともに、ガンビアのバンジュール(Banjul)からセネガルのジガンショール(Ziguinchor)へ、ジガンショールから南部ギニア盆地のブバ(Buba)へと旅行しました。12月10日、ギニア・ビサウの首都であるビサウに滞在中に乾性咳嗽、熱、関節痛を含む症状を呈するようになりました。また、この患者の兄弟と運転手も12月10日に乾性の咳嗽が出現しましたが、その翌日で消失しました。
 このグループは、ジガンショールに立ち寄った後、12月12日にガンビアに帰国しました。患者にはこの間も持続性の咳嗽があり、バンジョールに戻った後は、熱や頭痛、めまいも呈するようになりました。
 この患者は、12月20日に入院し、重症のマラリアと診断されました。マラリアの血液塗抹標本は、100,000/μLの熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)血症を示しました。12月23日、患者は譫妄状態となり、下痢と嘔吐、出血症状が出現しました。12月25日、患者は昏睡状態となり、セネガルのダッカに医療搬送されました。症状は改善し、12月26日、28日と30日に血液検体が採取されました。2017年12月31日に出血症状が再発し、その日に死亡しました。
 この患者の血液検体は、ダカールのパスツール研究所にて検査されたところ、リフトバレー熱ウイルスに対するIgM抗体が陽性でした。リフトバレー熱ウイルスと他のアルボウイルスは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)では検出されませんでした。この患者が生肉を扱っていたとの既知の経歴はありません。

公衆衛生上の取り組み

Ÿ 最初の症例調査は、セネガル保健省の健康危機対策センター(Centre of Health Emergency Operation)からの集学的なチームによって実施されました。
Ÿ この調査の一部分として、血液検体がこの患者の兄弟、同僚、咳嗽があった運転手から採取されました。これらの検体は、全てRT-PCR法でリフトバレーウイルス陰性でした。
Ÿ さらに2回目の調査が、ガンビア保健省の流行疾患と疾病対策ユニット(Epidemic and Diseases Control Unit)と農業省の家畜部門(Department of Livestock)の協力の下に、集学的チームによって実施されました。

WHOによるリスク評価

 リフトバレー熱のアウトブレイクはガンビアとその近隣諸国では珍しいことです。ガンビアで起きた最も近年のヒト感染例は、2002年に起きました。現在、ギニア盆地のガンビアやセネガルにおいてリフトバレー熱のアウトブレイクのリスクの兆候はありません。
 大量の降雨とその結果生じる洪水、そしてリフトバレー熱媒介昆虫の大量発生は、リフトバレー熱のアウトブレイクと密接に関連しています。リフトバレー熱は交易の減少と、感染した反芻動物における高い死亡率と流産率とによって著明な経済的損失の原因となり得ます。従って、ヒトと動物双方に向けた総合的な制圧対策が必要です。これらの対策には、リスクのある集団に対する教育キャンペーンも含んでいます。

WHOによる助言
 リフトバレー熱は蚊によって媒介されるウイルス性の人獣共通感染症で、主に動物に感染しさらにヒトに対しても感染する能力を持ちます。ヒト感染の多くは、感染した動物の血液や臓器に直接的にあるいは間接的に触れることに由来しています。遊牧民や農民、屠畜場の作業員、獣医師がより大きな感染リスクを持っています。リフトバレー熱のリスク要因と蚊刺されに対する予防についての知識普及が、ヒトの感染と死亡を減らす唯一の方法です。リスク軽減のための公衆衛生対策は以下の点について焦点が当てられます。

Ÿ 安全でない動物の飼育や屠畜作業を避けることによる動物―ヒトの感染伝播を減らすこと。手指衛生の実践と病気の動物や動物の組織を取り扱うときや動物を屠殺するときに、手袋や他の個人防御器具を装着することが推奨されます。
Ÿ 生や加熱滅菌されていないミルクや動物組織の安全でない喫食を避けることで動物―ヒトの感染伝播を減らすこと。流行地域では全ての動物の肉は食べる前にしっかりと調理されるべきです。
Ÿ 殺虫剤の噴霧や殺幼虫剤の使用による蚊の生育を減らすこと、また殺虫剤が塗布された蚊帳や虫除け薬の使用、衣服で覆うこと、そして媒介昆虫種の吸血のピーク時の戸外での活動を避けること等を含む媒介昆虫征圧対策の実施を通して蚊に刺されるリスクを減らすこと。
Ÿ このウイルスの感染地域から非感染地域への拡散を減らすために家畜の移動を制限または禁止すること。

 リフトバレー熱のアウトブレイクを予防するために、動物の定期予防接種が推奨されます。予防接種は、ウイルスの針による伝播によって家畜の群れの間の感染伝播を強めてしまう可能性があるので、アウトブレイクの期間の予防接種は推奨されません。動物におけるリフトバレー熱のアウトブレイクは、ヒトの感染へと進んでいくので、獣医学と公衆衛生当局に対して早期警告を提供するために積極的な動物健康サーベイランス・システムが必須となります。

 世界保健機構(WHO)は、この事象について現在入手可能な情報に基づき、ガンビアへのいかなる旅行や貿易の制限も推奨しません。


【出典】 
WHO Emergencies preparedness, response 
Disease outbreak news
http://www.who.int/csr/don/26-february-2018-rift-valley-fever-gambia/en/