黄熱-ブラジル
3月22日更新
2017年7月1日から2018年2月28日の間に、ブラジルでは723人の黄熱確定患者が報告されました。このうち237人が死亡しています。この患者数は2016／2017年の同じ期間（確定患者576人、死亡184人）より高くなっています（図1）。今回の増加は、過去に黄熱ワクチンが推奨されておらず人口も集中している地区で黄熱ウイルスが循環していることによる可能性が高そうです。
確定患者が（減少した順に）報告されました。ミナスジェイラス州（314人、うち死亡103人）、サンパウロ（307人、うち死亡95人）、リオデジャネイロ（96人、うち死亡38人）、エスピリトサント（5人、死亡なし）、そしてブラジリア連邦直轄区（死亡1人）です。
サンパウロ州では、確定患者の39.7%がマイリポラン・ムニシピオ（サンパウロの北15kmに位置する農村地区）（ムニシピオ：郡あるいは市に相当）で感染した可能性があります。リオデジャネイロでは、確定患者の46.8%がアングラドレイスの住民（18人の患者と7人の死亡）、バレンカの住民(15 人の患者と5人の死亡) テレゾポリスの住民(12 人の患者と6人の死亡 )となっています。これらの地域はそれぞれリオデジャネイロから96km、162 kmに位置しています。 ミナスジェライス州では診断確定患者の28.3％がベロオリゾンテムニシピオの南部または南東部の居住者です。この地域では2016年/2017年の流行期にはヒトでの発生は認めていませんでした。診断確定患者の感染が発生して地域は、ヒト以外の霊長類での発生が報告されている地域に相当していると思われます。
さらに黄熱ワクチン非接種の国際間の旅行者においても診断確定患者数が増加して、7人（フランス、オランダから各1人、アルゼンチンから2人､チリから3人）から10人となっています。新たな3人の患者はアルゼンチンからの１人、最新ではルーマニア、スイスから各1人となっています。これらの患者が感染した地域については調査中ですが、可能性のある地域は以下の地域です。マイリポラン/アチバイア (1人)、イーリャグランジ、アングラドレイスのムニシピオ (8人)、ブルマジーニョ、ミナスジェライス州(1人)。
2017年7月1日から2018年2月28日の間に総数4,161例のヒト以外の霊長類での感染が報告されています。そのうち554例は検査により診断が確定されており、1,347例は調査中、1,478例は診断未確定、782例は否定例です。同国の27州の内23州において動物間での流行が報告されています。ヒト以外での霊長類での黄熱の循環が確定された流行は6州（エスピリトサント、マットグロッソ、ミナスジェライス、リオデジャネイロ、サンパウロ、トカンティス）に及んでいます。このうちサンパウロ州での発生が40%に及んでいます（図２）。
ワクチン接種後の副作用(AEFI)については、2018年1月25日から2月28日に実施された集団接種キャンペーンの結果、標準量接種においてリオデジャネイロ（197件）、サンパウロ（205件）の計402件となっています。そのうち81件（20.1%）で重篤な副作用が認められています。分割使用量のワクチン接種においては215件のAEFIが報告されており、リオデジャネイロ（45件）、サンパウロ（170件）が同時期に報告されています。そのうち14件で重篤な副作用を認めています。報告されたAEFIには調査中のものも含まれており、結果的には変更となる可能性もあります。
図１）疫学週（ブラジル疫学週2016年第1週から2018年第8週）から見た同国の黄熱診断確定患者数（発症日で集計）出典：ブラジル保健機関発表、PAHO/WHO改変
図２）サンパウロ州における動物黄熱感染例数
（疫学週 2016年第27週から2018年第7週までの確定例、調査中例、非確定例数）
公衆衛生対策
サンパウロ州でヒトの黄熱感染例とヒト以外の霊長類の動物間流行が報告された2017年9月以降、国の専門機関は一軒毎の予防接種と集団接種キャンペーンを通じて、予防接種活動を強化してきています。さらには、州とムニシピオレベルでの保健衛生当局は患者の治療のための医療サービスとリスクコミュニケーション活動の強化を実施してきました。
2018年1月25日にブラジル保健当局は、分割使用量と標準量の予防接種キャンペーンを77のムニシピオの2300万人を対象として実施してきました。これらはリオデジャネイロ州（15ムニシピオ）、サンパウロ州（54ムニシピオ）、バーイア州（８ムニシピオ）にわたっています。
