感染症情報

感染症の解説 ポリオとは/伝播型ワクチン由来ポリオウイルスとは

 本項では、先にポリオ(急性灰白髄炎)について解説し、その後に伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)について解説します。

ポリオとは

 ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスの感染によって起きる急性の麻痺性疾患です。主に5歳以下の小児が発症し、日本では「小児麻痺」とも呼ばれています。ヒトだけが感染します。

 ポリオウイルスには1型、2型、3型の3つの型があります。どの型でも同じ症状を起こします。

●発生地域

 後述のとおりワクチンが全世界に普及したため、ポリオが発生する国は2018年末の時点でアフガニスタンパキスタンの2か国だけになりました。

 日本では1980年の発生が最後であり、その後の詳細な調査を経て2000年にポリオが排除状態にあることが宣言されました。

●感染経路

 ポリオウイルスで汚染された水などがヒトの口に入り、腸の中で増殖して全身に感染します。
 さらに、感染者の腸で増えたウイルスが便に排出され下水に流入します。上下水道が整備されていないなど衛生状態が悪い場合に、下水に流入したウイルスは再び他のヒトの口に入り、感染が拡大します。

●症状

 感染者の90%以上は症状が出ません(不顕性感染)。
 感染者の4-8%で、ウイルスが腸や咽頭で増殖し、発熱、頭痛、咽頭痛、嘔吐などの風邪のようなの症状を生じます。

 感染者のごく一部(0.1-2%)で、6-20日の潜伏期間を経て、ウイルスが脊髄や脳に入り、腕や脚の急激な麻痺を生じます。
 麻痺に至った患者の多くは快復しますが、一部の患者で生涯続く麻痺が残り、重い障害となります。
 また、呼吸筋の麻痺などで死亡することもあり、致死率は小児で2-5%、成人で15-30%に達します。

●治療法

 ウイルスに対する特異的な治療法はなく、対症療法のみです。麻痺を快復させる治療法もありません。

●予防法

 有効なワクチンが早くから実用化されています。
 毒性を弱くしたウイルスを口から飲むタイプの経口生ワクチンと、ウイルスの断片を用いた注射タイプの不活化ワクチンの両方があります。

 経口生ワクチンは、ポリオウイルス1、2、3型のすべての型を含んでいます。
 長年世界的に広く普及し、患者数の激減をもたらしてきました。
 ところが、患者数が激減した国・地域では、経口生ワクチンに含まれるウイルスそのものによるポリオ様の麻痺性疾患(vaccine-associated paralytic poliomyelitis; VAPP)が報告されるようになりました。経口生ワクチン接種者100万人あたり数人という極めてまれな副反応ですが、生涯にわたり麻痺が残るため、重大な副反応として問題視されるようになりました。

 不活化ワクチンはウイルスを断片化しているため、このような麻痺性の副反応は生じません。
 そのため、ポリオ患者が激減または発生しなくなった国・地域では、経口生ワクチンが順次不活化ワクチンへと切り替えられてきました。

 日本でも2012年に、小児のポリオ予防接種が経口生ワクチンから注射タイプの不活化ワクチンへと切り替わりました

 なお、1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)の生まれ日本で経口生ワクチンを受けた方々は、その当時のワクチンに含まれていたポリオウイルスの性質により、ポリオに対する免疫が不十分であることが旧・厚生省の調査で判明しました。
 1975年(昭和50年)-1977年(昭和52年)生まれの方は、アフガニスタン、パキスタン、及び下記の伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の発生地に渡航する際には、不活化ワクチンによる追加接種を受けることをお勧めします。

伝播型ワクチン由来ポリオウイルスとは

 経口生ワクチンに含まれるポリオウイルス(ワクチン株ウイルス)は、接種されたヒトの腸の中で増殖し、一部は便に排出され下水などに流入します。通常は、このワクチン株ウイルス自体が他のヒトの口に入っても、病気を起こすことはありません。

 しかし、このワクチン株ウイルスが下水などの環境の中で長期間循環し続けると、ごく稀に遺伝子変異を起こし、本来のポリオウイルス(野生株ウイルス)のように、ヒトにポリオと同様の麻痺性の病気を起こすようになります
 これを「伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(circulating vaccine-derived poliovirus: cVDPV)」と呼びます。

 cVDPVは、ポリオワクチンの接種割合が極端に低下した地域で、ワクチン株ウイルスが下水などで少なくとも1年以上にわたって循環し続けた場合に、発生する可能性が出てきます。

●発生状況

 cVDPVは、2017年時点で世界の21か国で計24回の発生が確認されており、総患者数は760人にのぼります。

 これまでに検出された cVDPVの90%以上が2型ウイルスです。
 一方で、野生株ポリオの2型ウイルスは、2015年に世界全体からの根絶が宣言されました。
 したがって、現在検出される2型ウイルスはすべて、cVDPVのみということになります。

●予防

 上記のとおり、ワクチン株2型ウイルスによる新たなcVDPVの発生を防ぐ目的で、2型を取り除いて1型と3型だけで作られた経口生ワクチンが、2016年に各地で導入されました。

 世界保健機関(WHO)は、野生株ポリオまたはcVDPVによるポリオ発生地域への渡航の際に、ポリオワクチンを追加接種することを推奨しています。

 また、インドパキスタンなどの一部の国・地域では、海外からの渡航者や同国からの出国者に対して、ポリオワクチン接種と予防接種国際証明書の提示を要求しています。
 これらの国に渡航する際には、当該国の大使館などに確認が必要です。

 ポリオの解説の再掲になりますが、1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)の生まれ日本で経口生ワクチンを受けた方々は、その当時のワクチンに含まれていたポリオウイルスの性質により、ポリオに対する免疫が不十分であることが旧・厚生省の調査で判明しました。
 1975年(昭和50年)-1977年(昭和52年)生まれの方は、アフガニスタン、パキスタンに加え、上記の伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の発生地に渡航する際には、不活化ワクチンによる追加接種を受けることをお勧めします。

【参考】

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