(No.23)

リステリア症-オーストラリア

4月16日更新

 2018年3月2日、オーストラリアの国際保健規則担当窓口(NFP)は世界保健機関(WHO)に対し、単独の農家からのロックメロン(マスクメロン)に関連したリステリア感染のアウトブレイクを報告しました。

 2018年1月17日から4月6日までに、リステリア症患者20人(確定例19人、疑い例1人)が報告されました。患者全員が入院し、7人が死亡し、このアウトブレイクに関連した流産が1件ありました。このアウトブレイクによる患者すべてが2018年1月17日から始まっています。

公衆衛生上の取り組み
 疫学調査によると、このアウトブレイクの原因はオーストラリアのある単独の農家からのロックメロン(マスクメロン)であると考えられています。疫学的及び環境調査が行われました。2018年2月27日、その農家で栽培されたロックメロンは回収されることになりました。
 2018年3月1日、オーストラリアNFPはこの農産物が国外にも輸出されていることを報告しました。オーストラリアの当局によりますと2018年3月2日に実施された追跡調査ではこのロックメロンはその農家から8カ国に輸出されたとのことです。それら8カ国とは香港特別行政区(中国)、日本、クウェート、マレーシア、オマーン、カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦です。オーストラリアのNFPは3月3日には該当国に対してオーストラリアからロックメロンが輸出されたことへの注意を直接該当国に促しています。それに併行して同日、国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)を通じて警告がだされています。
 さらに3月7日の追跡調査ではバーレーンにこの農家からロックメロンが輸出されていることが確認され、3月8日にはさらに汚染されたロックメロンはセーシェルへの貨物にも含まれていた可能性も判明しました。オーストラリアNFPはバーレーンNFPに対して3月8日に、セーシェルのNFPに対して3月9日に直接、注意を発しています。3月8日の時点で追跡調査は継続中です。
 輸入された国のINFOSANの緊急対応窓口はオーストラリアINFOSANの緊急対応窓口から、入手でき次第それぞれの国に輸入されたロックメロンの分布の詳細に関するデータの提供を受けています。
 2018年4月4日、該当栽培農家からのメロンのサンプルが生産者と小売りを含む流通経路から集められ、30検体以上でリステリア菌が陽性となりました。追加検査で同菌は加工部門でも見つかっています。すべての同菌の検体は患者~分離された同菌と同じ遺伝子配列を有していました。今回のアウトブレイクは環境条件と気候により、果物の表面が汚染され、洗浄過程後も少量の菌が残存していたためと考えられています。該当農家は関係機関と密接に行動し、適性検査を通過したのちにロックメロンの提供を再開(4月2日の週内に)しています。

WHOによるリスク評価
 迅速な環境及び、疫学的調査の実施によりアウトブレイクの原因が判明し、商品の回収が可能となりました。リステリアモノサイトゲネシス感染の潜伏期間が長い可能性を考慮すると、さらにアウトブレイク例が報告される可能性はあります。
 INFOSANにより、関連した国に対して詳細な輸入情報が提供された事により地域における商品回収やリスクコミュニケーション等の適切な対策が実施出来ることとなりました。関連した国からは今後も患者が発生する可能性はあります。

WHOによるアドバイス
 妊婦、高齢者、免疫不全の人はリステリア感染を避けるための予防対策が必要です。それらはリスクの高い食品(未滅菌乳を用いた乳製品、ソフトチーズ、生のシーフード、甲殻類、貝類)を避けることです。これらの食品はリステリア感染の最も原因となりやすい食品です。最近、まれですがメロンやその他のフルーツがリステリア感染のアウトブレイクの原因となっています。リスクを減らすためには全ての野菜や果物は十分に洗浄することは重要です。

 リステリア感染症に関するリスクコミュニケーションメッセージは特にリスクグループに対して発せられるべきです。リスクグループとは妊婦、高齢者、免疫能の低下している人すなわち、担癌患者、HIV感染者、糖尿病患者、腎或いは肝疾患患者、免疫抑制剤による治療を受けている人等です。ハイリスクの食品の消費を避ける様にと言うメッセージがなされるべきです。
【出典】 Emergencies preparedness, response
     Disease Outbreak News (DONs)
     http://www.who.int/csr/don/09-april-2018-listeriosis-australia/en/