(No.24)

ラッサ熱-ナイジェリア

4月24日更新

 2018年1月1日から4月15日までに、(ナイジェリアではラッサ熱の)疑い例1,849人が21の州から報告されています(アビア、アダマワ、アナンブラ、バウチ、ベヌエ、デルタ、エボニー、エド、エキティ、 連邦首都地区、ゴンベ、イモ、カドゥナ、コギ、ラゴス、ナサラワ、オンド、オスン、 プラトー、リヴァーズ、タラバ)。このうち、413人がラッサ熱と診断され、可能性が高い例が9人、検査陰性例が1,422人、疑い例で検査中が5人でした。検査で確定診断された413人と可能性の高い9人のうち、死亡者は114人と報告されました(致死率25.4%)。

 4月15日現在、7つの州(アビア、ベヌエ、エボニー、エド、コギ、ナサラワ、オンド)で27人の医療従事者が感染しています。このうち8人が死亡しました。

 2018年1月にアウトブレイクが始まってから2月18日の週までに、報告されたラッサ熱の患者数は週あたり10人から70人まで増加しましたが、2月下旬から3月上旬にかけ、報告されたラッサ熱の週あたりの患者数は減少傾向にあり、3月は週あたり20人を切り4月15日の週は5人のみでした。(図1参照)

   
図1:2018年1月1日~4月15日までにナイジェリア・ラッサ熱患者の報告数(確定例と疑い例)
ナイジェリアCDCより
http://www.ncdc.gov.ng/themes/common/files/sitreps/bb3b8f16adff5ffc041181d4be1e056f.pdf

 ラッサ熱患者の管理センターが3つの州(エボニー、エド、オンド)で運営されています。これらの医療センターで勤務している医療従事者は、標準的な感染制御と予防(IPC)と、個人防護具(PPE)の使用、患者管理について訓練を受けています。さらに、実地チームは地域社会で報告された疑い例と死亡例に対して積極的に調査をしており、接触者の追跡を続けています。
 現在、3カ所(首都アブジャ、イルア、ラゴス)で検査施設が運営されており、ラッサ熱に対するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による検体検査が行われています。2018年のアウトブレイク中に検出された49種のウイルスについて、系統発生解析がイルア専門家教育病院、ベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所、アフリカ感染症ゲノミクス中核的研究拠点(ACEGID)、リーマーズ大学との協同で行われ、これにより複数の独立した多様なウイルスの導入が示されました。そしてこのウイルスは、ナイジェリアで以前流行していた系統と酷似していました。これは、ヒト-ヒト感染よりもげっ歯類からの感染波及を示しています。
 世界保健機関(WHO)はこのアウトブレイクへの対応について支援を続けています。地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)を通じて国際的援助を連携して行っています。主に、サーベイランスの強化、患者調査、接触者の追跡、診断能力の強化、患者管理、IPCとリスクコミュニケーションです。
 さらに、WHOは全ての治療センターにおける治療ガイドラインの標準化、報告の標準化、検査施設の調査について継続して取り組んでいます。

