業務概要

検疫所の仕事とは

Ⅰ 検疫業務

 日本では流行していないが海外で流行している重大な感染症が、船舶や航空機を介して国内に侵入することを防止することが目的です。検疫法で、
第一条 この法律は、国内に常在しない感染症の病原体が船舶又は航空機を介して国内に侵入することを防止するとともに、船舶又は航空機に関してその他の感染症の予防に必要な措置を講ずることを目的とする。
 対象となる感染症(検疫感染症 )は検疫法で定められたエボラ出血熱, クリミア・コンゴ出血熱, マールブルグ病、ラッサ熱 、南米出血熱、 ペスト、天然痘(痘そう)、新型インフルエンザ等感染症、政令で定められた デング熱 、 マラリア、チクングニア熱、ジカウイルス感染症及び 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)があります。
 国際間の感染症拡大防止のためには国際間での協調協力が必要なため、WHO(世界保健機関)が国際保健規則(International Health Regulation, IHR)を定め、各国ともこれに基づいて検疫を実施しています。わが国もこれに準拠して『検疫法』を制定し検疫業務を行っています。検疫業務は、検疫法で定める「港」及び「飛行場」で行っています。この「港」及び「飛行場」は世界各国に通報され、外国から日本に到着する船舶や航空機はその「港」や「飛行場」で検疫を受けてはじめて日本への入国ができます。 検疫業務に従事する職員を「検疫官」と呼び、厚生労働大臣から任命されています。
 検疫業務は、大きく分けて次のように区分できます。
 1.検疫感染症に対する情報の収集及び提供
 2.検疫の実施
 3.患者の隔離収容、感染のおそれのある者の停留、物件の消毒
 4.申請に基づく業務
 5.港湾区域の衛生管理
 6.海外渡航者等に対する 健康相談

 1.検疫感染症 に対する情報の収集及び提供、海外渡航者等に対する健康相談
 流行地域の把握及び疫学的情報の確認:世界各国の 検疫感染症 の発生状況を各国の通報や在外日本大使館や報道等から適切に把握し、来航者の検疫に役立てます。
また得られた内容は検疫所のホームページで提供されています。(FORTH, 名古屋検疫所)また、感染症の国内侵入防止のためには海外渡航者等に渡航先での感染症の発生状況、感染症を防ぐ方法等「感染症の知識」を得ていただくことが非常に重要です。また旅行者自身にとっても感染症を防ぐことは有効です。検疫所では、予防接種の来所者、渡航者からの問い合わせ等に対応しています。


 2.検疫の実施
 検疫では入国前に感染症患者の発生の有無を確認します。その方法は、船舶(海港)及び航空機(空港)で若干実施方法が変わります。船舶では、検疫官が本船に乗船して確認する「臨船検疫」と 、船舶からの電報などによる事前通報を書類上で確認する「無線検疫」の方法があります。航空機では、検疫官が機内で患者発生を確認する「機内検疫」と、検疫ブースで患者発生を確認する「ブース検疫」があります。

(1)船舶の検疫
 船舶が、どこの国からの到着であるか、病人の発生はないか等々の事前通報を受け、検疫官が 「検疫区域」(検疫を実施する場所として指定された区域)で停泊する船舶に乗り込み次の項目について検査等を行い、 検疫感染症 の侵入のおそれがない場合に日本国内の港への入港が認められます。
(ア) 乗組員、乗客に対する患者の有無
(イ) 船内の衛生検査
(ウ) 貨物等の検査

(2)無線検疫
 検疫感染症の発生の認められていない国から、検疫感染症の病原体に汚染されるおそれがないと判断される条件を満たす船舶が来航する場合は、検疫区域での臨船検疫に代え、事前の通報により入港を認める方法です。
(ア) 規定の20項目に関する船長からの電報通報を検疫官が審査
(イ) 条件を満たさない場合、必要に応じて臨船検疫の実施

(3)航空機の検疫
 ●機内検疫
 空港での検疫は航空機がどこの国から来航するか、どこの国からの乗客がいるか等々により判断し、到着後すぐに航空機内に検疫官が乗り込み、検疫を行います。
 ●ブース検疫
 ブース(検疫を行うためビル内等に設けた一定の場所)で、個別に確認することにより検疫を行います。

 3.患者の隔離収容、感染疑い者の停留、物件の消毒
 検疫の際、検疫感染症の患者、感染のおそれのある者が発見された場合は、感染症指定医療機関に隔離・収容措置を行います。また、併せて物件等の消毒や処分を行います。

