感染症情報

感染症の解説 マラリアとは

 マラリアは、マラリア原虫による感染症です。ハマダラカという種類の蚊によってヒトに感染します。

 原虫とは、微生物の一種であり、細菌と同じ単細胞生物です。ただし原核生物(細胞核を持たない)である細菌とは異なり、原虫は真核生物(細胞核を持つ)であり、細菌よりも複雑な機能を持っています。

●発生地域

 全世界の熱帯~亜熱帯地域に広く分布しており、2015年時点で95ヶ国・地域で発生が確認されています。
 また、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から韓国との国境線(軍事境界線)にかけての一帯でも発生しており、温帯~亜寒帯でも発生する感染症です。

マラリア発生地域WHO2016

 長年にわたり多数の患者と死亡者が発生してきたため、世界保健機関(WHO)を中心に世界的なマラリア対策が実施されてきました。
 その結果、世界でのマラリアの発生は年々減少し、2000年に比べて2015年時点では1年あたりの患者数が22%減少しました。

 それでもなお、2015年には世界全体で、1年あたり約2億1千万人がマラリアに感染し、うち43万人が命を奪われました
 また、患者も死亡者も全体の90%は、アフリカのサハラ砂漠以南地域で発生しています。しかも、死亡者の70%は、5歳未満の小児です。
 アフリカのサハラ以南地域の幼い子ども達の命を奪い続けるマラリアを予防することは、世界的な課題なのです

 ヒトに感染するマラリア原虫は5種類あり、病気としての特徴や発生地域も異なります(下表参照)。

5種類のマラリア原虫
原虫の種類 特徴
熱帯熱マラリア
  • 世界全体のマラリア患者の96%を占める
  • アフリカでのマラリア患者はほぼすべて熱帯熱マラリア
  • 貧血や脳マラリアなどによって重症化しやすい;特に小児
  • 重症化した熱帯熱マラリアの致死率は数10%
三日熱マラリア
  • 世界全体のマラリア患者の4%を占める
  • アフリカ以外(アジア、アメリカ大陸、中東など)でのマラリア患者の30-70%が三日熱マラリア
  • ほとんどが軽症だが、まれに重症化して死亡する
四日熱マラリア
  • 発生はかなりまれ
  • 基本的に軽症
卵形マラリア
  • 発生はかなりまれ
  • 基本的に軽症
サルマラリア
  • サルだけに感染すると考えられていたマラリア
  • 2004年にマレーシアで初めてヒト感染事例が発見され、その後も東南アジアで散発

 近年の日本では国内発生はありません。
 1960年代までは国内でも発生がありました。寒冷地帯である北海道をはじめ(明治時代の「屯田マラリア」など)、本州や沖縄でも発生が続きました。第二次世界大戦中の波照間島をはじめとする悲惨な「戦争マラリア」も記録に残されています。

 現在は、流行地域からの入帰国者による輸入例が1年あたり50-70例発生しています。

●感染経路

 5種類のマラリア原虫はいずれも蚊(ハマダラカ)に刺されることで感染します。ヒトからヒトへ直接感染することはありません

●症状

 ハマダラカに刺されてマラリア原虫が体内に侵入してから7-15日間(四日熱は30日間まで)の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、悪寒、嘔吐で発症します。初期は症状が軽くマラリアであることに気付かない場合があります。

 熱帯熱マラリアの場合は発症から24時間以内に治療を開始しなければしばしば重症化し、その多くが命を落とします。
 特に小児での熱帯熱マラリアが重症化しやすく、重い貧血、呼吸不全や、脳にマラリア原虫が侵入する脳マラリアをしばしば発症します。成人の重症マラリアでは多臓器不全を合併しやすくなります。

●治療法

 マラリア原虫に効果がある抗マラリア薬が複数開発されています。
 軽症の場合には抗マラリア薬の内服、重症の場合には抗マラリア薬を注射や点滴薬で投与して治療します。
 その他、症状に応じた治療(対症療法)も行います。

 三日熱マラリア卵形マラリアの場合は、肝臓の細胞内に休眠状態のマラリア原虫が潜んでいます。マラリアの急性期の治療は血液の中にいるマラリア原虫にしか効果がないため、急性期の治療が終わった後に、肝臓内で休眠している原虫を死滅させるための内服薬を継続投与します。

 なお、一部地域のマラリア原虫は、抗マラリア薬に対する耐性を獲得しています(耐性マラリア)。そのため、耐性マラリア発生地域で感染した患者の治療では、慎重な薬剤選択が必要になります。

●予防法

 マラリアに対するワクチンは開発が進んでおり、感染をある程度は予防できるワクチンがアフリカの一部流行地域で2019年に使用開始されました。しかし、日本などからの渡航者にも十分な効果があるワクチンはまだ開発されていません。

 重要な予防法の一つが、蚊に刺されないような対策です。
 特に流行地では、殺虫剤を染み込ませた蚊帳や、屋内の壁などに噴霧すると長期間(3-6ヶ月間)効果が持続する殺虫剤が実用化され、マラリアの減少に高い効果を上げています。

 流行地域に渡航する場合は、抗マラリア薬の予防内服が効果的です。
 日本でもマラリア予防内服に使用できる薬剤が認可されており、渡航外来、トラベルクリニックなどで処方を受けることができます。
 予防薬は、流行地域への渡航前から開始し、滞在中を通じて内服し、流行地域から出た後(帰国後など)も一定期間継続内服します。必要な服用期間は薬ごとに定められています。

 なお、海外でマラリア予防薬の処方を受けたり、海外でマラリアの治療を受ける場合には、十分注意してください。
 抗マラリア薬をはじめ、違法に製造されたさまざまな偽造薬、模造薬が世界各国で大量に流通しています。不用意に偽造薬を入手して服用すると、全く効果が出ないばかりか、成分によっては健康をさらに害するおそれすらあります。

 海外でマラリア予防薬・治療薬の処方を受ける際には、信頼できる医療機関を選んでください。また予防薬は海外渡航前に日本国内で処方を受けるのが安心でしょう。

【参考】

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