感染症速報詳細

記事日付 20090520
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(36) case counts、修正
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 [1] WHO - global update
和文 http://www.who.int/csr/en/
Influenza A(H1N1) - update 33 -- 19 May 2009
http://www.who.int/csr/don/2009_05_19/en/index.html
感染研情報センター(和訳) http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/update33.html
Summary table of cases reported to WHO 30 Apr -- 19 May 2009(抜粋)
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国名: 患者数(死者)Apr 30 / May 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18 / 19
Canada: 19 / 34 / 51 / 85 / 101 / 140 / 165 / 201 / 214 / 242(1) / 280(1) / 284(1) / 330(1) / 358(1) / 389(1) / 449(1) / 496(1) / 496(1) / 496(1) / 496(1)
Costa:Rica: 0 / 0 / 1 / 1 / 1 / 1 / 1 / 1 / 1 / 1 / 8(1) / 8(1) / 8(1) / 8(1) / 8(1) / 8(1) / 9(1) / 9(1) / 9 (1) / 9 (1)
Japan: 0 / 0 / 0 / 0 / 0 / 0 / 0 / 0 / 0 / 3 / 4 / 4 / 4 / 4 / 4 / 4 / 4 / 7 / 125 / 159
Mexico: 97(7) / 156(9) / 397(16) / 506(19) / 590(25) / 822(29) / 942(29) / 1112(42) / 1204(44)
/ 1364(45) / 1626(45) / 1626(48) / 2059(56) / 2059(56) / 2446(60) / 2446(60) / 2895 (66) / 2895(66) / 3103(68) / 3648(72)
Spain: 13 / 13 / 13 / 40 / 54 / 57 / 73 / 81 / 88 / 88 / 93 / 95 / 95 / 98 / 100 / 100 / 100 / 103 / 103 / 103
United Kingdom: 8 / 8 / 15 / 15 / 18 / 27 / 28 / 32 / 34 / 85 / 39 / 47 / 55 / 68 / 71 / 71 / 78 / 82 / 101 / 102
United States: 109(1) / 141(1) / 160(1) / 226(1) / 286(1) / 403(1) / 642(2) / 896(2) / 896(2) / 1639(2) / 2254(2) / 2532(3) / 2600(3) / 3009(3) /
3352(3) / 4298(3) / 4714(4) / 4714(4) / 4714(4) / 5123(5)
発生報告国数: 11 / 13 / 16 / 18 / 21 / 21 / 23 / 24 / 25 / 29 / 29 / 30 / 30 / 33 / 33 / 34 / 36 / 39 / 40 / 40
報告患者数: 257(8) / 367(10) / 658(17) / 898(20) / 1085(26) / 1490(30) / 1893(31) / 2371(44) / 2500(46) / 2440(48) / 4379(49) / 4694(53) / 5251(61) / 5728(61) / 6497(65) / 7520(65) / 8451(72) / 8480(72) / 8829(74) / 9830(79)
[2] PAHO - Americas regional update (18:00 GMT-4)
情報源: PAHO H1N1 flu website、2009年5月19日。
http://new.paho.org/hq/index.php?option=com_content&task=view&id=1394&Itemid=1167>
[3] CDC - USA update
a. updated case count
情報源:: CDC H1N1 flu website、2009年5月19日。
