(No.29)

ワクチン由来型ポリオウイルス-アフリカの角

5月18日更新

 ソマリアでは、3月8日から22日に、バナディール(Banadir)州(首都モガディシュMogadeishu)ワベリ(Waberi)地区にある2カ所の環境から採取された4つの環境サンプルからウイルスが分離され、伝播型ワクチン由来ポリオウイルス3型(cVDPV3)であることが確認されました。cVDP3の検出は、「アフリカの角(注:アフリカ大陸東端の半島)」におけるワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDP2)の早期検出に追加して行われます;このウイルス(cVDP2)はモガディシュ、ソマリア、ナイロビ、ケニアで採取された環境サンプルから検出されています(2018年3月9日にDisease Outbreak Newsで報告されました)。

 2018年5月8日現在、ソマリアとケニア両国の急性弛緩性麻痺(AFP)患者とその接触者からはcVDP3やcVDP2は分離されていません。

公衆衛生上の取り組み

 国際的に合意されたガイドラインに沿って、このポリオウイルス両系統による大規模流行への対策活動が実施されています。ソマリアでは、バナディール州と下部シェベリ州、中部シェベリ州で3回の大規模ワクチン接種キャンペーン(SIA)が実施されました;5月にはアフリカの角にある別の感染発生地域で、追加のSIAが計画されています。ウイルス伝播の起源を決定するために強化サーベイランスが行われています。

 WHOとその支援組織は、アフリカの角を横断する地域公衆衛生当局が行う現地調査とリスクアセスメントを引き続き支援しています。

WHOによるリスクアセスメント

 cVDPVの検出は、世界規模でポリオ撲滅が達成され、全ての経口ポリオワクチンが使用されなくなるまで、高い集団免疫率を維持することの重要性を強調しています。また、この事象は不安定な地域や地区におけるcVDPVのリスクが高いことを示しています;すなわち予防接種活動の制限は、高い集団免疫率の維持を困難にすることに繋がります。WHOは疫学的な状況の評価を続けており、各国政府や支援組織と協力した予防や対策活動の実施を支援しています。

WHOによるアドバイス

 全ての国、特にポリオの発生国や地域と頻繁に渡航や接触がある国においては、全てのポリオ患者を迅速に発見し、予防措置と対応活動を実施するためにAFPのサーベイランスを強化することが重要です。加盟国は効果的な予防接種プログラム通じて、集団内でポリオウイルスに対する高いレベルの免疫を維持する必要があります。予防接種活動が制限される不安定な地域や住民に対して、特に注意を払う必要があります。

 WHOの「国際旅行および健康に関するウェブサイト」では、ポリオが発生している地域へ行く全ての旅行者にポリオに対する予防接種を完全に行うことを推奨しています。感染地域から来た居住者(と4週間以上滞在する旅行者)は、4週間から12ヶ月以内に経口ポリオワクチン(OPV)または不活化ポリオワクチン(IPV)の追加投与を受ける必要があります。

 ポリオウイルスの感染伝播が発生した国は、公衆衛生上の緊急事態としてポリオ患者を報告し、全ての国際旅行者にワクチン接種を検討することを加盟国に求める国際保健規則(IHR)の一時勧告の対象となります。ポリオウイルスを輸出する全ての国は、出国前に全ての国際旅行者に対して確実にワクチン接種を行う必要があります。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Disease outbreak news
Circulating vaccine-derived polioviruses – Horn of Africa
17 May 2018
http://www.who.int/csr/don/17-May-2018-polio-somalia-kenya/en/