感染症速報詳細

記事日付 20090216
タイトル 淋菌-カナダ:(オンタリオON), フルオロキノロン耐性
国名 カナダ フルオロキノロン耐性   
感染症名 淋菌
概要 [1]  淋菌のフルオロキノロンに対する耐性率は、2002年の4%から2006年には28%に増加している
和文 http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20090203.wlsex03/BNStory/specialScienceandHealth/home
オンタリオOntario州では、抗生剤耐性の淋菌_Neisseria gonorrhoeae_が憂慮すべき勢いで広がっており、safe sexが実行されなくなっていることへの不安が生じていることが、カナダで行われた新しい研究で明らかになった。淋菌のフルオロキノロンに対する耐性率は、2002年の4%から2006年には28%に増加している(このスタディはCanadian Medical Association Journalに掲載 http://www.cmaj.ca/cgi/content/full/180/3/287)。カナダでは、1997年から2007年の間に淋病感染率が、2倍以上の10万人当たり15人から35人に増えており、人々の性感染症に対する予防への関心のなさが懸念される。このスタディによるとフルオロキノロン耐性の淋病は30歳以上の人々に多かった。別の複数の研究では、フルオロキノロン耐性は同性愛者の男性に多く認められていることが示されているが、今回の研究では耐性率は均等に分かれていた。研究によると、耐性株は淋病の多いアジアの国々を訪れた人たちから、Ontario州の住民に広がった可能性がある。Ontarioはもっとも大きな州であり、人々が行き交う主要な中心地であることから、フルオロキノロン耐性の淋菌が存在する率が高いのかもしれない。この研究の掲載雑誌の論説によると、オーストラリアのシドニーSydneyのような、他の人口の多い旅行の中心地でもまた、高い割合で抗生剤体制の感染症が認められている。淋病に対する他の抗生剤としてはセファロスポリンが知られており、カナダやアメリカなどの国々ではフルオロキノロンに代わって推奨されている。しかしさらに大きな問題として、環太平洋地域でセファロスポリンへの耐性を示す淋菌株が報告されている。
[2] 男性でより多くの耐性が認められる傾向がある
投稿者:加・David Fisman, MD MPH FRCPC、2009年2月15日。
オンタリオ州における別の興味深い疫学事項として、淋菌感染において予測される男女比(男性優位)を上回る、FQ耐性淋菌での男性優位がある。しかし、FQ耐性分離菌株が、米国のmen who have sex with men [MSM] の男性により多く認められるにもかかわらず、我々のMSM指数 (MSM患者を中心に診察を行うクリニックの患者数)は正直なところ正確ではないが、MSMとFQ耐性との関連性は見いだされていない。ON州のFQ-resistant GC isolatesに関する遺伝疫学の評価は現在進行中である。
[Mod.ML注-WHOと米国CDCは、淋菌疾患の治療方針の薬剤のうち、一般患者の中で、その薬剤への耐性が5%を超えるようであれば、他の薬剤への変更を勧めている。淋菌感染の治療に推奨されるいずれの治療法でも、95%以上の治癒率を期待できるようにするためである。カナダ、米国、英国、日本およびオーストラリアでは、淋菌感染の治療法として現在、第3世代セファロスポリン系薬(cefiximeまたは注射用ceftriaxoneCTRX、あるいは両方)を推奨している。これまで、CTRXによる治療の不成功例は報告されていないが、経口の第3世代セファロスポリン薬での不成功例の報告がある。以下に米国におけるCDCの推奨する淋病治療からの抜粋を示す http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5614a3.htm(以下要点のみ)
-合併症のない泌尿生殖器および肛門直腸の淋菌感染症では、ceftriaxone CTRX 125 mgの1回筋注もしくはcefixime 400 mg単回経口を勧める(代替としてcefpodoxime 400 mg or cefuroxime axetil 1g) ほかceftizoxime 500 mg, cefoxitin 2 g with probenecid 1 g orally, or cefotaxime 500 mgがあるが、CTRXに対する優位性は認められない PCおよびセファロスポリンに対するアレルギーのあるものでは、spectinomycin 2 g筋注を代替とするが、米国では入手できない
-淋菌による咽頭感染では、ceftriaxone 125 mgの1回筋注を勧める
-azithromycin 2 gの1回内服も有効であるが、1990年以降MICの上昇が認められるなどの耐性発生の懸念があり、一般的な使用は勧めない ただし重篤なPCやセファロスポリンアレルギーのある患者では、いずれの感染の治療薬としても選択してよい]

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