(No.37)

エボラウイルス病―コンゴ民主共和国(7)
2018年6月13日更新

 2018年5月30日付けの本報告以後、コンゴ民主共和国(DRC)で新たにエボラウイルス病(EVD)診断確定患者が2人でており、2人ともイボコ保健行政地区からの報告です。また新たな情報により、何人かの患者の分類が更新されました。
 2018年4月4日から6月3日までに赤道州におけるエボラウイルス病の累積患者数は25人の死亡(診断確定及び可能性例に占める死亡率45%)を含む56人となっています。この累積数の内37人は診断確定例、13人は可能性の高い例、6人は疑い例となっており、それぞれビコロ保健行政地区(総数26人、確定例10人、可能性例11人、疑い例5人)、イボコ保健行政地区(総数25人、確定例23人、可能性例2人)、ワンガダ保健行政地区(総数5人、確定例4人、疑い例1人)となっています。56人の患者の中には5人の医療従事者が含まれています。5月31日現在、880人の接触者について追跡調査されています。図1には2018年4月5日~6月3日までの診 断確定例と可能性の高い例50人の発症日のデータが示されています。
 診断確定患者と可能性の高い患者の年齢分布は8歳から80歳で中央値は41歳です。患者の61%は男性です。(図2)図2には診断確定患者と可能性の高い患者合わせて49人の年齢、性別分布が示されています。図3には確定例、可能性の高い例、疑い例の保健行政区毎の分布が示されています。


図1. 2018年4月4日~6月3日におけるEVD診断確定及び可能性の高い患者数(発症時におけるカウント)
(N=50)


図2. 2018年4月4日~6月3日におけるEVD診断確定及び可能性の高い患者の年齢性別別分布(N=49)


図3. コンゴ民主共和国赤道州、2018年4月4日~6月3日までの各保健行政地区における患者数

公衆衛生上の取り組み

 保健省は流行している保健行政地区における対応を世界保健機関(WHO)やそのパートナーと共に主導しています。優先事項としてはサーベイランスの強化、接触者の追跡調査、検査受け入れ能力の改善、感染の予防とコントロール、患者の治療、社会的動員、安全で威厳の保たれた埋葬、対応のコーディネート、ワクチン接種などが含まれます。
*5月21日にワクチン接種を開始して以来、1,199人が接種を受け、ワンガダ保健行政地区(577人)、イボコ保健行政地区(323人)、ビコロ保健行政地区(299人)となっています。輪状ワクチン接種の適応となる対象はEVD診断確定患者に第一線で接する医療従事者及び、これらの接触者と接触があったヒトです。
*WHOは保健省やそのパートナーと共にサーベイランスの強化と接触者追跡調査を継続しています。早期警戒及び対応(EWAR)システムや電子フィールドデータ集積ツールがこれらの活動を支援する戦略的なサイトに展開されています。
*患者の治療と感染防御、コントロール活動についてはエボラ治療機関(ETCs)の設立、資材、職員の配置を流行地域で実施して、スケールアップしています。WHOは多くの医療チームが利用できるようにETCs、患者紹介システムのサポートやエボラ以外の患者も医療機関が利用できるようにサポートするための調整をおこなっています。疑い及び診断確定患者の治療に関してはビコロ、ワンガダでETCsがセットアップされており、国境なき医師団(MSF)により提供されています。
*WHO、ユニセフとそのパートナーは保健省が流行のある地域で住民がエボラの早期徴候を認識して、直ちに治療に繋げ、安全で威厳の保たれた埋葬が行われるように推し進めることやエボラに対する警戒を高める活動をすることをサポートしています。WHOは、日常的に各戸訪問による注意喚起活動に関与しているムバンダカ保健行政地区のコミュニティコミュニケーターのための研修を実施しました。ムバンダカでは5月25日から6月1日の間に1万世帯以上を訪れました。
*6月4日現在、WHOは、地球規模感染症に対する警戒とネットワーク(GOARN)パートナー機関の27名の専門家を含む、171名の技術専門家を派遣して対応活動を支援しています。
*WHO、国際移住機関(IOM)、疾病予防管理センター(CDC)はパートナーと共にムバンダカ、ビコロ、イボコ、キンシャサで国際空港や主要港湾を含めた主要な出入りする地点を評価しています。出口スクリーニングという手段が実施されており、将来的には国際的な感染の拡大予防を目的として強化される予定です。入国における戦略的対応計画の詳細については、最新の疾病発生ニュースを参照してください。
*保健省、パートナーとWHOは近隣のアンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワンダ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビアの9カ国において、EVD準備活動の実施を支援しています。最優先国は、コンゴ共和国と中央アフリカ共和国です。

