(No.3)


エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(2)
2019年1月9日更新

 現在も流行中のエボラウイルス病(EVD)アウトブレイクに対するWHOとそのパートナーによる対策は2018年12月30日に実施された選挙の間ベニとブテンボで起こった安全上の出来事により中断しましたが、継続しています。動員されているすべてのスタッフの安全確保のための予防的手段として選挙当日には2-3時間縮小されていました。2019年1月1日にはすべての対策活動は元に戻されました。12月はじめにフィールドでの活動が強化されてからは特にベニにおける患者数の減少を中心に多くの地域でめざましい成果を上げています。しかしこの多大な苦労によって得た成果もその拡大を阻止する事となる安全上の問題が長期化すれば感染伝播のリバウンドが起こり、無に帰する可能性があります。
 今回の報告の期間(2018年12月27日~2019年1月2日)に16人の新たな診断確定例が報告されています。内訳はそれぞれの保健行政地区で以下の通りです。(図1)ベニ(2人)ブテンボ(5人)カトワ(3人)コマンダ(1人)マバラコ(1人)オイチャ(4人)。
 2019年1月2日現在、累積患者数は609人です。(診断確定例561人、可能性例48人、図2)患者の内370人が死亡し、208人は回復しました。患者の発生は北キヴ州、イトゥリ州における16の保健行政地区で発生しており、これらの地域は元々患者が発生している地域です。診断確定例および可能性例のうち特に患者数が多いのは15-49歳の女性でワクチン接種に適していた(妊娠していないために)人たちと50歳以上の女性となっています。(図3)確定例と可能性の高い例のうち61%(374/609)は女性であり(年齢中央値28歳)男性より(年齢中央値25.5歳)も年齢層が高くなっています。特筆すべきは16%(96/607)が5歳未満の子供であり、7%(41/607)は1歳未満の乳児であることです。5歳あるいはそれ以上の年齢の子供の報告は多くがベニからのもので48%(46/96)となっています。29人は妊娠中の女性の報告で、そのうち14人はベニからの報告です。29人のうち15人は授乳中の婦人との報告です。
 1月2日現在で院内感染は公立総合病院からの患者で86人となっています。ベニ34人、ブテンボ13人、カトワ11人、マバラコ8人となっています。今回の報告期間中に新たな医療従事者からの患者発生はありませんでした。これまで累積数55人の医療従事者が罹患しており、18人が死亡して8人が患者として入院しています。臨床情報が入手できた医療従事者のうち36%(18/50)が死亡しています。11人の医療従事者は総合病院での感染とされており、ほかの30医療施設で今回のアウトブレイク期間を通じて1-3人の医療従事者の感染例が報告されています。特筆すべきはすべての患者の内22%(133/609)において発症前3週間以内に病院での暴露歴があることです。
 初発例の調査すべき期間中の接触者について追跡調査を行うことは持続するコミュニティーでの反発と最近の選挙期間中フィールドにおける治安の悪化とにより困難となったままです。このことにより発病の可能性のある接触者として同定されていなかったあらたな診断確定患者の出現を認めています。すべての患者の中で66%(327/495)は接触者としてわかっていたヒトです。また34%(177/478)は葬儀に参列していました。34%(155/451)というかなりの割合の患者はその両方の暴露歴のある人でした。
 保健省、WHOとそのパートナーはすべての流行地域、コンゴ民主共和国の他の州および隣国でのすべてのアラート報告について調査、モニターを継続しています。最新のレポ-トが出されて以後、アラート報告について同国の複数の州やウガンダで調査されました。現在まで、上述のアウトブレイク発生地域以外で出されたものについてもすべてのアラート報告についてEVDの除外調査が継続されています。



図1.コンゴ民主共和国北キヴ州、イトゥリ州における保健行政地区ごとのEVD確定例および可能性の高い例の分布(2019年1月2日現在、累積総数609人)





図2.EVD確定例および可能性の高い例の発生数の週毎の変化(発症日でカウント)
 (2019年1月2日現在、累積総数609人)




図3.コンゴ民主共和国北キヴ州、イトゥリ州におけるEVD患者の年齢分布
 (2019年1月2日現在)



【出典】
https://www.who.int/csr/don/04-january-2019-ebola-drc/en/
WHO Emergencies preparedness, response
Disease outbreak news: Update 4 January 2019