http://www.cdc.gov/h1n1flu/
b. Hospitalized Patients
情報源: MMWR 18 May 2009 / 58(Early Release);1-5 、2009年5月18日。
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm58e0518a1.htm?s_cid=rr58e0518a1_e
Hospitalized Patients with Novel Influenza A (H1N1) Virus Infection -- California, April-May, 2009
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2009年4月15日および17日に、初めての新型インフルエンザA(H1N1)感染が、南部カリフォルニアCalifornia州の2郡で確認されて以来、米国とメキシコを中心に世界中で新型インフルエンザA(H1N1)感染患者が報告されている。米国では、新型インフルエンザA(H1N1)感染関連疾患の初期報告によると、重症度は季節性インフルエンザと変わりなく、ほとんどの患者は入院を必要とせず、概ね基礎疾患のある患者でまれに死亡が報告されることが示唆されている。17日現在、カリフォルニア州では、全61地方保健管轄地域中32ヶ所から、553例の新型インフルエンザA(H1N1)患者が報告されており、このうち、333例が確定例、220例が可能性例であった。553例中、30例が入院となった。州内では、新型インフルエンザA(H1N1)感染に関連した死亡例は報告されていない。17日現在の30例の入院患者の総括と、疾患の重症度のばらつきや潜在的リスク要因を示す、4人の患者についての詳細な報告を行う。この暫定的な総括において、新型インフルエンザA(H1N1)に感染して入院した患者のほとんどが、合併症を併発することなく回復しているが、一部の患者に重症かつ遷延化が見られた。すべての新型インフルエンザA(H1N1)による入院患者に対して、注意深く監視し、発症から48時間以上経過してから医療機関を受診した患者も含め、抗ウイルス薬による治療を行う必要がある。
(入院患者の概要)2009年4月20日の発生以来、the California Department of Public Health (CDPH 州公衆衛生局)と Imperial および San Diego 両郡の衛生当局は、この2郡内にある25の病院すべてにおいて、病院感染対策医師と協力して、検査で確定された新型インフルエンザA(H1N1)症例と可能性例の入院患者に関する、強化サーベイランスを開始した。3日後の2009年4月23日、CDPHはこのサーベイランスの対象を州全体に広げた。患者報告は、probable可能性例(H1亜型ヒトインフルエンザウイルスか、H3亜型ヒトインフルエンザウイルスかの型判定ができない、real-time reverse transcription-polymerase chain reaction [rRT-PCR]法により、インフルエンザAが確認された症例と定義される)、またはconfirmed確定例(CDC protocol for rRT-PCR for novel influenza A H1N1の陽性例と定義される)として行われた。*unsubtypableとされたカリフォルニア州の検体の96%が、最終的には、CDCまたはthe CDPH Viral and Rickettsial Disease Laboratory (VRDL)において、新型インフルエンザA(H1N1)であることが確認されている。この報告では、入院患者とは、新型インフルエンザA(H1N1)の可能性例または確定例で、24時間以上入院した患者とする。30人の入院患者のうち、26例は確定例、4例が可能性例(確定検査中)であり、2009年4月3日から5月9日にかけて発症している。患者が報告されたのは11の郡からで、そのほとんどが州南部または中部であった。最も患者数が多かった(15例、50%)のは、San Diego and Imperialの両郡であった。人種が明らかな26例の患者のうち、17例(65%)がHispanicである。患者の年齢は、生後27日から89歳までで、平均年齢は27.5歳であり;21人(70%)が女性だった。4例の患者(13%)には、発症までの7日間以内のメキシコへの渡航歴があった。30例の患者の中で、ブタもしくは新型インフルエンザA(H1N1)感染が確認されている患者と接触があった患者はいなかった。入院時の診断で最も多かったのは肺炎と脱水だった。19人(64%)に基礎疾患があり;主なものとして、慢性肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患COPD)、免疫不全に関係する疾患、慢性心疾患(先天性心疾患、冠動脈疾患)、糖尿病、肥満があげられる。