(No.22)

ソマリアにおけるコレラ

4月4日更新

 ソマリアにおけるコレラのアウトブレイクは2017年12月に始まり現在も継続しています。2018年3月18日現在、ヒーラーン州、バナディール州、下部ジュバ州、中部ジェベリ州の4州で総数1,613人のコレラ患者が発生し、うち9人(0.6%)が死亡しています。

 今回のアウトブレイクはヒーラーン州のベレトウェイン地区から始まりました。2018年1月にはバナディール州に拡大し、2月初めには下部ジュバ州、中部ジェベリ州に拡大しています。19人で血清型01亜型小川型のコレラ菌が陽性となりました。バナディール州は国内避難民(IDP)がもっとも集中している地域の一つです。下部ジュバ州は過去にもコレラのアウトブレイクがありました。ケニアと国境地域で中部ジュバでの紛争を逃れてきた難民が多く居る地域です。中部シェベリ州においても以前にコレラのアウトブレイクがありました。これら患者の発生している州では安全な水と下水の確保がいずれも限られています。

図1.2017年2月~2018年2月におけるソマリアでのコレラ診断確定患者疑い患者数
(ソマリア連邦共和国保健省、コレラの発生状況による)
   
 
公衆衛生対策

保健省は世界保健機関(WHO)とそのパートナーのサポートを受けて以下の様な対策を実施中です。
・保健省とパートナーの保健衛生集団との間での週毎の会合の実施
・強化サーベイランスと症例の調査を安全な地域で実施
・流行の起こっている地域での患者のケアに当たるためのボランティアのトレーニングと活用
・国家、州レベルで総合的緊急対策チームのトレーニングを実施
・コレラおよび下痢性疾患に対する備品を地域の対策パートナーや病院に発送すること
・コレラ治療センターに対するシステミックなモニターができる評価者を養成し、治療のための質と収容
 能力を評価し、必要に応じて強化を行う
・コレラの感染制御のための世界対策・専門会議のサポートにより、コレラ治療セッションを最先端かつ
 設備的にみたされた状態にする
・衛生キットを地域のヘルスボランティアや種々のNGOを通じて、アクセスできない地域にも広く行き渡ら
 せる
・社会的動員、コミュニティーでの教育を国、州の専門家により実施する
・急性水様下痢、コレラの予防に関するIECマテリアル(チラシ、ポスター、ビデオなど)を準備し、拡散す
 ること
・経口コレラワクチン(OCV)キャンペーンの実施。2018年2月11日~18日にかけてフドゥールおよびアフ
 マドゥで行われました。第2回目のキャンペーンは2018年3月11日~18日にかけて実施されました。

WHOによるリスク評価

 コレラはコレラ菌による急性の小腸感染症です。本来、安全な上水と十分な下水設備へのアクセスが悪いところで発生します。コレラは重篤な感染性疾患となりえます。高い罹患率と死亡率ともなり得ます。曝露の頻度や曝露された人の数、状況によっては急速に拡大する可能性があります。

 コレラはソマリアでは風土病的に存在し、この2-3年の間は継続的に伝播が報告されています。2017年に起こった前回のアウトブレイクはかつて同国では経験の無いほど大きなものでした。16州において78,000人が罹患し、1,159人(死亡率1.5%)が死亡しました。このアウトブレイクでは2017年4月に患者数がピークとなり、2017年6月から8月にかけて徐々に減少していきました。2017年10月~11月にかけては僅かな孤発例が報告されています。
 2017年、前回の大きなアウトブレイクに対して予防とコントロール対策が実施されたにもかかわらず今回のアウトブレイクも国家レベルとなるほどリスクが高いとされるのは以下の様な事情によっています。
・感染のリスクのある人口の僅か16%しか昨年のOCVキャンペーンの間にワクチンをうけていないこと。
 このことは国民全体レベルでの免疫獲得というには余りにも低いレベルです。
・流行地域では干ばつ、内戦、洪水などによって大規模な人の移動があること。
・流行地域はIDPの密度が高く、そこでは安全な上水、衛生環境、下水設備(WASH)へのアクセスが限ら
 れていること。
・コレラコントロールと治療のための基金は2018年も継続中です。それらはOCVキャンペーンや、WASHと
 関連した活動に使用されています。しかしながら、より長期的な基金は欠乏しており、結果としてこの
 重大な出来事が季節毎に反復し、より効果的な防止策や軽減策のための資金が必要になるという事態は
 解決されないままとなっていること。
WHO管轄地域レベルあるいは地球規模レベルでみるとWHOはリスクレベルについて低いと評価しています。

WHOによるアドバイス

 WHOはコレラの伝播予防のために安全な上水、下水へのアクセスが改善される様に推奨しています。コミュニティーのレベルでのサーベイランスの強化が特に推奨されます。患者が治療に適切にアクセスできることで特に流行している地域での死亡率を低下させる必要があります。経口ワクチンを使用することにより、拡大をおさえることも考慮すべきです。

 WHOは利用できる情報に基づいて、ソマリアへのいかなる渡航や交易の制限も推奨するものではありません。

さらに詳細なコレラに関する情報は以下のリンクから閲覧可能です。
WHO fact sheet on cholera
The Global Task Force on Cholera Control

【出典】Emergencies preparedness, response
Cholera – Somalia
http://www.who.int/csr/don/29-march-2018-cholera-somalia/en/