(No.9)


マダガスカル共和国における麻疹

2019年1月22日更新

 WHO(世界保健機関)は非常に大規模な麻疹のアウトブレイクに対してマダガスカル共和国公衆衛生省の対策をサポートしています。マダガスカル共和国では過去2003年と2004年に麻疹のアウトブレイクがあり、それぞれ62233人、35558人の患者が発生しています。それ以後今回のアウトブレイクまでは急激に麻疹の報告例は減少していました。2018年10月4日から2019年1月7日までの間に19539人の麻疹患者と39人の死亡例(死亡率0.2%)の報告が同国の保健省によりなされています。患者は22県内114地区のうち66地区から報告されています。19539人の患者の内375人は検査(全員IgM検査による)で確認されており、19164人は疫学的な繋がりから診断されています。後者は症例定義に合致する臨床症状があり、他の方法で診断されたり、疫学的につながりが有った患者です。今回のアウトブレイクはToamasina、Mahajanga、Antsirabe、Toliara、首都アンタナナリボ等人口の密集した都市部にまで拡大しています。殆どの患者はAnalamanga(61%)とBoeny(20%)からの報告です。最も罹患率の高いのはAnalamangaおよびMahajangのAntananarivo-Renivohitra地区(10万人あたり668人)となっています。この数値は国内の平均罹患率10万人あたり108と比較して非常に高値となっています。

 今回の疫学的な特徴は1-14歳の小児の患者が総数の64%を占めていることです。この年齢層での詳しい分布は以下の通りです。5歳未満35%、5-9歳22%、10-14歳19%。男女比は1.04とほぼ同数の罹患状況です。国の推奨する予防接種のスケジュールでは9ヶ月で定期予防接種をすることになっています。WHOや国連児童基金(UNICEF)によりますとマダガスカル共和国における2017年の麻疹ワクチン接種率は58%と推定されています。今回のアウトブレイクで報告されている患者の半数以上(51%)はワクチン未接種かワクチン接種状況が不明です。マダガスカル共和国は5歳未満の児童の栄養不良状態の率がアフリカ地域で最も高い(47%)国であり、そのことが児童における麻疹罹患時の死亡や合併症の増加のリスクにつながっています

 今回の麻疹アウトブレイクで循環している麻疹の遺伝子型はB3とよばれるもので通常、アフリカやヨーロッパでみられるものです。現在のところ近隣の国で、マダガスカルへの渡航者で麻疹患者は見つかっていません。また当初のマダガスカルにおける調査ではアフリカや、ヨーロッパでの麻疹アウトブレイクとの繋がりは確認されてはいません。
 今回の麻疹のアウトブレイクは季節性に起こるペストの再燃と同時に起こっており、公衆衛生対策が強いられています。



【出典】
https://www.who.int/csr/don/17-january-2019-measles-madagascar/en/
WHO Emergencies preparedness, response
Measles - Madagascar Disease outbreak news  17 January 2019