主な症状は、発熱、咳、嘔吐、息切れがあり;下痢症はまれuncommonであった。胸部レントゲン撮影のある25例のうち、15例(60%)に肺炎を疑う異常影が認められ、うち10例は多葉性、5例は単葉性浸潤影であった。6例が集中治療室に入院し、4例は機械的人工換気を必要とした。5例の患者が妊婦であり、うち2例は、自然流産と前期破水の合併症を併発した;胎児はそれぞれ、妊娠13週と35週であった。院内でインフルエンザAの検査が行われた24例のうち、迅速抗原検査で陽性だったのは16例で、5例が陰性だった;3例は他の検査法(direct immunofluorescent antibody 直接免疫蛍光抗体法 [2 patients] とウイルス培養 [one patient])で陽性となった。30例ではいずれも、血液、尿、喀痰培養(挿管中の患者では気管内吸引もしくは気管肺胞洗浄液培養)において、二次性細菌感染の微生物学的徴候は認められなかった。15例(50%)にoseltamivirによる抗ウイルス治療が行われた;5例では、発症から48時間以内に治療が開始されている。抗ウイルス薬による治療が行われなかった15例のうち6例は、発症から48時間以上経過してからの受診だった。病歴が判明している22例のうち、6例(27%)は季節性インフルエンザワクチンを接種されていた。2009年5月17日現在、23例が退院して自宅に戻っている;(退院した患者の)平均の入院期間は4日間(1-10日間)である。7人の患者が今も入院中であり、平均入院日数は15日間(4-167日間)である[上記URLの表参照]。
(症例報告)
○症例3:生後5ヶ月の女児で、2008年12月前半に、子宮内発育遅延に、動脈管開存と心室中隔欠損の先天性心疾患を伴った、妊娠27週の早産児として生まれた。出産後のNICU入院中にも、 bronchopulmonary dysplasia気管支肺形成異常とrespiratory distress syndrome呼吸窮迫症候群により長期の機械的人工換気や複数回のステロイド療法を必要とし、敗血症と肺炎を繰り返し、慢性貧血と血小板減少症を発症するなど、困難な入院経過を辿っていた。5ヶ月になるまでに人工呼吸器からはずれ、高流量鼻カニュラ酸素吸入で落ち着いていた。しかし、入院第150日目に、新たな喀痰を伴わない咳と発熱が発生し、胸部レントゲン写真では右肺に新たな浸潤影が認められ、次第に両肺野が真っ白になった。複数の血液、尿、喀痰培養が行われたが、原因不明のままであったが;インフルエンザA迅速抗原検査は陽性で、のちにthe CDPH VRDLにおいて、 novel influenza A (H1)であることが確定された。児の感染源調査は現在進行中である。患児は再び挿管され、発熱の3日後より、広域スペクトラムをもつ抗生物質とoseltamivir(kg体重あたり2mg、12時間毎)が開始されている。2009年5月14日現在、危険な状態が続いている。
○症例16;生来健康であった、妊娠28週の29歳の女性が、2009年4月26日に救急室を受診した。10日前から、熱感、痰をともなう咳、悪化する息切れがあった。初診時に異常のあったバイタルサインは、軽度発熱(37.6℃)、呼吸数38回/分、血圧112/57、心拍数104/分、room airでの酸素飽和度87%であった。胸部レントゲン撮影では、両側肺門部の間質性浸潤影と縦隔リンパ節腫大が認められた。全血および生化学検査は、白血球増多11400(segment好中球分画42%、bands45%、リンパ球9%)を除き、すべて正常だった。この患者はICUに入院し、広域スペクトラムの抗生物質(azithromycin and ceftriaxone)による治療が開始された。複数回行われた血液・尿・喀痰の細菌培養では有意な結果は得られず;インフルエンザAの迅速抗原検査は陽性となり、後にCDPH VRDLにおいて新型インフルエンザA(H1N1)が確認された。この女性には、抗ウイルス薬治療は行われなかった。女性は次第に回復し、9日後にamoxicillin服用しながら退院となった。
○症例18;閉塞性睡眠時無呼吸の既往のある32歳の男性1名が、3日間続く発熱、悪寒、喀痰を伴う咳を主訴に、2009年5月5日に救急受診した。患者は、めまいがあり、副鼻腔炎と診断され、2週間前からamoxicillinを服用していたと報告している。体温37.3℃、血圧89/58mmHg、心拍数84/分であった。胸部聴診所見では、両側とも吸気良好であったが、胸部レントゲン撮影では、両側の浸潤影が確認された。全血および生化学検査では、白血球増多(13800、segment好中球94%、リンパ球4%)を除き、正常だった。動脈血液ガス分析結果より、呼吸性アシドーシスと pO2 of 80 mm Hg on room airの低酸素血症が判明した。この男性はICUに入院の上、empiricの広域スペクトラム抗生物質が開始され、第2病日に低酸素血症が悪化し、気管内挿管が必要となった。入院初期の細菌学的検査workupとインフルエンザ迅速抗原検査は陰性であった;入院第2日よりoseltamivirが開始されている。2回目の神速抗原検査と、気管支肺胞洗浄液のウイルス培養で、インフルエンザAが陽性となり、後に新型インフルエンザA(H1N1)であることが確認された。患者の状態は回復し、第5病日には抜管され、10日目に退院した。
