感染症速報詳細

記事日付 20090313
タイトル マラリア - 米国:P. knowlesi (ニューヨーク市 NYC) ex フィリピン (パラワン PL): 2008
国名 米国    
感染症名 マラリア
概要 Simian malaria in a US Traveler - New York, 2008
和文 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5809a3.htm?s_cid=mm5809a3_e
赤血球内原虫であるPlasmodium属として、4種類(_P. falciparum_, _P. vivax_, _P. ovale_, and _P. malariae_) がヒトのマラリア感染の原因となることが知られている。しかし、近年アジアから5番目のマラリア種、_Plasmodium knowlesiが、人獣共通感染病原体として重要であることが報告されている。20以上の種類の_Plasmodium_がヒト以外の霊長類に感染しうるが、最近まで、サルのマラリアが自然にヒトに感染することは公衆衛生においては重要性がない稀な出来事と考えられていた。(マラリア診断の最も基本的な診断検査である)光学顕微鏡による観察において、多くのサルのマラリア種は、ヒトに感染する4種類のマラリアとの鑑別は困難(indistinguishable)であり、厳密な種の特定には、PCR法などの分子学的手法や、microsatellite analysis(マイクロサテライト分析)が必要となる。本報告は米国では数十年間ぶりとなる、米国へのサルマラリア輸入例についての記述であり、フィリピンへの渡航歴のあるニューヨークNew Yorkからの患者において、2008年に診断された。光学顕微鏡の非典型的な所見がきっかけとなって分子学的検査が行われ、_P. knowlesi_の診断が確定した。...現在までのところ、すべてのサルマラリアはクロロキン治療に感受性がある。アジアや南アメリカから合衆国に戻って来る病気の旅行者から、分離されるマラリア原虫を分子分析することにより、ヒトに認められるサルマラリア感染を、より正確に評価することが出来る。最初にサルマラリア_P. knowlesi_感染が認められたのは、1965年、東南アジアの任務から戻ってきたUS軍隊の兵士であった。続いての報告はほとんどなく、確認されていない。2002年にはマラリア研究者達が、非典型的な特徴をもつ_四日熱マラリアP. malariae_症例の増加や、より重篤な臨床症状、より高度な寄生虫血症に気付いている。nested PCR assayにより、これらのマラリア症例の50%以上が_P. knowlesi_であると確認された; 最初に顕微鏡診断されていた四日熱マラリア_P. malariae_は1例もなかった。2001-2006年に同じ研究者達によって行われたレトロスペクティブ評価では、Sarawak, Malaysian Borneoの患者からの960検体のうち28%が_P. knowlesi_であると認められた。以前にはそれらのほとんどが顕微鏡検査で四日熱マラリアと診断されていた。このグループはまた、四日熱マラリアによる重症のマラリアと考えられていた4例の異常な死亡が、後にPCRによってサルマラリア_P. knowlesi_と確認されたことも報告している。さらにヒトのサルマラリア_P. knowlesi_感染は、シンガポール、タイとミャンマーの国境、フィリピン、中国のYunnan Province、フィンランド(マレーシアから帰った旅行者が最初熱帯熱マラリアと誤診されていた)からも報告されている。
Case report:最新のUS患者例は50才、女性、マラリア既往歴なし、フィリピン生まれ、米国に25年住んでいた。2008年10月17日に友人や親族を訪ね帰郷した。そのとき彼女は、パラワンPalawan島で、尾の長いマカークザルの生息地として知られる森林地帯の端にある小屋に滞在した。マラリア予防薬は服用せず、蚊を避ける対策もしていなかった。彼女は2008年10月30日に米国に戻り、頭痛、発熱、悪寒を数日間認めたため医療機関を受診した。救急部で低血圧、血小板減少が認められた。マラリア擦過診が行われたが、最初バベシア病babesiosisと誤診さら、翌日改められ、2.9%の赤血球に寄生したマラリアと診断された。しかし擦過診では非典型的なマラリア原虫種_Plasmodium_ sp.の特徴が観察され、種類を特定することができなかった。女性は種類が不明のマラリア原虫に対するatovaquone-proguanil とprimaquineの治療で軽快した。マラリアの確定診断とPCRによる種類の診断のため、検体がNew York state's Wadsworth Center Parasitology Reference Laboratoryに送られ、感染が_P. knowlesi_によるものであると確定された。

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