2018年2月28日現在、黄熱ワクチン集団接種キャンペーンで5,525,080人が黄熱ワクチン接種を受け（分割使用量量5,031,089人、標準使用量493,991人）ています。この数値はワクチン接種ターゲットである23,812,288人の23%に相当します。
重要なワクチン接種活動は実施されてきましたが、未だワクチン接種率はいくつかのムニシピオでは低いままです。国の専門機関は更に進んだ市民参加戦略を策定しています。それには接種率向上のための追撃d-Day作戦というべきものも含まれています。
WHOによるリスク評価
図１に示したように、2018年1月～2月にかけての患者数と動物間流行の指数関数的増加は危険地域においては高度なウイルスの循環が存在し、とくにサンパウロやリオデジャネイロのような大都市部やそれまで黄熱のリスクは高くないと考えられていたムニシピオ等の新たな地域への拡大が考えられることから関心事となっています。
サンパウロとリオデジャネイロで実施されたマスワクチンキャンペーンの予備的結果報告では接種率は低値のまま留まっており、未だ多くの人がリスクを抱えたままであり、ハイリスクグループにおけるリスクコミュニケーションの強化が必要であることが示されています。
国民の多数にワクチン接種をするための努力が払われたにもかかわらず、ヒト感染数が増加していること、動物間感染地域の地理的拡大が続いていることは、以前には危険地域とは考えられておらず、従ってワクチン接種率の低いブラジル内の地域にもさらに拡大する危険性がある事を示しています。黄熱の森林型サイクルによる伝播が最も一年の中で起こりやすい時期にアウトブレイクが起こるので、季節によるワクチンの必要性も考慮しておく必要があります。
黄熱の診断確定例が増加していることは国際間の拡大の可能性がある事を示しています。現在までの所、大方の黄熱輸入例は媒介蚊が存在しない（或いは冬季で活動していない）地域で報告されています。これらの報告から、黄熱が流行するに好ましい生態系である国からの国際間旅行者についてはハイレベルでの警告がなされ続ける事が大切であることが分かります。
現時点でネッタイシマカによる黄熱の伝播は報告されていません。森林型サイクルの黄熱は森林の棲息するヘマゴグス属やサベテス属の蚊によってサルの仲間にもたらされます。これらの蚊に曝露されたヒトがワクチン接種をしていなければ感染します。2016年/2017年のアウトブレイク時に発生地域で実施された昆虫学的調査によりますと、分離されたヘマゴグスで主に森林型サイクルにおける黄熱においてウイルス陽性でした。しかし最近エバンドロシャーガス研究所で実施されブラジル保健省から報告された2017年の調査では、ミナスジェライス州の2つのムニシピオ（イトゥエタ 及びオウロプレット）の田舎でヒトスジシマカにおいて黄熱ウイルスが検出された事を示しています。このことは更なる調査の重要性を示しています。もっとも新しいブラジルでの都市型黄熱のアウトブレイクは1942年のことです。
WHOによるアドバイス
WHOは加盟国に対して、ワクチン接種を含めた予防手段とリスクを旅行者に良く周知させることを継続するために、或いは旅行者に国際保健規則（2005）の追補７に従って指定された黄熱ワクチン接種センターが地域のどこにあるのか情報を提供するのに必要な行動をするように勧めています。旅行者は黄熱の症候について注意を払い、症状が出たときには直ちに医学的アドバイスを求める様に教育を受けるべきです。ウイルス血症の状態で旅行者が帰国すれば、もしも適当なベクターが生存しているような地域であれば黄熱の地域での感染サイクルが出来てしまう危険性があります。
黄熱はワクチンにより容易に予防出来ます。WHOが公認する黄熱ワクチンは1回の接種で、少なくとも旅行の10日前に接種しておけば十分な免疫が付与され、その人の一生涯予防効果があり、ブースターのための追加接種は必要ありません。
WHOはブラジルに渡航しようとしている国際間の旅行者にはワクチン接種を推奨しています。黄熱の感染危険地域及びそれに関連した旅行者に対するワクチン接種推奨地域については2018年1月16日に更新されています。黄熱のリスクのある地域及びワクチン接種推奨地域についてのマップはWHOのウエブサイトから閲覧可能です。
http://www.who.int/ith/YF-Vaccination-map-americas.jpg?ua=1&ua=1
WHOは現状に基づいてブラジルに対していかなる一般的な旅行や交易も制限するように推奨するものではありません。