 4.申請に基づく業務
 船舶や航空機の国際航行のためや、海外渡航者が旅行のため要求される各種証明書の発給の申請を受けて実施しています。主なものに次のものがあります
 (1)船舶が国際航行のため必要とする「船舶衛生管理(免除)証明書
 (2)渡航の際要求または推奨される「予防接種」
   名古屋検疫所では黄熱の予防接種を実施。
 5.港湾区域の衛生管理
 感染症の侵入防止、拡大防止のためには、飛行場周辺や港湾区域の衛生管理が重要な仕事です。検疫所では、港湾区域(施行令第4条に基づく陸域及び水域)の衛生状態を把握するため、定期的に区域の調査や検査、港湾関係者の指導などを行っています。
 (1)衛生状態の調査、ねずみ族、虫類の生息調査及び駆除、飲料水及び海水の検査
 (2)港湾区域衛生管理運営協議会等に関する指導





Ⅱ 輸入食品監視業務の概要

 検疫所のもう一つの業務が輸入食品監視業務です。
 食品、食品添加物、器具、容器包装及び一部のおもちゃ(以下「食品等」という。)を輸入する場合、輸入者は検疫所を通じて、厚生労働大臣あてに必要事項を記載した食品等輸入届出書を提出することが義務づけられています。この食品等の輸入に際して行う検査、指導を輸入食品監視業務といいます。

 1.輸入食品の監視体制
 食品等の輸入に際して、その安全性の確保のための監視体制は、輸入時のみの監視では十分に達成されません。輸出国でなければ不可能な検査、輸入時における検査、そして最終的には輸入食品の国内流通時の検査に分けられます。
(1)輸出国における検査
 食肉等の安全性確保のための動物の生体検査、ふぐの漁獲海域の特定、魚種鑑別、貝類の養殖海域の衛生状態、水質検査等は、輸出国でのみ実施可能な検査です。
(2)輸入時の検査
ア 命令検査
 食品衛生法違反の蓋然性の高いものについて、厚生労働大臣が輸入者に対して、指定検査機関での検査を命令します(法第15条第3項)。

イ 行政検査
 【モニタリング検査】
 違反の蓋然性の低いものを対象に、年間計画に基づいて実施します。この検査は、国が輸入食品についての情報を収集するのが目的で、違反品を発見するためではありません。従って、貨物が到着したら検体だけを、採って食品を流通させながら検査を行います。

 【モニタリング検査以外の検査】
 輸送途上に発生した事故品の検査、計画輸入の初回貨物の現場検査、輸入米の検査、台湾産ティラピアの検査、ふぐの魚種鑑別、放射能検査及び違反品の現場検査等を行います。】

ウ 指導検査
 1.輸入品についての法に違反していない旨の確認検査、継続的に輸入される食品等を定期的に法に違反していない旨の確認検査等を指導します。

 2.厚生労働省からの指示に基づく輸入時の検査を行います。
(3)国内での検査
輸入後、流通までの間の保管等の衛生状態の検査、流通時の表示等の検査、その他国内食品と同様の監視を行います。


 2.食品監視業務
(1)輸入相談
 食品等の輸入に先立ち、食品等の原材料、添加物、殺菌方法等を含めた製法・加工方法等の資料に基づいて、輸入者に確認事項、検査内容の指導を行います。
(2)事前の検査
 先行サンプル(輸入する食品等と同一のもの)を入手し、成分規格、添加物等の検査を指導します。
なお、輸出国公的検査機関での検査結果も認められる旨指導します。また、事前に検査することで未然に食品衛生法違反を防止することができ、輸入時における手続きが迅速に行えます。
(3)食品等輸入届出
 輸入に際して、必要事項を記入した食品等輸入届出書2部、添付書類として食肉、食肉製品を輸入する場合は衛生証明書を、ふぐを輸入する場合は魚種、漁獲海域等に関する衛生証明書を、また、初めて輸入する加工食品等については、原材料、添加物、製造方法等に関する資料を添付します。
届出方法については、書面による届出(当所では全届出の約10%)の他に、コンピューター(輸入食品監視支援システム「FAINS」)による届出も可能 です。
(4)手続き簡素化のための制度
ア 事前届出制度
すべての食品等について、貨物到着予定日の7日前から届書を受け付けています。検査の必要なものを除き、貨物の到着前または、搬入後速やかに届出済証が交付されます。

イ 計画輸入制度
特定の食品等を繰り返し輸入する場合、初回輸入時に輸入計画書等を提出し、現場検査を実施した上で 問題 がなければ一定期間内は次回からの輸入のつどの届出が省略できます。

ウ 同一食品等の継続輸入
特定の食品等を繰り返し輸入する場合、それに対する理化学検査(規格(微生物の項目を除く。)、添加物)の有効期間等の実績があれば、それを申告できるシステムです。この申告がない場合は、検査を指導することがあります。
(5)検査結果による措置
ア 合格と判断された場合
 輸入者は、届出済の届書、若しくは届出済証を税関に対する輸入申告時に添付して通関手続きを行います。

イ 不合格と判断された場合の措置
食品衛生法に基づく規格基準等に適合せず、不合格(違反)と判定された貨物は、検疫所長から輸入者に対し、食品衛生法違反の内容と措置方法が通知されます。この通知の指示に基づき積戻し、廃棄等の措置を行います。