(No.38)

麻疹-ブラジル
2018年6月13日更新

 ブラジルでは麻疹の流行が続いています。2018年1月1日から5月23日までに、995人の患者が報告されました(アマゾナス州で611人、ロライマ州で384人)。これらの患者のうち、114人が検査で確定診断(アマゾナス州で30人、ロライマ州で84人)され、2人が死亡しました。83人が棄却され、798人が調査中です。

 アマゾナス州では、2018年1月1日から5月23日までに611人の疑い例が報告され、うち30人が確定、63人が(疑いが)棄却、518人が調査中です1)。ロライマ州では384人の疑い例が報告され、このうち84人が確定、20人が棄却、280人は調査中です。84人の確定例のうち、58人はベネズエラ人(60%)、24人がブラジル人(28.6%)、1人が仏領ギアナ人(1.2%)、1人がアルゼンチン人(1.2%)です2)。すべての確定例のうち、34人が先住民です。2人の死亡者はロライマ州の州都ボア・ヴィスタ(Boa Vista)のベネズエラ人でした。

 両州における確定患者の発疹の発症日は、2018年2月4日から4月2日でした。

 オズワルドクルス財団(Fiocruz/RJ)は解析を行い、全ての検査で確定された患者が2017年のベネズエラ流行と同一の遺伝子型D8と同定しました。

 図1は流行の増加傾向を示しています。現在調査中である疑い例798人については、結果が保留となっていることを考慮することが重要です。確定例の指数関数的増加が、今後数週間でみられる可能性があります。

 図1 2018年1月1日から5月12日までに、アマゾナス州とロライマ州における発疹の発症日ごとの麻疹患者報告数。

 出典;ブラジル保健省が提供しPAHO/WHOにより作成されたデータ

公衆衛生上の取り組み
実施される活動は以下の通りです。

●ロライマ州とアマゾナス州は6ヶ月の乳児から49歳までの集団を対象としたワクチン接種キャンペーンを開始しました。
●後ろ向き調査や施設での患者の発見、接触者の追跡、接触者の監視といった疫学調査の強化が行われています。
●検査室のネットワーク強化。
●戦略的なリスクコミュニケーションが実施されています。
●患者管理に携わる医療従事者に研修を行っています。

WHOによるリスクアセスメント

 麻疹は感染力の強いウイルス性疾患です。全ての年齢の感染しやすい人々に影響をもたらし、世界中の幼児の死因です。麻疹ウイルスは、感染した人の鼻、口、喉から出る飛沫により伝播します。通常感染後1-12日で出現する初発症状は高熱であり、鼻汁、目の充血、咳、口腔内の小さな白斑点などの1つを伴います。数日後に発疹が出現します。これは顔や首の上から始まり、次第に(体の)下に広がっていきます。

 発疹の出現4日前から発疹出現4日後まで、患者には感染性があります。麻疹に対して特異的なウイルス治療は無く、殆どの人は2-3週間以内に回復します。患者管理は、必要に応じたビタミンAと解熱剤、抗生物質、下痢止めです。栄養状態の悪い小児や(麻疹に対する)感受性の高い人の間では、麻疹は重篤な合併症をもたらす可能性があります。これは失明、脳炎、激しい下痢、耳の感染症、肺炎などです。麻疹は予防接種によって防ぐことができます。ワクチン接種率の低い国では2-3年ごとに麻疹が流行し、通常は2-3ヶ月間持続します。持続期間は人口規模や、密集度、人々の免疫の状態によって異なります。

 2016年9月にアメリカ大陸は麻疹がゼロとなったことを宣言しました。にもかかわらず、他の地域から輸入患者による流行が散発的に発生する可能性があります。

 疫学的状況や潜在的な感染伝播の可能性が高いため、ブラジルにおける全国レベルでの麻疹拡大の危険性は高い状態です。主な課題は、移民のワクチン接種率と地域の施設における検査診断能力です。感染が進行中のため、ブラジルの連邦当局や地方自治体により流行を制御するため戦略的なワクチン接種や他の措置が実施されています。この地域における定期接種プログラムの実施や、感染予防や制御能力を考慮すると、地域レベルの潜在的影響は高いと考えられます。

WHOによるアドバイス

 2017年9月1日、全米保健機構/世界保健機関(PAHO/WHO)はこの流行に関する情報を加盟国と共有し、輸入麻疹症例による流行発生のリスクやワクチン接種率が低い地域における麻疹の再導入の可能性について警告しました。他の地域からの輸入麻疹例の継続的な報告と、アメリカ大陸における流行の進行を考慮し、PAHO/WHOは全ての加盟国に対して以下のことを推奨しました:

●麻疹、流行性耳下腺炎、風疹(MMR)ワクチンの1回目と2回目の接種により、ワクチン接種率を95%とする。
●リスクの高い集団(麻疹や風疹の免疫が無いまたはワクチン接種証明がない)にワクチンを接種する。たとえば医療従者、観光業や交通機関で働く人々(ホテルやケータリング、空港、タクシードライバーなど)、国際旅行者。
●地域の各国では、輸入例を制御するために麻疹-風疹ワクチン(MR)と注射器を保管する。
●公立・私立の医療施設では、疑い例を素早く発見するため麻疹に対する疫学調査を強化する。検体は採取された日から5日以内に、確実に検査施設に届ける。
●感染伝播の再確立を防ぐための迅速対応チームの活動を通じて、輸入麻疹例に迅速に対応する。迅速対応チームが活動すれば、全国レベルと地域レベルの間で、永続的で流動的なコミュニケーションチャンネルによる継続的調整が保証される。

より詳しい情報は以下のリンクを参照ください。
https://www.paho.org/hq/index.php?option=com_topics&view=article&id=255&Itemid=40899&lang=en
1).疑い例は14の市町村で報告されています;Anori, Beruri, Careiro da Várzea, Humaitá, Itacoatiara, Itapiranga, Iranduba, Jutaí, Manacapuru, Manaus, Novo Airão, Parintins, São Gabriel da Cachoeira and Tefé。全ての患者がブラジル人です。

2).疑い例は11の市町村で報告されています;Alto Alegre, Amajarí, Boa vista, Cantá, Caracaraí, Caroebe, Iracema, Pacaraima, Rorainópolis, São João da Baliza とUiramutã (01)。384人の疑い例のうち、10人はブラジルで通知されましたが、彼らの居住地は以下のベネズエラにある都市です:Santa Helena (04), Gran Sabana (03), Ciudad Bolivar (01), Maracaibo (01) and Sifontes (01)。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Disease outbreak news
Measles – Brazil
11 June 2018
http://www.who.int/csr/don/11-june-2018-measles-brazil/en/