感染症速報詳細

記事日付 20090517
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(31)
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 [1] New H1N1 rumour
A New, New H1N1 in Mexico?(メキシコで新々型H1N1?)
和文 http://blogs.sciencemag.org/scienceinsider/swine-flu
15日の米国・疾病対策管理センターCDCでの記者会見で以下のようなodd exchange(興味深い?やりとり)があった
The Washington Post記者:Durango, Zacatecas, and Jaliscoの各州で、今回の豚インフルエンザH1N1とも、季節性Brisbane H1N1とも異なる、さらに新しいH1N1ウイルスが確認されているとの報道があるが、そのような報告が受けているか、また何かコメントはあるか?
CDC's deputy director of influenza division:そういった複数のreports(噂)を耳にしているが、直接的なspecifics(確定情報)を入手したことはない。当局とメキシコ側の間で意見交換中であり、情報が得られ次第公表する。
...
[2] メキシコでの再生産率(R Ro)
情報源: Eurosurveillance, Volume 14, Issue 19, 14 May 2009 、2009年5月14日。
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19212
Why are Mexican data important?(何故メキシコのデータが重要であるか):今回のEurosurveillanceには、仏チームから提出された、メキシコにおける新型influenza A(H1N1)の感染伝播に関する記事が掲載されている。感染伝播を評価する重要なパラメータとして、感染流行から得られ公表されている数値の中で、reproduction rate, R(再生産率?数?)を採用している[20090515.1824 [3]の再掲である]。
What is R?(何故Rなのか?):感染流行の増加率を決める2大要素は、個々の患者によって新たに感染する患者数と、ある患者が感染性のある患者となってから、その患者に二次感染した患者が感染性となるまでの時間である。最初の要素を"reproduction rate(再感染率)"と呼ばれ、 Rと略される。全ての人口が免疫を有していない中で疾患が蔓延する場合には、"basic reproduction rate" (Ro 基礎再生産率) の用語が用いられる。R はfour termsの影響を受ける: 感染力のある患者と免疫のないヒトとの1回の接触あたりの感染リスク、集団内での接触頻度、患者1人の感染力を有する期間、集団内の感受性者(免疫を持たない人)の割合。Rが1より大きければ、各患者が1人またはそれ以上に感染を広げる計算となる。1未満なら、ある程度の患者は発生するかも知れないが、感染流行は最終的に消滅する。ある患者が二次感染患者に感染させるようになるまでの時間を"generation time" (Tg)と呼び、評価する方法により正確な値は変わるが、基本的にはbiological constant(生物学的に一定)である。Rを決定する要素の各数値は、その疾患についての科学的知識、感染伝播背景、人口の免疫状態に基づいて計算できる。しかし、感染流行時のRの値は通常、感染流行曲線の解析、またはtransmission chains感染連鎖を研究することから得なければならない。メキシコのデータから、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスのR (or Ro) およびTg を算出すべく、複数の研究が行われている。今回のEurosurveillanceの論文において筆者は、1種類の exponential(指数) fitting と1種類の real-time estimation modelを用いて、Rは2.2から3.1の間にあると計算した。これは Science誌に掲載された、3つのモデル(1種類のexponential fitting, 1種類のgenetic analysis, および2種類のstandard SIR models for a confined outbreak in La Gloria)を用いて計算された数値1.4-1.6 より高かった。さらに、長期間におきたこのウイルス内の小さな遺伝学的変化の解析により、 Ro estimate of 1.16が得られた。
Why is Ro important in public health?(公衆衛生上R0が重要な理由):reproduction rate は、感染効率を反映するため、感染流行の緩和や封じ込めに取り組む公衆衛生当局にとっては、重要な数字である。例えば、Ro of 1.16だとすると、患者の14%の感染伝播を阻止できれば、最終的に流行を断ち切ることができるが、Ro of 3.1だと、68%の患者の感染伝播を抑えなければならないことになる。これは、人口集団全体がランダムに接触しあうことが前提である。
Why are Ro estimates so different for influenza?(インフルエンザによってRoがこれほど変化するのは何故か):少ない研究で、季節性インフルンザのRoの計算が試みられ、ほぼ1.2から1.4であることが分かっている。しかし、ほとんどの季節性インフルエンザでは、過去のインフルエンザシーズン中に集団内に一定の免疫が成立し、reproduction rateが低くなっている (このような状況では、本来Roと呼ぶことはできない)。感染後に免疫が成立するような疾患の感染流行では常に、後の段階で判明する実際のRより初期のRoは高値となる。これは、集団内で免疫のないヒトの割合が減少していくためである。また、感染者の報告の遅れも、Rの計算に影響することを知っておかなければならない。...
What influences Ro?(Roに影響するもの):感染性患者が感受性のあるヒトと接触した場合の感染伝播のリスクは、感染可能な期間と同様、(感染症の時期・病期によっても変わりうるが)基本的には生物学的に一定であるが、接触頻度は集団ごとに大きく異なる。例えば、学校や幼稚園・保育所などでは、成人に比べて接触頻度が高く、また、文化、家族構成のサイズ、社会的相互作用などによっても異なる。
Why is the Ro from Mexico important?(メキシコのRoが重要な理由):...メキシコのデータが欧州にもあてはまるのか?(欧州に比べ)メキシコの方が接触密度が高い可能性があり、一方で感染流行からある程度の時間経過があり、非感受性者の割合が高まり、ほとんどが免疫のない欧州の状況は、より"true" (higher) Roに近いと考えられる。April-May 2009の新型インフルエンザA(H1N1)感染流行の、メキシコ、カナダ、米国、およびEuropean Union and European Free Trade Association (EU / EFTA) 各国の日別累積報告患者数のグラフで比較すると、半対数目盛では、欧州の(増え方の)傾斜がメキシコと非常に近似しているのがはっきりと分かる。欧州での時間の遅れ(タイムラグ)の評価は困難であるが、およそ1-2ヶ月遅れと見ている。非常にそうである可能性が高いと考えているが、2つの地域での流行のgeneration times が同じだと仮定すると、メキシコのRo値がそのまま欧州にあてはまると考えられる。Roが1をわずかに上回る程度であることから、封じ込めは成功すると考えられる。...
上記の内容に関する参考文献多数紹介(原文参照願います)
[3] Novel H1N1 influenza in people: global spread from an animal source?
情報源: The Veterinary Record, May 9 2009、2009年5月9日。http://veterinaryrecord.bvapublications.com/cgi/content/full/164/19/577 [subscription required]
..."swine influenza" (or "swine flu 豚インフルエンザ")と呼ばれてきたが、ブタに由来することを支持する科学的証拠は確かめられていない。また、このウイルスに同時に感染したブタの臨床症状に関する報告もなく、感染動物に見られるであろう症状の確認もできていない。他のブタのインフルエンザ類似の症状の発症や、無症候性感染もあり得る。..、以下疫学、欧州のブタのインフルエンザウイルス、英国内の豚インフルエンザサーベイ、変化する能力に分けて解説(原文参照願います)

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