(No.49)

エボラウイルス病 ― コンゴ民主共和国(12)
2018年8月9日更新

 2018年7月28日、北キブ州の保健局はコンゴ民主共和国の保健省に対して急性の出血熱疑いのある集団が発生したことを報告しました。2018年8月1日にはキンシャサの国立医学生物研究所(INRB)は入院中の患者から採取した6検体のうち、4検体においてGeneXpert automated PCRにより陽性と診断されたと報告しました。この陽性結果を根拠として保健省、世界保健機関(WHO)とそのパートナーは即座に段階的対応の実施と保健大臣によるアウトブレイク宣言を行うこととなりました。
 国際保健規則に基づきWHOに対して保健省からの即時緊急通知 がなされ、2018年7月中旬から下旬にかけて北キブ州においてウイルス性出血熱疑い患者が家族内で集団発生していないか早急な検出と調査が実施されました。地域の保健局は2018年7月下旬に同コミュニティーにおいて(一応は可能性例に分類される)先行する死亡例を同定しました。今回のアウトブレイクとつながっているかどうかを調査中です。
 保健省、WHOおよびパートナーはアウトブレイクの全容を解明するための活動を実施中です。2018年8月3日現在、33人の死亡例を含む、43人のエボラウイルス病(13人の診断確定例、30人の可能性例)が報告されています。さらに現在、33人の疑い例については検査結果が確定して、エボラウイルス病と確定されるか、除外されるか、結果を待っているところです。医療従事者は3人が感染しており、うち1人が死亡しています。
 地理的には診断確定例、可能性例は現在北キブ州の5カ所の保健行政地区(38人、13人は診断確定例、25人は可能性例)、イトゥリ州の1カ所の保健行政地区(5人の可能性例)(図参照)に分布しています。疑い例についてはイトゥリ州の別の保健行政地区1カ所で調査中です。
感染の発生している地域には百万人以上の難民が集まっており、ルワンダ、ウガンダと国境に接しており、交易のために頻繁な国境を越える人の移動があります。長期化する人道上の危機と治安の悪化がアウトブレイク対策の妨げとなることが予測されています。
 Mabalako保健行政地区から最初に得られた6検体のうち3検体においてINRBで実施された従来のPCR法を用いた検査結果でエボラウイルスが検出されています。その結果からは今回のアウトブレイクはザイールエボラウイルス種による可能性が非常に高いという結果です。しかしウイルス種の確定には遺伝子配列同定が必要です。
 ウイルスの遺伝子配列の特徴を知ることはワクチンの使用の可能性や治療法、今回のアウトブレイクとは2500Kmも離れた遙か同国西部に位置した赤道州での最近のアウトブレイクとのつながりについての情報を得る助けとなります。現在のところ、これら2カ所でのアウトブレイクについての関連性についての証拠はありません。

図:北キブ州、イトゥリ州の保健行政地区におけるエボラウイルス病患者の分布(コンゴ民主共和国2018年8月3日現在)

【出典】WHO Emergencies preparedness, response
Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news   4 August 2018
http://www.who.int/csr/don/4-august-2018-ebola-drc/en/