(No.86)

エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(32)
2018年12月25日更新


 コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクへの対応は、複雑な課題であり続けています。地域社会での抵抗と紛争の勢いにより、流行地域での活動が妨げられています。また (大統領)選挙期間中に更なる課題も予想され、政治的緊張の高まり、全体的な治安状況の悪化、市民による暴力の激化につながる可能性があります。エボラ対応活動にとって間接的な脅威になります。

 これらの困難にもかかわらず、アウトブレイクの影響があった全域で有意義な進展がみられました。特にベニ(Beni)ではここ数週間で最も患者発生率が減少しました。そこでのアウトブレイクの管理は、以前はMangina市で行われていましたが、地域社会の参加を得て対応活動が拡大して実施できるようになると、アウトブレイクをどのように管理できるかを示しています。保健省(MoH)、世界保健機関(WHO)とそのパートナーがKatwa、Butemboと他の新たに発生した集団において同様の進展を目指していますが、我々は各々の地域から生じている固有の課題を認識しなければなりません。アウトブレイクの疫学へ介入することを、導入し、受け入れ、その結果として効果が現れるには時間がかかります。対応チームは、根拠に基づく公衆衛生対策やあらたなツールを適応しスケールアップを図ります。

 現在アウトブレイクは、北キヴ州とイトゥリ州の14の保健行政地区をカバーする地理的に分散した地域で発生しています。直近21日間( 2018年11月27日~12月18日)に新たな確定患者114人は以下の地域から報告されました:Katwa (31人)、ベニ(18人)、Komanda(17人)、Butembo(14人)、Mabalako(14人)、Kalunguta(5人)、Oicha(4人)、Vuhovi(3人)、Kyondo(3人)、Biena(1人)、Mandima(1人)、Masereka(1人)、Musienene(1人)とMutawanga(1人)。8月中旬に集団発生した時から、Tchomia保健行政地区だけは新たな患者は発見されませんでした。これらの地域でのアウトブレイクは、社会的/コミュニティ内での伝播と民間および公立の保健センター内での伝播によって拡大しました。前週には新たに2人の医療従事者が感染したと報告され、現在まで医療従事者は55人(確定例53人と可能性の高い例2人)でそのうち19人が死亡しました。

 12月18日までのEVD患者の累積数は549人(確定例501人、可能性の高い例48人)でそのうち死亡例326人(致死率59%)でした。北キヴ州の12の保健行政地区とイトゥリ州の3つの保健行政地区で報告されました(図1)。患者発生率(図2)の全体的な傾向は、これらの地域全域でのアウトブレイクの継続しており、10月中旬から新規患者は毎週平均で35人が報告されています。

 エボラ治療センター(ETCs)から生存者が退院したことは小さいながらも意義のある成果として継続しています。適切な時期にETCsへ入院し、エボラ治療薬の使用と支援的ケア対策が助けとなります。先週18人の患者がETCsを退院しました。全体として、現在までに193人の患者が回復しています。

 上述の流行地域の以外での全ての信頼できる警報は、これまでのところEVDについて検査を実施し、陰性と確認してきました。しかし、北キヴ州とイトゥリ州、コンゴ民主共和国の他の地域、あるいは近隣国へ地理的に感染が拡大するリスクは非常に高い状態です。これらの地域で、予めEVDの感染拡大についての準備と運用活動の用意は、リスクを低下させるため引き続き拡大し、また潜在的な症例を迅速に検出し対応する必要があります。

図1:2018年12月18日時点での、コンゴ民主共和国の北キヴ州及びイトゥリ州の保健行政地区における、エボラウイルス病の確定例及び可能性の高い例(n=549)


図2:週ごとの新規発生エボラウイルス病の確定例及び可能性の高い例(2018年12月18日) (n=549)*


※ここ数週間のデータは、診断の確定と報告が遅延しつつあります。この時期の傾向は慎重に解釈する必要があります。