(No.36)

サル痘―カメルーン
6月7日更新

 2018年4月30日から5月30日の間に総数16人のサル痘の診断確定例と疑い例(診断確定1例、疑い15例)が同国の公衆衛生省当局者(DLMEP)に報告されています。患者はカメルーンの5地域に分布しています:Njikwa 保健行政地区(疑い例6人、確定例1人)、Akwaya保健行政地区(疑い例6人)、Biyem-Assi保健行政地区(疑い例1人)、Bertoua 保健行政地区(疑い例1人)、Fotokol 保健行政地区(疑い例1人)。
 5月14日16人の内1人から、カメルーンのパスツール研究所(CPC)で実施された逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査により陽性結果が出ました。この患者はNjikwa 保健行政地区に属しています。この患者は20歳の男性で発熱、全身性膿疱疹、リンパ節腫大が有り、渡航歴やサル痘を疑わせる動物との接触はありませんでした。
 16人の年齢は1ヶ月から58歳に分布しています。中央値は13歳です。約半数は男性で男性9人、女性7人となっています。追加情報としては全員に発熱と発疹があります。死亡例は出ていません。

公衆衛生対策

 世界保健機関(WHO)はコーディネーション、行動と計画の柱をそれらの対策の一部を担うために立てています。
*2018年5月15日に保健省(MOH)で議論を行い、対策活動の優先順位を決定すべく第1回目の共同会議を開きました。この会議中にインシデントマネージメントシステム(IMS)が立ち上げられました。
*種々のセクションでの対応(コーディネーション、対応計画、活動、物資確保、コミュニケーション)において必要事項とそこへの介入実施のためにインシデント活動計画が進められています。
*2018年4月30日現在、患者の疫学的調査が実施されています。
*医療従事者に対する感染コントロール(個人防護具の使用や手指衛生)トレーニングが既に実施されています。患者の隔離、有症者の扱い、手洗い手技などの情報が共有されています。
*リスクコミュニケーションの手段や計画が動いています。(サル痘への感染防止のための予防策を実施するように住民への注意喚起が活発化しています)
*5月22日、感染症管理予防地域センター(CERPLE)はNjikwa 保健行政地区のチームが得た現場からの最新情報やその他の関連する情報についてフォローアップ会議を開催しました。この会議にはWHOやUNICEFの代表が出席しています。

WHOによるリスク評価
 
 サル痘は中央アフリカや西アフリカで孤発的に発生する動物由来感染症です。1958年にサルから初めて発見されました。この疾患はオルソポッックスウイルスによりおこり、人の痘瘡(1980年に撲滅)と同様の症状を示します。しかしながら人が感染した場合には症状はより軽くて済みます。患者の症状は通常2-3週間で軽快し、決まった経過をたどります。治療としては支持療法のみです。ウイルスは血液や体液に直接接触した場合、感染した人や主にアフリカのげっ歯類やサルなどの動物の傷や粘膜に接触することで感染します。ヒトヒトの2次感染は限定的ではありますが感染性の中咽頭分泌物からの曝露や、発疹が出ているときの患者と接触することや、汚染された物への接触で起こることがあります。特異的治療法は無く、サル痘感染に使用出来るワクチンも有りませんが、アウトブレイクをコントロールすることは可能です。

 カメルーンでサル痘が見つかったことは十分な警戒と、地域の人々へのこの疾病への注意を喚起させる必要性がある事を示しています。野生動物、特にげっ歯類と霊長類への接触を避ける様にすることで感染を予防する方法を人々に教育すること、コミュニケーションを取ることが大切です。医療従事者は有症者を扱ったり隔離したりする場合には標準予防策に従って行なわなければなりません。今回の患者は田舎の地域で報告されています。そこで行われている農業や狩猟が動物から人への感染の危険性を増していることになります。

 WHOは疫学的な状況についての評価を続け、予防と対応策を政府やパートナーと共に共同で実施していきます。

WHOによるアドバイス

 サル痘に感染している可能性のある動物と接触する人は最も感染リスクが高くなります。サル痘のアウトブレイクの間は呼気の飛沫、体液、患者の皮膚病変部、或いは患者の分泌物や傷からの浸出液で汚染された衣類や物との接触することがヒトヒト感染を起こす最も危険な要因となります。特異的な治療やワクチンが無く、感染の危険性を減らすために住民がげっ歯類を含む野生動物と密接に接触するというようなリスク要因を知り、住民がウイルスに曝露される事を減らす手段についての教育をされることが唯一の手段です。サーベイランス手段と迅速な新規患者の同定がアウトブレイクの封じ込めには必須です。一般向けの衛生教育メッセージは以下のようなリスクに焦点を当てるべきです。
*動物から人への感染のリスクを減らすこと。風土病的に同疾患が存在する地域では野生で疾病に罹っていたり、死亡した動物にふれたり、その動物を食べたりすることを避ける事に焦点を当てることに努めるべきです。疾病の動物や感染した組織を触るときには手袋と適切な防護服の着装をすべきです。
*ヒトヒト感染のリスクを減らすこと。サル痘に感染した人は隔離されるべきであり、感染防御とコントロール対策が感染患者を治療する医療施設で実施されるべきです。サル痘に感染した人と物理的に濃厚接触するのは限定されるべきであり、手袋、フェイスマスク、防護カウンをどのような状況下においても患者のケアをする場合には使用されるべきです。患者のケアをしたり、患者を訪問したような場合には定期的に手洗いを実施するべきです。

 サル痘感染の疑い或いは診断確定患者のケアをしたり、集積された検体を扱う医療従事者は標準感染予防策をしなければなりません。

 現段階ではアウトブレイクの起こった地域が相対的に離れていて、人口が密集していない地域であることを考慮すれば拡大のリスクは限られています。WHOはカメルーンへのいかなる渡航や交易も現時点で入手可能な情報に基づいて制限することを推奨していません。

 サル痘についてのより詳細な情報は以下のリンクを参照してください。
WHO factsheet on monkeypox

【出典】
http://www.who.int/csr/don/06-june-2018-monkeypox-cameroon/en/
Emergencies preparedness, response
Monkeypox – Cameroon Disease outbreak news