感染症情報

感染症の解説 ペストとは

 ペストは、ペスト菌Yersinia pestis)による感染症です。

 歴史上何度も大規模な流行の波が人類を襲っています。
 14世紀のヨーロッパの流行では、人口の3分の1以上がペストによって失われ、皮膚が黒くなる特徴的な症状から「黒死病(Black Death)」と恐れられました。

●発生地域

 ペストは現代も世界各地で発生しています。発生地域は下図のとおりです。
 アメリカ合衆国でもロッキー山脈周囲で広範囲にペスト菌の分布が確認されています。

ペスト発生地域 WHO2016

●感染経路

 ネズミなどの野生動物や家畜に寄生するノミが体内にペスト菌を持っています。
 このノミに刺されたり、ノミによってペスト菌に感染した動物の体液、血液に触れることによって、ヒトに感染します。

 また、ペスト患者の体液や血液に触れたり、後述の肺ペスト患者の近くにいるだけでもペストに感染することがあります。

●症状

 ペストには、感染経路の違いから、腺ペスト敗血症性ペスト肺ペストの3つの型があります。

腺ペスト
ペスト患者全体の80-90%を占めます。
ノミに刺されてから2-7日の潜伏期間を経て、刺された場所に関係したリンパ節にペスト菌が感染します。リンパ節はテニスボールのように大きく腫れあがり、高熱や皮下出血も生じます。この皮下出血が黒ずんで見えることからかつて「黒死病」と恐れられました。早期に治療しないと死亡します。
敗血症性ペスト
ペスト患者の約10%を占めます。
ペスト菌が傷口などから直接血液内に入った場合に、リンパ節等の症状が出ないまま突然にショック症状となり、全身に皮下出血が生じて黒くなります。高率に死亡します。
肺ペスト
ペストで最悪の病態です。
腺ペストが進行してペスト菌が血中に入った場合に、または敗血症性ペストによって、ペスト菌が血液から肺の中に逆流します。これが肺ペストと呼ばれる状態で、ペスト菌による重症な肺炎によって死に至ります。
かつ、肺ペスト患者の咳や痰の中には、非常に小さな水滴(エアロゾル)に包まれた状態のペスト菌が含まれ、他のヒトはこれを吸い込むことで直接的に肺ペストを発症します。肺からペスト菌を吸い込んだ場合の潜伏期間は12時間-2日間程度と極めて短く、また肺ペスト発症から死に至るまでも12時間-数日です。

●治療法

 抗菌薬が有効です。
 かつてはストレプトマイシンが、現代ではゲンタマイシン、ドキシサイクリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシンなどが治療に用いられます。特に腺ペストでは発症早期に投与することで治癒救命が期待できます。

●予防法

 ワクチンがかつて使用されていましたが、十分な効果がないことから現代では使用されていません。

 流行地では野生動物、感染が疑われる家畜やペットに近づいたり触れないよう注意する必要があります。

 感染源(ノミ、感染動物、ペスト患者)への接触者に対しては、上述の抗菌薬を予防投与することで発症を高率に防ぐことができます。

【参考】

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