感染症情報

感染症の解説 鳥インフルエンザA(H5N1, H7N9)とは

 インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型の大きく3種類があります。
 このうちA型とB型は日本でも毎年冬になると大流行することで有名です。これを季節性インフルエンザと呼びます。

 実はC型インフルエンザもヒトに感染するのですが、A型、B型に比べると症状が軽く、基本的に生涯に1回しか感染しない(1回の感染で十分な免疫が付く)ため、病院などでC型インフルエンザを検査で見つけることは通常ありません。

●A型インフルエンザは本来は水鳥(水きん類)の感染症

 A型、B型、C型のうち、B型はヒトだけの感染症で、C型はヒトとブタだけの感染症です。
 これに対し、A型インフルエンザは本来はカモ、アヒル、ガチョウなどの水鳥(水きん類)の感染症なのです。

 さらに、A型インフルエンザはより細かい無数の型に分かれています。

 A型インフルエンザウイルスの表面には、様々な分子の突起物があります。突起物のうち、ウイルスの性質や感染性に大きく影響する分子が2種類あり、それぞれの分子名の頭文字をとって「HHemagglutinin)」「NNeuranimidase)」と呼ばれます。
 HもNもそれぞれに細かい形の違いがあり、それらの形の違いは番号によって区別されています。
 Hには「H1~H16」の16種類の形が知られており、Nには「N1~N9」の9種類の形が知られています。
 すべてのA型インフルエンザウイルスはHのどれか1種類とNのどれか1種類を持っているため、HとNの組み合わせで名前を呼ぶことになっています。例えば、「インフルエンザA(H1N1)」「インフルエンザA(H9N2)」といった呼び方をします。
 HとNの組み合わせによって、理屈の上では16×9=合計144種類のA型インフルエンザウイルスが存在します。

 カモ、アヒル、ガチョウなどの水鳥(水きん類)は、このA型インフルエンザのHとNの組み合わせの多くに感染します。2015年時点で、144種類のうち70種類以上のA型インフルエンザウイルスが水鳥から発見されています。
 A型インフルエンザウイルスに感染した水鳥は、ヒトで言う風邪程度の軽い症状で済むこともあれば、肺炎などで高率に命を落とすこともあります。

●ヒトや他の動物にも感染するA型インフルエンザ

 本来は水鳥の感染症であるA型インフルエンザですが、長い歴史の中で、ヒトにも感染し、ヒトとヒトの間で容易に感染が拡大するようなA型インフルエンザウイルスもいくつか登場しました。
 それが毎年ヒトの間で大流行するA型インフルエンザウイルスであり、現在は「インフルエンザA(H1N1)」と「インフルエンザA(H3N2)」の2種類がヒトとヒトの間で直接感染します。

 ヒト以外にも、ニワトリウズラ(※鳥ではあるが水鳥ではない)、ブタ、ウマ、犬、猫、アザラシ、クジラなどにも、ヒトと同じようにその動物種の間だけで容易に感染するようなA型インフルエンザウイルスが、長い歴史の中で登場してきました。

●ニワトリなどの家きんからヒトに感染するA型インフルエンザ

 食用などのためにヒトが飼育する鳥類を特に家きんと呼びます。ニワトリがその代表ですが、アヒルやガチョウなどの一部の水鳥も家きんとして飼育されます。

 水鳥の家きんには当然数10種類のA型インフルエンザが感染します。一方で、ニワトリなどの水鳥ではない家きんには数種類のA型インフルエンザウイルスが感染し、家きん同士の間で容易に伝播することが知られています。

 このうち、2種類のA型インフルエンザウイルス「A(H5N1)」と「A(H7N9)」が家きんからヒトへ感染する事例が近年になって多数報告され、しかも感染したヒトは重い肺炎を起こしやすいことがわかってきました。これらは、ヒトのA型インフルエンザと区別するため、「鳥インフルエンザA(H5N1)」「鳥インフルエンザA(H7N9)」と呼ばれます。
 なお、本来の感染源である野生の水鳥からもこの2種類のウイルスはヒトに感染し得ますが、野生の水鳥よりも圧倒的に家きんの方がヒトの身近にいるため、ヒトへの感染例の殆どは家きんからです。

 なお、これらのヒトにも感染する鳥インフルエンザは、新型インフルエンザとは異なります。

●発生地域:鳥インフルエンザA(H5N1)

 鳥インフルエンザA(H5N1)のヒトへの感染が初めて報告されたのは1997年のことですが、ヒト感染事例が連続して報告され始めたのは2003年以降です。
 これまでに、インドネシアベトナムをはじめとするアジア各国、およびエジプトなど中東地域から多く報告されています。
 なお、2019年4月時点で、2017年9月を最後に新たな発生例の報告はありません。

鳥インフルエンザA(H5N1)発生地域2019

●発生地域:鳥インフルエンザA(H7N9)

 鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトへの感染が初めて報告されたのは2013年3月で、それ以降年々報告数が増加しましたが、2017年のピークを最後に2018年以降は突然報告数が激減しました。激減した理由はよくわかっていません。
 ほとんど全てが中国での発生です。

鳥インフルエンザA(H7N9)発生地域2019

●感染経路

 いずれの鳥インフルエンザも、家きんとの濃厚接触によって感染します。
 すなわち、自宅での家きんの飼育、家きん農場(養鶏場など)での勤務、家きんの屠殺と調理、生きた家きんを売買する市場(生家きん市場)への立ち入り、といった行動によって鳥インフルエンザがヒトに感染することがわかっています。

 ヒトからヒトへ直接感染することは基本的にはありませんが、鳥インフルエンザA(H7N9)では、看病した家族や、病院で同じ部屋に入院した患者同士などの、限定的なヒト-ヒト感染事例が報告されています。

●症状

 鳥インフルエンザA(H5N1)で感染から2-8日程度、鳥インフルエンザA(H7N9)で感染から1-10日の潜伏期間を経て、発熱、咳、痰、呼吸困難などの気管支炎や肺炎の症状で発症します。X線(レントゲン)写真でも明らかな肺炎になることが多く、呼吸不全が進行して死に至ります。

 致死率は、鳥インフルエンザA(H5N1)で約53%、鳥インフルエンザA(H7N9)で約39%と、いずれも重症度の高い疾患です。

●治療法

 季節性インフルエンザの治療にも広く使われるオセルタミビル(商品名タミフル©など)などの抗インフルエンザ薬が鳥インフルエンザにも使用されます。季節性インフルエンザ治療に比べてより多くかつより長期間投与する治療法が試みられていますが、効果は確立されていません。
 その他にも、症状を和らげ生命を維持するための対症療法および支持療法が行われます。

●予防法

 これらの鳥インフルエンザがヒトにとっての新型インフルエンザへと変異する可能性に備えて、実験的なワクチンを作成する準備は行われています。しかし、鳥インフルエンザがヒトに感染することそのものを予防する目的のワクチンはありません。

 発生地域においては、家きんへの濃厚接触を避け、衛生状態を保つこと、すなわち、

  • 生きた家きんを売買する市場(生家きん市場)には決して立ち入らない、近づかない
  • 家きんを飼育している民家や、家きん農場(養鶏場)などには決して立ち入らない、近づかない
  • 家きんを屠殺する場には決して居合わせない、近づかない
  • 流水と石けんで手をよく洗い(特に飲食の直前に)、衛生状態を保つ
などの予防策が必要です。

【参考】

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