(No.42)

リフトバレー熱 - ケニア
2018年6月20日更新

 2018年6月8日、ケニア保健省(MoH)は、リフトバレー熱のアウトブレイクを確認しました。最初の患者は、発熱、全身衰弱、歯肉や口からの出血で、6月2日にケニア北東部のワジル郡の病院に入院しました。患者は病気の動物の肉を摂取したと報告されました。患者は同日死亡しました。 6月4日には、最初の患者の2人の親族が入院しました。血液サンプルを採取し、ケニア医学研究所に送りました。そのうちの1つは、6月6日にリフトバレー熱が陽性であることが確認されました。 6月16日現在、ワジル郡(24人)およびマルサビット郡(2人)から計26人のヒト症例が報告されており、確定例は7人、死亡例は6人(死亡率(CFR)= 23%)でした。確定例のうち 6人の患者は退院し、1人は入院中です。ガリッサ、カジアド、キツイ、マルサビット、タナ・リバー、ワジル郡では、ラクダやヤギなどの家畜の死亡や流産が数多く報告されています。これらの郡に住む人々は死んだ病気の動物の肉を摂取していると報告されています。

公衆衛生上の取り組み


 2018年2月から、ケニアの大雨と洪水により、リフトバレー熱の対策活動が進行中です。2018年2月に全ての郡の担当者に警告が出され、2018年5月に一般的な国別警告が通知されました。

 アウトブレイクが確認されて以降、以下の措置が講じられています。

・ 6月8日、MoHと農業省は畜産省(MoL)と主要な利害関係者との緊急会議を開催しました。 保健セクターの特別チーム会合が開催され、パートナーはリフトバレー熱のコントロールを支援することを約束しました。
・ 6月14日、MoHはイベントマネージャーとサポート技術チームと共に緊急オペレーションセンターを始動させました。
・ 6月14日、ワジル郡で複数部門の調査チームが配備され地域の保健チームを支援しています。また別のチームもすぐにマルサビット郡のチームを支援するために派遣される予定です。
Ÿ進行中の準備活動の一環として、ワジルおよびマルサビット郡での接触者追跡だけでなく、流行した危険な郡では、リフトバレー熱の積極的な監視が強化されています。 ワジル郡では5つの治療センターが設立されています。
・ 流行地域では、活動症例の検索や地域の感作活動が行われています。 ベクターコントロールのガイドラインやその他情報資料がワジル郡に発信され、メッセージは地域保健ボランティアを通じて広報されています。
・流行地域では動物の屠殺禁止と家畜の移動の制限が課せられています。

WHOによるリスク評価

 リフトバレー熱のアウトブレイクはケニアでは珍しいことではありません。 最近の記録されたアウトブレイクは、2014年11月から2015年1月にケニア北東部で発生しました。 2006年には大規模アウトブレイクにより150人以上が亡くなりました。 アウトブレイクの記録によるCFRは、幅広く変化していますが、総CFRは1%未満です。

 先月に実施した準備活動と併せて、過去にケニアで起きたリフトバレー熱のアウトブレイク対応の経験が活かされています。家畜の死亡や流産の報告数が多いため、とりわけ動物製品を主食とする遊牧民族に影響が及びます。 この地域の家畜や人々の移動量が多いため、ケニア国内および近隣諸国へのアウトブレイクがさらに拡大するリスクが高くなります。

WHOのアドバイス

 リフトバレー熱は、主に動物に影響を及ぼす蚊が媒介するウイルス性の人畜共通感染症ですが、ヒトに感染する能力も有ります。ヒト感染の大部分は、感染した動物の血液または臓器との直接的または間接的な接触に起因します。牧畜業者、農家、屠殺場の労働者および獣医師は、感染リスクが高くなります。リフトバレー熱の感染の危険因子の認識と防虫対策は、人への感染と死を減らす唯一の方法です。リスクを減らすための公衆衛生のメッセージは、

・安全でない畜産業や屠殺慣行に起因する動物からヒトへの感染リスクを軽減する。病気の動物やその組織を扱うとき、また動物を屠殺するときは、手指衛生の実践や手袋やその他の個人用保護具の着用を推奨します。
・未処理または未滅菌のミルクまたは動物組織の安全でない消費に起因する動物からヒトへの感染リスクを低減する。常在地域では、食べる前にすべての動物製品を徹底的に加熱調理する必要があります。
・ 殺虫剤を含浸させた蚊帳や忌避剤を使用し、明るい色の服(長袖のシャツやズボン)を着用するなど、ベクターコントロール活動の実施(蚊の繁殖場所を減らすための殺虫剤の散布や殺虫剤の使用など) 。
感染した地域から感染していない地域へのウイルスの流行を減らすために、家畜の動きを制限または禁止します。
・ リフトバレー熱の発生を防止するために、定期的な動物の予防接種が推奨されています。予防接種キャンペーンはアウトブレイク中に推奨されていません。注射針によるウイルスの集団感染を起こす可能性があるからです。動物におけるリフトバレー熱の発生はヒトの症例に先行するので、獣医および公衆衛生当局に早期警報を提供するためには、動物衛生監視システムの確立が不可欠です。

  WHOは、最新の情報に基づいた、ケニアへの旅行または貿易の制限を勧告しません。

 リフトバレー熱について詳しくは、下記のリンクをご覧ください:

http://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/rift-valley-fever

【出典】
Emergencies preparedness, response
Rift Valley fever – Kenya
Disease outbreak news
18 June 2018

http://www.who.int/csr/don/18-june-2018-rift-valley-fever-kenya/en/