(No.14)

ナイジェリアにおけるラッサ熱

3月7日更新

 2018年1月1日から2月25日の間に90人の死亡を含む疑い患者1,081人が18州(アナンブラ、バウチ、ベヌエ、デルタ、エボニー、エド、エキティ、連邦首都地区、ゴンベ、イモ、コギ、ラゴス、ナサラワ、オンド、プラトー、リヴァーズ、タラバ)で報告されています。その間317人が確定診断され、8人が可能性例となり、72人が死亡しています。(疑い例と確定例の中では致死率は22%です。)総数2,845人の接触者が18州で確認されています。

 14人の医療従事者が6州(ベヌエ、エボニー、エド、コギ、ナサラワ、オンド)で感染しています。そのうち4人が死亡しています。(致死率29%)2月18日現在14人の医療従事者のうち4人でラッサ熱の診断が確定しています。

 ラッサ熱患者治療センターは4州(アナンブラ、アバカリキ、エド、オンド)で稼働しています。これらの治療センターに従事している医療者は標準感染コントロール及び予防策(IPC)をトレーニングされており、同時に個人防護装備(PPE)を使用しています。さらにコミュニティーで報告のあった疑い例及び死亡例についてはフィールドチームにより活発に調査され、接触者のフォローアップが行われています。現在3カ所の検査施設が稼働しており、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によりラッサ熱に対する検査が実施されています。世界保健機関(WHO)はアウトブレイク対策のサポートを継続しており、その範囲は主に、強化されたサーベイランス、接触者の追跡調査、診断能力の強化、リスクコミュニケーションなどにわたっています。
 
 ラッサ熱は西アフリカのガーナ、ギニア、マリ、ベナン、リベリア、シエラレオネ、トーゴ、ナイジェリアに風土病的に存在します。2018年2月22日現在、ナイジェリア国内で感染した10人の疑い例がベナンで報告されています。また診断確定例がナイジェリアと接するベナンで報告されてきました。ベナンと接するナイジェリアの1州とカメルーンと接する2州でラッサ熱のアウトブレイクが現に存在すると考えられます。ラッサ熱はカメルーンでは風土病として存在せず、近年はラッサ熱の報告はありませんでした。

公衆衛生対策
・国家ラッサ熱緊急対策センター(EOC)が1月22日にナイジェリアの首都アブジャで発足し、WHOおよび
 その他のパートナーとの協働の対策をコーディネートしています。
・ナイジェリア疾病予防管理センター(NCDC)のスタッフとナイジェリア伝染病学ラボ研修プログラム
 (NFELTP)のレジデントがエボニー、オンド、エドの3州のアウトブレイクに対してその対応のために
 派遣されています。
・流行の激しいエド、オンド、エボニーの3州にはラッサ熱治療ユニットが設置され、診断確定例に対して
 はリバビリンが使用されています。NCDCはNGOである国際医療行動のためのアライアンス(ALIMA)
 と治療ユニットの評価のために協働活動しています。
・現にアウトブレイクが進行している地域や患者発生のある国境地域のリストが国家レベルのデータベース
 であるウイルス性出血熱マネージメントシステムにアップロードされて、強化サーベイランスが進行し
 ています。
・ NCDCはイルア専門家教育病院や州立医療センター(Owe)に対して患者収容能力アップのために
 テント、ベッドを提供しています。
・イルア専門家教育病院のスタッフは患者の治療に対するアドバイスを疑い例のいる他の病院に対して
 アドバイスを提供し、ラッサ熱の患者管理についての電話相談を24時間受け付けています。

WHOによるリスク評価
 ラッサ熱は齧歯類の糞尿で汚染された家庭内の物品や食品に接することでヒトに感染するウイルス性出血熱です。ヒトーヒト感染や実験室内感染も起こります。患者の死亡率は全体的にみると1%で入院するような重症例では15%です。早期に輸液、対症療法をふくめた支持療法を行うことで生存率は改善します。抗ウイルス薬であるリバビリンは臨床症状が出現した早期に使用すれば治療効果があります。リバビリンの曝露後予防投与の効果については支持するエビデンスはありません。ラッサ熱はベナン、ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、トーゴ、ナイジェリアに風土病的に存在し、他の西アフリカ諸国にも存在するようです。

 現在のナイジェリアでのアウトブレイクでは患者数および死亡数が増加傾向を示しており、過去何週間かで317人の診断確定患者が2018年現在までに認められています。これはナイジェリアにおける過去最大のラッサ熱のアウトブレイクということになります。

 ラッサ熱患者治療センターでの勤務経験のない14人の医療従事者が感染した事は、予測される診断名がなんであろうと、全ての患者に対して医療を実施する状況においては感染防御とコントロールの訓練は喫緊の必要事項であることを強調しています。多くの州で流行が起こっていることから、ラッサ熱に感染した患者の治療を行うだけの適切な準備のできていない医療機関においても治療する可能性があり、医療従事者の感染の危険性は高くなります。

 診断確定例が国内のいたるところや隣国との往来が制限されていない国境部で報告されていることは、国内及び隣国への波及の危険性があることを示しています。全般的なリスクは地域内レベルでは中等度です。公衆衛生対策としてはサーベイランス、接触者の追跡調査、検体検査、患者治療を含めた現行の活動の強化に的を絞るべきです。ラッサ熱患者と接触者についての情報をベナンと共有し、協力をさらに強化していくことが今回のアウトブレイクの国境を越えた拡大の即時の発見と対策に貢献することになります。

WHOによるアドバイス                                    
 ラッサ熱の予防にはコミュニティーとの連携強化、齧歯類の屋内侵入を防ぐ衛生対策を勧めることにかかっています。医療機関においてスタッフは常に患者を扱う際には院内感染予防のために標準感染予防、対策を実施すべきです。
 
 ラッサ熱が風土病的に存在する地域からの旅行者は、殆どないとはいえ、感染を外国に持ち出す可能性があります。西アフリカから帰国した有熱患者の場合にはラッサ熱を想起すべきです。もしラッサ熱が風土病的に存在する地域で病院や、田舎の地域にその人が滞在していた場合は特にそうです。ラッサ熱に罹患している事が疑われる患者を診た医療従事者は直ちに地域および国家の専門家と接触し、ガイダンスと検査のアレンジメントをしてもらうべきです。

ラッサ熱のより詳しい情報は以下のリンクから閲覧できます。
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs179/en/

【出典】Emergencies preparedness, response Disease outbreak news
http://www.who.int/csr/don/01-march-2018-lassa-fever-nigeria/en/