感染症速報詳細

記事日付 20090314
タイトル ラッサ熱-英国:マリから(02) 死亡
国名 英国    
感染症名 ラッサ熱
概要 The 1st case of Lassa fever imported from Mali to the United Kingdom, February 2009
和文 http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19145
2009年2月、サーベイランス記録が残されるようになって以来12例目となる、英国へのラッサ熱輸入感染患者が報告された。2009年の2例目の英国への輸入例で、マリでの感染例は初めてのことである。患者の体液に直接接触した可能性のある、117人の英国の医療関係者のリスク評価が行われた。7人の接触者に感染の高いリスクが考えられ、今後21日間健康監視される
詳細な症例報告 2009年2月、20才代の男性がUniversity College Hospital in London (UCLH)に入院した。それ以前に彼はマリで10日間の発熱があり、熱帯熱マラリアと診断されたが治療に反応しなかったことが報告されていた。彼はマリ南部のある村に4週間滞在し、Ivory Coastとの国境にある辺鄙な田舎で仕事をしていた。齧歯類との接触について詳細は不明だが、ネズミなどの齧歯類はその村でもよく認められている。患者は病院に到着時には機敏で、自分の医療歴についてはっきり説明することができたが、すぐに容態が悪化した。ICUにある陰圧室に入れられたが、同日多臓器不全で死亡した。彼のマラリア血液塗抹標本や迅速抗原検査は陰性で、ラッサ熱の診断は、その夜にPCR法で確定された。マリでは、ラッサ熱は報告されたことがなく、地方病ではないと思われていたため、当初、患者のラッサ熱感染のリスクは低いと考えられた。標準的な感染予防対策が行われ、蘇生が試みられたときにもvisors(顔面を保護するおおい)が着用されていたが、全身の防護ではなかった。
議論:今回の症例では、診断がマラリアと報告されていたことと、マリではラッサ熱の蔓延が考慮されなかったことが、臨床診断をより困難にした。その結果、最初ラッサ熱の危険は低いと考えられ、入院の6時間後に患者に臓器不全が認められて、初めてラッサ熱の可能性が重要視された。至る所にバリア予防策がとられたが、最近はウイルス性出血熱に対して高度の予防は推奨されていない。結果的に、76人の病院職員が8時間危険にさらされ、ハイリスクの7人中3人が検査スタッフであった。輸入ラッサ熱患者から医療者が感染することは非常に稀であるが、これは接触者に著しい不安を与える。1例だけ先進国の病院での感染例が報告されているが、これはドイツで、(感染した)患者は臨床症状は示さず、seroconversion(抗体が陽性となること)だけが確認された。今回の症例は、マリ由来と特徴付けられる、初めてのウイルス(感染)である。このウイルスは、近隣諸国で分離されるものと密接な関連があり、広く用いられている診断的PCR testを使って増幅された。マリにラッサウイルスが存在するという血清学的な証拠はあるが、今回の症例は、証明された最初の輸入例であり、この地域から帰ってくる旅行者に新たなリスク評価が必要であることが示唆される

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