【出典】Emergencies preparedness, response Disease outbreak news
http://www.who.int/csr/don/09-march-2018-yellow-fever-brazil/en/
確定患者が（減少した順に）報告されました。ミナスジェイラス州（314人、うち死亡103人）、サンパウロ（307人、うち死亡95人）、リオデジャネイロ（96人、うち死亡38人）、エスピリトサント（5人、死亡なし）、そしてブラジリア連邦直轄区（死亡1人）です。
サンパウロ州では、確定患者の39.7%がマイリポラン・ムニシピオ（サンパウロの北15kmに位置する農村地区）（ムニシピオ：郡あるいは市に相当）で感染した可能性があります。リオデジャネイロでは、確定患者の46.8%がアングラドレイスの住民（18人の患者と7人の死亡）、バレンカの住民(15 人の患者と5人の死亡) テレゾポリスの住民(12 人の患者と6人の死亡 )となっています。これらの地域はそれぞれリオデジャネイロから96km、162 kmに位置しています。 ミナスジェライス州では診断確定患者の28.3％がベロオリゾンテムニシピオの南部または南東部の居住者です。この地域では2016年/2017年の流行期にはヒトでの発生は認めていませんでした。診断確定患者の感染が発生して地域は、ヒト以外の霊長類での発生が報告されている地域に相当していると思われます。
さらに黄熱ワクチン非接種の国際間の旅行者においても診断確定患者数が増加して、7人（フランス、オランダから各1人、アルゼンチンから2人､チリから3人）から10人となっています。新たな3人の患者はアルゼンチンからの１人、最新ではルーマニア、スイスから各1人となっています。これらの患者が感染した地域については調査中ですが、可能性のある地域は以下の地域です。マイリポラン/アチバイア (1人)、イーリャグランジ、アングラドレイスのムニシピオ (8人)、ブルマジーニョ、ミナスジェライス州(1人)。
2017年7月1日から2018年2月28日の間に総数4,161例のヒト以外の霊長類での感染が報告されています。そのうち554例は検査により診断が確定されており、1,347例は調査中、1,478例は診断未確定、782例は否定例です。同国の27州の内23州において動物間での流行が報告されています。ヒト以外での霊長類での黄熱の循環が確定された流行は6州（エスピリトサント、マットグロッソ、ミナスジェライス、リオデジャネイロ、サンパウロ、トカンティス）に及んでいます。このうちサンパウロ州での発生が40%に及んでいます（図２）。
ワクチン接種後の副作用(AEFI)については、2018年1月25日から2月28日に実施された集団接種キャンペーンの結果、標準量接種においてリオデジャネイロ（197件）、サンパウロ（205件）の計402件となっています。そのうち81件（20.1%）で重篤な副作用が認められています。分割使用量のワクチン接種においては215件のAEFIが報告されており、リオデジャネイロ（45件）、サンパウロ（170件）が同時期に報告されています。そのうち14件で重篤な副作用を認めています。報告されたAEFIには調査中のものも含まれており、結果的には変更となる可能性もあります。
図１）疫学週（ブラジル疫学週2016年第1週から2018年第8週）から見た同国の黄熱診断確定患者数（発症日で集計）出典：ブラジル保健機関発表、PAHO/WHO改変
図２）サンパウロ州における動物黄熱感染例数
（疫学週 2016年第27週から2018年第7週までの確定例、調査中例、非確定例数）
公衆衛生対策
サンパウロ州でヒトの黄熱感染例とヒト以外の霊長類の動物間流行が報告された2017年9月以降、国の専門機関は一軒毎の予防接種と集団接種キャンペーンを通じて、予防接種活動を強化してきています。さらには、州とムニシピオレベルでの保健衛生当局は患者の治療のための医療サービスとリスクコミュニケーション活動の強化を実施してきました。
2018年1月25日にブラジル保健当局は、分割使用量と標準量の予防接種キャンペーンを77のムニシピオの2300万人を対象として実施してきました。これらはリオデジャネイロ州（15ムニシピオ）、サンパウロ州（54ムニシピオ）、バーイア州（８ムニシピオ）にわたっています。
2018年2月28日現在、黄熱ワクチン集団接種キャンペーンで5,525,080人が黄熱ワクチン接種を受け（分割使用量量5,031,089人、標準使用量493,991人）ています。この数値はワクチン接種ターゲットである23,812,288人の23%に相当します。