 ラッサ熱は西アフリカ諸国、すなわちガーナ、ギニア、マリ、ベナン、リベリア、シエラレオネ、トーゴ、ナイジェリアにおける風土病となっています。

公衆衛生上の取り組み
• 国家ラッサ熱緊急対策センター(EOC)が1月22日にナイジェリアの首都アブジャで発足し、WHOおよび
 その他のパートナーとの協働の対策を連携させています。
• 対策活動を指導し、パートナーとの協力や資源の物資動員の優先地区を通知するために、包括的対応計画
 が策定されました。この計画は疾患の現在の疫学を考慮して見直され更新されました。
• ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)のスタッフと、ナイジェリア実地疫学専門家養成コース(
 NFELTP)の医師がエボニー、オンド、エドのアウトブレイクに対応するため配置され、最近ではアビア
 にも配置されました。州レベルのEOCも設立されています。
• 最も感染が発生している3つの州、すなわちエド、オンド、エボニーではラッサ熱の治療病棟が設立され、
 確定例に対する治療としてリバビリンの経静脈投与が利用できます。
• NCDCは、非政府組織である国際医療活動連盟(ALIMA)と協力して、オウォとイルアにある治療センター
 を支援しています;また国境なき医師団(MSF)と協力してアバカリキにおけるIPCの介入を支援してい
 ます。
 WHOの症例管理/IPCチームはアバカリキとイルアの医療スタッフにトレーニングを提供しています。
• 流行が活発な州では強化サーベイランスが進行中です。またウイルス性出血熱の患者管理システムである
 国家レベルのデータベースに、各州の患者リストがアップロードされています。
• WHOの支援を受け、NCDCはすべてのラッサ熱治療センターにPPEを提供し続けています。
• イルアの専門家教育病院のスタッフは、疑い例のいる他の病院に臨床的な患者管理のアドバイスを行って
 います。また24時間対応できるラッサ熱患者電話相談窓口が開設されました。ラッサ熱委員会がアバカリ
 キに設立され、ラッサ熱に感染した患者の治療を改善しています。
• NCDCはエド州、オンド州、エボニー州にリスクコミュニケーションおよび地域社会に密着したチームを配
 置し、個人と地域の衛生環境の改善や迅速な保健活動を促進しています。コミュニティの懸念をよりよく
 理解し対応するための仕組みが整備されています。

WHOによるリスクアセスメント
 ラッサ熱はげっ歯類の糞尿で汚染された家庭内の物品や食品に接することでヒトに感染するウイルス性出血熱です。ヒト-ヒト感染や実験室内感染は、無防備に血液や体液と接触した場合に起こります。全ラッサ熱患者(無症状や軽症患者を含む)における全体の致死率は1%ですが、重篤な状態で入院した患者における死亡率は20%以上と報告されています。脱水に対する早期対症療法や、リバビリン治療は生存率を改善します。ハイリスクの接触者を除き、ラッサ熱の曝露後予防としてリバビリンの役割(有効性)を支持するエビデンスはありません。ラッサ熱はナイジェリア、リベリア、ギニア、シエラレオネ、では風土病として知られています。ラッサ熱感染はベナン、ガーナ、マリ、トーゴで報告されており、他の西アフリカ諸国に存在する可能性が最も高いです。

 ナイジェリアにおける現在のラッサ熱のアウトブレイクは、直近の4週間において患者数と死亡数の減少傾向が示されています。この減少傾向は注意して解釈する必要があります。過去のデータが、高い感染伝播期間が経過していないことを示しているためです。サーベイランスシステムは、近年強化されています。今回のラッサ熱のアウトブレイクは、ナイジェリアにおいて報告された最大の規模です。

 27人の医療従事者感染の発生は、予想される診断に関係なく、全ての患者に対する全ての医療現場において、感染予防と制御の実施を強化する重要性と必要性を示しています。

 診断確定例が国内のいたるところや隣国との往来が制限されていない国境部で報告されていることは、国内及び隣国への波及の危険性があることを示しています。全般的なリスクは地域内レベルでは中等度です。公衆衛生対策としてはサーベイランス、接触者の追跡調査、検体検査、患者治療を含めた現行の活動の強化に的を絞るべきです。

WHOによるアドバイス     
 ラッサ熱の予防にはコミュニティとの連携強化、げっ歯類の屋内侵入を防ぐ衛生対策を勧めることにかかっています。医療機関においてスタッフは常に患者を扱う際には院内感染予防のために標準感染予防、対策を実施すべきです。

 ラッサ熱が風土病的に存在する地域からの旅行者は、殆どないとはいえ、感染を外国に持ち出す可能性があります。西アフリカから帰国した有熱患者の場合にはラッサ熱を想起すべきです。もしラッサ熱が風土病的に存在する地域の病院や、農村地域にその人が滞在していた場合は特にそうです。ラッサ熱が疑われる患者を診察する医療従事者は、速やかに地域や国内の専門家に指示を仰ぎ、検査施設における診断を手配し、適切な感染予防と制御措置を講じることが必要です。

ラッサ熱についてより詳しい情報は、以下のリンクを参照してください。
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs179/en/

【出典】
Emergencies preparedness, response  Disease outbreak news
Lassa Fever – Nigeria
20 April 2018