感染症情報

感染症の解説 ジカウイルス感染症とは

 この疾患はジカウイルスによる感染症です。日本で知られるようになった当初は「ジカ熱」と呼ばれていましたが、発熱しないこともしばしばあるため、「ジカウイルス感染症」に名称変更されました。

 ヤブ蚊によってヒトに感染しますが、性交渉によってヒトからヒトへ感染することもあります。

●発生地域

 ジカウイルスが初めて発見されたのは1947年ウガンダでのことでした。
 その後はあまり注目されることがなく数10年が経過し、2007年に太平洋のミクロネシア連邦で大規模発生したことで再注目されました。
 さらに2013年にフランス領ポリネシア、2014年にチリ・イースター島と東へ感染が拡大し、2015-2016年にかけてブラジルやコロンビアをはじめとする南アメリカ大陸とカリブ海地域で広範囲な大規模発生がありました。

 アフリカ大陸の土着ウイルスが数10年かけて地球を東回りにアメリカ大陸まで拡散したということは、大規模発生は報告されなかったものの、拡散の途中でアジア一帯にもジカウイルスが広まったことを意味します。
 なお、日本では発生していません。

 現在では世界保健機関(WHO)などがジカウイルスの発生地域を国ごとに分類して公表しています。下図は2018年2月15日付けの最新版です。

ジカ発生地域 2018-02-15

 詳しい国名については厚生労働省の情報をご参照ください。

●感染経路

 ジカウイルスは、ウイルスを持っているヤブ蚊デング熱チクングニア熱を媒介するのと同じ種類の蚊)に刺されることで感染します。

 また、精液を介して性交渉によって男性からそのパートナーへジカウイルスが感染した事例も複数報告されています。理論的には、輸血でも感染する可能性があります。

●症状

 ジカウイルスに感染してから2-12日の潜伏期間を経て、発熱、結膜炎、頭痛、筋肉痛、関節炎、脱力、発疹などの症状が現れます。後眼窩痛(目の奥の痛み)、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛をおこすこともあります。
 症状は2-7日間続き、自然に治まります。
 デング熱やチクングニア熱に比べると、症状は比較的軽く済むことが多いようです。

 感染しても症状が出ないこと(不顕性感染)があるとされていますが、報告によって20%程度から80%程度までかなりばらつきがあり、正確な不顕性感染の割合は不明です。

 なお、症状が治った後でも、不顕性感染の場合でも、最長で6か月間にわたり血液などからジカウイルスが検出されることがわかっています。

●合併症

 ジカウイルスは、妊娠中の胎児を含めた神経系の合併症が大きな問題です。

 2015-2016年の南米・カリブ海での大流行の際に、通常よりも小さな頭蓋骨で生まれてくる赤ちゃんがたくさん報告されました。後に、ジカウイルスが妊娠中の女性に感染したことによる胎児の合併症であることがわかりました。
 「小頭症(しょうとうしょう)」と呼ばれ、頭蓋骨が小さいために脳の発育も不十分となり、知能の発達や体の成長が遅れたり、けいれんが起きるなどの、重い障害となります。
 妊娠中の女性がジカウイルスに感染すると、およそ6%の確率で小頭症の赤ちゃんが生まれます。ジカウイルスによる症状が妊婦に出ても出なくても、同じ6%の確率で胎児が小頭症になります。つまり、妊婦がジカウイルス感染に気付かないまま小頭症の赤ちゃんが生まれてしまう可能性があるのです。

 赤ちゃんだけでなく、ジカウイルスに感染した本人に「ギラン・バレー症候群」という神経系の合併症が起きることもあります。
 ギラン・バレー症候群とは、風邪をはじめとする様々な感染症にかかった後で、ごくまれに、免疫システムが自分自身の神経を攻撃して破壊してしまう病気です。
 ジカウイルス感染症の後にもギラン・バレー症候群が起きることがあり、すべての年齢の男女であり得ますが、特に若い男性が発病しやすいことがわかっています。

●治療法

 ウイルスに特異的な治療法はありません。症状を和らげるための対症療法が中心となります。

 妊婦がジカウイルスに感染した後、あるいは蚊に刺されるなど感染したおそれが生じた後で、胎児の小頭症を防ぐ治療法はありません

 ギラン・バレー症候群を発病した場合は、専門的な治療が行われます。

●予防法

 ワクチンは開発段階であり、まだ実用化されていません。
 現状では蚊に刺されないことが唯一の予防法です。

 生まれてくる赤ちゃんの小頭症を予防するために、妊娠中の女性はジカウイルス流行地に渡航すべきではありません
 妊娠中に流行地にやむを得ず滞在する必要がある場合は、十分な虫除け対策を行うと共に、現地の医師などのアドバイスに従ってください。

 また、上述のとおり、不顕性感染であっても最長で6か月間は体内にジカウイルスが残っているおそれがあります。
 よって、流行地域に滞在した女性は、蚊に刺されたり症状が出た覚えがなくても流行地域を離れた後6か月間は妊娠を避けるべきです
 同時に、精液を介して男性からパートナーに感染することもあるため、流行地域に滞在した男性は、蚊に刺されたり症状が出た覚えがなくても流行地域を離れた後6か月間は性交渉を避けるか、コンドームを使った安全な性交渉を行うべきです

 詳しくは厚生労働省の解説ページもご参照ください。

【参考】

感染症情報のページへ戻る