重要なワクチン接種活動は実施されてきましたが、未だワクチン接種率はいくつかのムニシピオでは低いままです。国の専門機関は更に進んだ市民参加戦略を策定しています。それには接種率向上のための追撃d-Day作戦というべきものも含まれています。
WHOによるリスク評価
図１に示したように、2018年1月～2月にかけての患者数と動物間流行の指数関数的増加は危険地域においては高度なウイルスの循環が存在し、とくにサンパウロやリオデジャネイロのような大都市部やそれまで黄熱のリスクは高くないと考えられていたムニシピオ等の新たな地域への拡大が考えられることから関心事となっています。
サンパウロとリオデジャネイロで実施されたマスワクチンキャンペーンの予備的結果報告では接種率は低値のまま留まっており、未だ多くの人がリスクを抱えたままであり、ハイリスクグループにおけるリスクコミュニケーションの強化が必要であることが示されています。
国民の多数にワクチン接種をするための努力が払われたにもかかわらず、ヒト感染数が増加していること、動物間感染地域の地理的拡大が続いていることは、以前には危険地域とは考えられておらず、従ってワクチン接種率の低いブラジル内の地域にもさらに拡大する危険性がある事を示しています。黄熱の森林型サイクルによる伝播が最も一年の中で起こりやすい時期にアウトブレイクが起こるので、季節によるワクチンの必要性も考慮しておく必要があります。
黄熱の診断確定例が増加していることは国際間の拡大の可能性がある事を示しています。現在までの所、大方の黄熱輸入例は媒介蚊が存在しない（或いは冬季で活動していない）地域で報告されています。これらの報告から、黄熱が流行するに好ましい生態系である国からの国際間旅行者についてはハイレベルでの警告がなされ続ける事が大切であることが分かります。
現時点でネッタイシマカによる黄熱の伝播は報告されていません。森林型サイクルの黄熱は森林の棲息するヘマゴグス属やサベテス属の蚊によってサルの仲間にもたらされます。これらの蚊に曝露されたヒトがワクチン接種をしていなければ感染します。2016年/2017年のアウトブレイク時に発生地域で実施された昆虫学的調査によりますと、分離されたヘマゴグスで主に森林型サイクルにおける黄熱においてウイルス陽性でした。しかし最近エバンドロシャーガス研究所で実施されブラジル保健省から報告された2017年の調査では、ミナスジェライス州の2つのムニシピオ（イトゥエタ 及びオウロプレット）の田舎でヒトスジシマカにおいて黄熱ウイルスが検出された事を示しています。このことは更なる調査の重要性を示しています。もっとも新しいブラジルでの都市型黄熱のアウトブレイクは1942年のことです。
WHOによるアドバイス
WHOは加盟国に対して、ワクチン接種を含めた予防手段とリスクを旅行者に良く周知させることを継続するために、或いは旅行者に国際保健規則（2005）の追補７に従って指定された黄熱ワクチン接種センターが地域のどこにあるのか情報を提供するのに必要な行動をするように勧めています。旅行者は黄熱の症候について注意を払い、症状が出たときには直ちに医学的アドバイスを求める様に教育を受けるべきです。ウイルス血症の状態で旅行者が帰国すれば、もしも適当なベクターが生存しているような地域であれば黄熱の地域での感染サイクルが出来てしまう危険性があります。
黄熱はワクチンにより容易に予防出来ます。WHOが公認する黄熱ワクチンは1回の接種で、少なくとも旅行の10日前に接種しておけば十分な免疫が付与され、その人の一生涯予防効果があり、ブースターのための追加接種は必要ありません。
WHOはブラジルに渡航しようとしている国際間の旅行者にはワクチン接種を推奨しています。黄熱の感染危険地域及びそれに関連した旅行者に対するワクチン接種推奨地域については2018年1月16日に更新されています。黄熱のリスクのある地域及びワクチン接種推奨地域についてのマップはWHOのウエブサイトから閲覧可能です。
http://www.who.int/ith/YF-Vaccination-map-americas.jpg?ua=1&ua=1
WHOは現状に基づいてブラジルに対していかなる一般的な旅行や交易も制限するように推奨するものではありません。
【出典】Emergencies preparedness, response Disease outbreak news
http://www.who.int/csr/don/09-march-2018-yellow-fever-brazil/en/