(No.87)


腸チフス - パキスタン
2018年12月28日更新

 パキスタン保健当局は、2016年11月にシンド州のハイデラバード地区で発生した広範囲薬剤耐性(XDR)腸チフスの流行を報告しています。 チフス菌(S. Typhi)の薬剤耐性(AMR)株による腸チフス症例の増加傾向は、公衆衛生上の重大な懸念材料となっています。 2018年5月、パキスタンの臨床医、微生物学者、疫学者の専門家グループによる  レビューによって、非耐性、多剤耐性(MDR)およびXDR腸チフスの症例定義について、カラチの地域疾病サーべイランス対応ユニット(RDSRU)が正式にまとまりました。 2016年から2018年までに報告されたすべての腸チフスの症例は、これらの症例定義に従ってレビューされ分類されました(表1参照)。 


表1.薬剤耐性状態による腸チフス症例の分類、パキスタン、2018年



 2016年11月1日から2018年12月9日までの間に、8188の腸チフス症例のうち5274のXDR腸チフス症例が、パキスタンのシンド州にある州疾病サーベイランス対応ユニット(PDSRU)によって報告されました。 症例の69%がカラチ(首都)で、27%がハイデラバード地区で4%が他の地区で報告されています(表2)。 S. Typhiハプロタイプ58の循環XDR株は、第一世代、第二世代セフェム、ならびに第三世代セファロスポリンに耐性でした。 パキスタンの他の地域で発生したXDR腸チフス症例の非公式の報告が行われ、さらなる検証が必要です。


表2.パキスタンのシンド州で報告されたXDR腸チフス症例の分布 [2016年11月1日から2018年12月9日まで]


 さらに、2018年1月から10月にかけて、パキスタンを訪れた人々を通して、XDR腸チフス株が国際的に伝染したことを示す報告がありました。 XDR腸チフスの6例の旅行に関連した症例が報告され、1例はイギリス、5例はアメリカからの報告です。 4例の旅行に関連した症例は、パキスタンのカラチ(シンド州)、ラホール(パンジャーブ州)、および/またはイスラマバードを訪問または滞在していました。 これら4例のケースに関する詳細は以下のとおりです。
 ・ 2例はカラチ、ラホール、そしてイスラマバードを訪れました。
 ・ 1例はカラチだけに旅行しました。
 ・ 確認待ちの1例はラホール出身でアメリカへの渡航歴があり、そこで診断され治療を受け、その後パキスタンに戻りました。

 これらの旅行に関連した症例の曝露のメカニズムや発病の正確な日については、限られた情報しか入手できないが全例でうまく治療されたという証拠があります。

【出典】
Typhoid fever - Islamic Republic of Pakistan
Disease outbreak news: Update
27 December 2018
https://www.who.int/csr/don/27-december-2018-typhoid-pakistan/en/