(No.34)

エボラウイルス病―コンゴ民主共和国(6)
6月1日更新

 2018年5月23日付けの本報告以後、コンゴ民主共和国(DRC)で新たにエボラウイルス病診断確定患者が6人でています。また新たな情報により、何人かの患者の分類が更新されました。
 2018年4月4日から5月27日の間に赤道州におけるエボラウイルス病(EVD)の累積患者数は25人の死亡(診断確定及び可能性例に占める死亡率52%)を含む54人となっています。この累積数の内35人は診断確定例、13人は可能性の高い例、6人は疑い例となっており、それぞれビコロ保健行政地区(総数22人、確定例10人、可能性例11人、疑い例1人)、イボコ保健行政地区(総数27人、確定例21人、可能性例2人、疑い例4人)、ワンガダ保健行政地区(総数5人、確定例4人、疑い例1人)となっています。(図3)ワンガダで報告されている4人について2人はビコロでの2018年4月からの可能性例との疫学的なつながりがあります。Ntondo保健行政地区で5月25日に報告されたEVD疑い例は検査の結果陰性であり、除外されました。54人の患者の中には5人の医療従事者が含まれています。5月28日現在、992人の登録された接触者の内74%で追跡調査されています。図1には2018年5月5日~25日までの診断確定例と可能性の高い例46人のデータが示されています。
 患者の年齢分布は8歳から80歳で中央値は41歳です。患者の60%は男性です。(図2)図2には診断確定患者と可能性の高い患者合わせて47人の年齢、性別分布が示されています。図3には確定例、可能性の高い例、疑い例の保健行政区毎の分布が示されています。

図1.2018年4月4日~5月25日におけるEVD診断確定及び可能性の高い患者数(発症時におけるカウント)(N=46)

図2. 2018年4月4日~5月25日におけるEVD診断確定及び可能性の高い患者の年齢性別別分布(N=47)

図3. コンゴ民主共和国赤道州、2018年4月4日~5月25日までの各保健行政地区における患者数 2

公衆衛生上の取り組み

 保健省は流行している保健行政地区における対応をWHOやそのパートナーと共に主導しています。優先事項としてはサーベイランスの強化、接触者の追跡調査、検査受け入れ能力の改善、感染の予防とコントロール、患者の治療、社会的動員、安全で威厳の保たれた埋葬、対応のコーディネート、ワクチン接種などが含まれます。
*5月21日にワクチン接種を開始して以来、462人が接種を受けました。輪状ワクチン接種の適応となる対象はEVD診断確定患者に第一線で接する医療従事者及び、これらの接触者と接触があったヒトです。
*WHOはサーベイランスの強化と接触者追跡調査を継続しています。2018年5月23日には早期警戒情報、EVD疑い患者、接触者の追跡調査などに対するデータ集積システム(早期警戒及び対応(EWAR)システム)使用に関するトレーニングがムンバカで40人に対して実施されました。
*患者の治療と感染防御、コントロール活動についてはエボラ治療ユニット(ETUs)の設立、資材、職員の配置を流行地域で実施して、スケールアップしています。WHOは多くの医療チームが利用できるようにエボラ治療機関(ETCs)患者紹介システムのサポートやエボラ以外の患者も医療機関が利用できるようにサポートするための調整をおこなっています。疑い及び診断確定患者の治療に関してはビコロ、ワンガダでETCがセットアップされており、国境なき医師団(MSF)により提供されています。
*WHO、ユニセフとそのパートナーは保健省が流行のある地域で住民がエボラの早期徴候を認識して、直ちに治療に繋げ、安全で威厳の保たれた埋葬が行われるように推し進めることやエボラに対する警戒を高める活動をすることをサポートしています。ムバンダカ、ワンガタ、ビコロ、イチポにおいて教会、学校、市場、各戸訪問によるキーメッセージ伝えるコミュニケーションがEVDに関する注意喚起を行う主な手段となっています。
*5月29日現在、WHOは156人の人員を今回の流行の中心地であるビコロ、イボコ、ワンガタ(ムバンダカ市)の3カ所に派遣しています。WHOは地球規模感染症に対する警戒とネットワーク(GOARN)パートナーやその他のテクニカルネットワークと共働しています。これらのネットワークにはEDCARNやEDPLNが含まれており、対応計画や技術的サポートのコーディネート、追加のテクニカルサポートの実施などを目的としています。5月28日現在、GORANのパートナーからは15の活動がフィールドチームの強化のために展開されています。
*WHOはパートナー(国際移住機関IOM,疾病予防管理センターCDC,)と共にムバンダカ、ビコロ、イボコ、キンシャサで国際空港や主要港湾を含めた主要な出入りする地点を評価しています。出口スクリーニングという手段が実施されており、将来的には国際的な感染の拡大予防を目的として強化される予定です。
*WHOは近隣のアンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワンダ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビアの9カ国において、準備と準備活動を強化しています。実施中の活動には9カ国中8カ国に対して緊急対策チーム(PST)を活用して、標準化された装備によってEVDへの準備の評価を行い、不測の事態に対しての計画を推し進めるサポードを行うという内容が含まれています。

