感染症情報

感染症の解説 ハンタウイルス肺症候群とは

 「ハンタウイルス」という名称は種々のウイルスの総称(属名)であり、これに分類される種々のウイルスがヒトに一定の病気を起こします。ハンタウイルスはいずれもネズミ(げっ歯類)が媒介します。
 このうち、複数のウイルス(シンノンブレウイルス、アンデスウイルスなど)がヒトに肺を主とした同じ症状の病気を起こすことが知られているため、個々のウイルスの名前ではなくグループの名前(属名)によって「ハンタウイルス肺症候群」(Hantavirus Pulmonary Syndrome: HPS)と呼ばれています。

●発生地域

 ハンタウイルス肺症候群を起こすウイルスは、カナダ、アメリカ合衆国、パナマ、ボリビア、ブラジル、アルゼンチンなどの南北アメリカ大陸に広く分布しています。

●感染経路

 ハンタウイルスに感染したネズミ(げっ歯類)に触ったり咬まれた場合に、あるいはそれらの排泄物や唾液が混ざった塵(ちり)やほこりを吸い込むことで、ハンタウイルスに感染します。
 ヒトからヒトへ直接感染することはないと考えられていましたが、ごく限定的な状況で、ヒト-ヒト感染したと考えざるを得ない例も報告されています。

●症状

 感染から1-5週間の潜伏期間(一般的には2週間)を経て、風邪のような症状で発症します。症状は急速に進行し、重い肺炎(両側間質性浸潤影が出現)から呼吸困難になります。
 頭痛、めまい、悪寒、吐き気、嘔吐、下痢、上腹部痛なども現れます。

 致死率は40-50%で、重症度の高い疾患です。

●治療法

 ウイルスに特異的な治療法はありません。症状を和らげ生命を維持するための対症療法および支持療法が中心となります。
 早期の集中治療が患者の予後を左右します。このため、この疾患が疑われる患者は、高度医療施設に可能な限り早期に搬送する必要があります。

●予防法

 ワクチンはありません。
 ウイルスを媒介するネズミ(げっ歯類)に接触しないことが唯一の予防法です。

 屋内ではネズミが侵入しないような対策を行い、排泄物が食べ物に混ざらないようすべての食べ物に厳重に蓋をして保存します。
 普段立ち入らない倉庫や小屋などを掃除する際に、ネズミの排泄物を吸い込んでしまうこともあるため、侵入防止対策をすると共に、掃除の際には排泄物を注意深く確認する必要があります。
 屋外でのキャンプなどでもネズミが近づかないような対策が必須です。

 南北アメリカ大陸の発生地域に渡航する際には、現地でのハンタウイルス肺症候群の発生状況をチェックし、ネズミ対策をしっかり行いましょう。

【参考】

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