 チームのミッションを強化し、準備状況を評価し、緊急時対応計画を策定し、迅速な対応チームの訓練を継続し、部門間の協調体制を確立し、地域に密着した監視システムを強化し、地域に密着し感作活動を継続し、入国地点を強化し、医療機関を特定するといった、EVDを管理するための準備が整っています。6月4日から8日にかけて、コンゴ共和国から50以上の国家緊急対策チームがEVDの管理について訓練を受ける予定です。
*WHOのEVD対応の即戦力と準備のための地域戦略計画がWHOの加盟国とそのパートナーと共にWHOにより展開されました。フェーズⅠの計画はこれからの3ヶ月の間に、EVD患者の流入に対応するべく国々の収容能力を強化するよう実施されることです。フェーズⅡの計画は即時対応能力を確実に持続可能にする準備活動のスケールアップであり、長期間にわたる非常時対策やIHR主要部の能力の充足に関連しています。

WHOによるリスク評価

 WHOは、その疾患の重大な性質、不十分な疫学的情報や最初の症例発見の遅れにより公衆衛生上のリスクは国家レベルにおいてとても高いと考えています。このため、アウトブレイクの大きさや地理的範囲を評価することが困難となっています。WHOは公衆衛生上のリスク評価を修正し、周辺地域レベルでは高い、としました。コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国を含む近隣の9カ国は感染拡大のリスクが高いと評価され、準備活動が行われています。世界レベルにおけるリスクは現在のところ低いままです。今後更なる情報の入手によりこのリスクアセスメントは継続的に修正されていきます。

 WHOの事務局長は5月18日に国際保健規則(2005年)に基づく緊急委員会を招集し2、委員会の意見としてPHEICには合致しないという見解です。

WHOによるアドバイス

 緊急委員会のアドバイスに照らし合わせてWHOはコンゴ民主共和国への渡航と貿易に関するいかなる制限も推奨しないことを継続しています。WHOは今回の事象に関連して渡航と貿易の措置を引き続き監視しています。現在国際間の交通に制限はありません。緊急委員会は現在の所PHEICに合致する所はないとしていますが、以下のようなアドバイスを発しています。参照して下さい。
   Statement of the 1st meeting of the IHR Emergency Committee
http://www.who.int/news-room/detail/18-05-2018-statement-on-the-1st-meeting-of-the-ihr-emergency-committee-regarding-the-ebola-outbreak-in-2018


WHOは国際間の旅行者に対して今回のEVDのアウトブレイクについてのアドバイスを出しています。以下を参照下さい。
   WHO recommendations for international travellers related to the Ebola Virus Disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo
http://www.who.int/ith/evd-travel-advice-final-29-05-2018-final.pdf?ua=1&ua=1


1 合計患者数は、進行中の再分類、後ろ向き調査、そして検査結果の利用により変更されることがあります。疾病アウトブレイクニュースで報告されたデータは、保健省によって公式に報告されたものです。
2 「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」とは、これら規則で述べられているように、非常に大きな事態と定められています。ⅰ)国際的な疾病の拡大によって他国に公衆衛生上のリスクをもたらすこと ⅱ)潜在的に協調的な国際的対応を必要とすること 国際保健規則(2005年)

【出典】
Emergencies preparedness, response
Disease outbreak news
Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
6 June 2018
http://www.who.int/csr/don/06-june-2018-ebola-drc/en/