WHOによるリスク評価

 このアウトブレイクの規模に関する情報はまだ限られており、調査が継続中です。ムバンダカ市は主要な国内・国際河川や道路、国内航空路を持つ大都市です。ムバンダカにおける確定患者の発生は、コンゴ民主共和国とその周辺国に感染が広がるリスクを増大させます。そのためWHOは公衆衛生上のリスク評価を修正し、国レベルではリスクが非常に高い、周辺地域レベルでは高い、としました。コンゴ-ブラザビル、中央アフリカ共和国を含む近隣の9カ国は感染拡大のリスクが高いと評価され、準備活動が行われています。世界レベルにおけるリスクは現在のところ低いままです。今後更なる情報の入手によりこのリスクアセスメントは継続的に修正されていきます。

 現在の状況および利用できる情報に基づいて、WHOの事務局長は5月18日に国際保健規則(2005年)に基づく緊急委員会を招集し、現在のアウトブレイクが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」かどうか、アドバイスを行いました。3  委員会の意見として現状ではPHEICには合致しないという見解です。

WHOによるアドバイス

  WHO の事務局長は2018年5月18日に招集された緊急委員会のアドバイスに照らし合わせてWHOはコンゴ民主共和国への渡航と貿易に関するいかなる制限も推奨しないことを継続しています。WHOは今回の事象に関連して渡航と貿易の措置を引き続き監視しています。現在国際間の交通に制限はありません。緊急委員会は現在の所PHEICに合致する所はないとして、以下のようなアドバイスを発しています。参照して下さい。
   Statement of the 1st meeting of the IHR Emergency Committee
 

WHOは国際間の旅行者に対して今回のEVDのアウトブレイクについてのアドバイスを出しています。以下を参照下さい。
   WHO recommendations for international travellers related to the Ebola Virus Disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo


1 合計患者数は、進行中の再分類、後ろ向き調査、そして検査結果の利用により変更されることがあります。疾病アウトブレイクニュースで報告されたデータは、保健省によって公式に報告されたものです。
2 地図に掲載されている境界線、地名に関して、法規上の国家、領地、都市、地域や権威にもとづいて或いは国境や境界線の決定に関してWHOはいかなる意見も反映させて表しているものではありません。地図上に点線或いは破線で表されている部分は完全な合意が得られていない部分について大まかに表しています。
3 「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」とは、これら規則で述べられているように、非常に大きな事態と定められています。ⅰ)国際的な疾病の拡大によって他国に公衆衛生上のリスクをもたらすこと ⅱ)潜在的に協調的な国際的対応を必要とすること 国際保健規則(2005年)

【出典】
Emergencies preparedness, response
Disease outbreak news
Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
30 May 2018
http://www.who.int/csr/don/30-may-2018-ebola-drc/en/