○症例29;最近乳がんの診断を受け、腹腔内転移の可能性があり、高血圧症、糖尿病、冠動脈疾患、心血管性疾患、慢性腎障害、肥満があるなど、多くの医学的問題を抱える87歳の女性が、2009年4月21日に意識を失っているところを娘に発見されて救急室に搬送された。入院する2日前から発熱、咳、衰弱が始まっており、起坐呼吸と両側下肢腫脹が新たに認められたと報告されている。この女性は車椅子を使用しており、最近旅行したことはなく、患者との接触も確認されていない。救急室において発熱はなく、血圧は57/37mmHg、脈拍57、呼吸数14/分、room air下の酸素飽和度87%であった。心電図上、Q波のない心筋梗塞が疑われた。胸部レントゲン撮影では両側性の肺炎と、心拡大を伴ううっ血性心不全が認められた。異常検査所見として、白血球13400、Hct34%の軽度貧血、軽度のクレアチニン上昇(1.8mg/dl)、ALT36U/L AST160U/L、トロポニン(29.43ng/ml)とCK(653IU/L)の著名な上昇が認められた。患者は呼吸停止に至り、気管内挿管が行われ、低用量ドーパミンの投与が開始され、心筋梗塞・うっ血性心不全・肺炎と敗血症の疑いの診断でICUに収容された。胸部CTスキャンで、右中葉の完全無気肺、両側上葉のすりガラス陰影、および両側性胸水が認められた。その後に行われた気管支鏡検査では、右下葉気道内にカリフラワー様腫瘤が確認された。複数回行われた血液、尿、喀痰検査では異常が認められず;迅速抗原検査でインフルエンザAが陽性となった;後にCDPH VRDLで新型インフルエンザA(H1N1)であることが確認されている。現在も集中治療が行われているが、危険な状態が続いている。
MMWR編集部注:California州の、新型インフルエンザA(H1N1)による入院患者の初期サーベイランスによると、患者の大半majority が短い入院期間後に退院していることが分かる。基礎疾患のない生来健康であった患者は、合併症を起こすことなく回復し、平均在院日数2.5日(1-7日)で退院した。入院した患者の1/3に、胸部レントゲン撮影で多葉性浸潤影の異常が認められたものの、oseltamivirによる治療が行われたのはわずか9%であり;それでもほとんどの患者が良好な経過を辿っている。5人の妊婦のうち、2人の妊婦は重篤な予後となった;しかし、先行の新型インフルエンザA(H1N1)感染がどの程度影響したかは不明である。California州の入院患者の一部が重症化し、長期間の入院となっている。注目すべきこととして、ICUに入院となった同州の患者6例中3例は、長期に渡り今も集中治療が必要な状態にある。これらの患者の、極端な年齢条件や複数の衰弱性の基礎疾患が、重症度の要因となっている可能性がある。慢性の基礎疾患および妊娠は、季節性インフルエンザでも合併症の重大なリスクとされてきたが、(症例18の)軽度の慢性肺疾患以外は比較的健康に問題のなかった1例では、集中治療と機械的人工換気が必要となった。どのような集団が、新型インフルエンザA(H1N1)感染による入院と重篤な予後に関するリスクを有するのかについては、さらにデータが必要である。2009年4月27日以降、5月15日現在までに、California州の公衆衛生研究所に提出されたおよそ11600人の臨床検体中、9%がrRT-PCR法でインフルエンザA陽性であり、このうち23%が季節性インフルエンザA/H1、28%が同A/H3サブタイプと鑑別された。この結果から、California州全体では、今も季節性インフルエンザウイルスも感染循環しており、インフルエンザ類似症状を呈し、迅速抗原検査では陽性の結果が出る可能性がある。今回のseries(患者のうち)では、迅速抗原検査が行われた中で67%が陽性となったものの、主に外来において検査を受け、CDPH VRDLで確定診断された患者の事例報告によれば、偽陰性や偽陽性の結果がでることも多いことが示唆されている。このためCDPHは、州内においては、rRT-PCR法によるインフルエンザウイルス検査の重要性を強調している。州内の医師に対し、発熱性呼吸器疾患で入院もしくは死亡した患者について、気道の検体を公衆衛生研究所に提出し、rRT-PCR testing, subtyping, およびウイルスの特徴の解析を行うよう、呼びかけている。
Additional information regarding novel influenza A (H1N1) treatment guidance and other CDC recommendations http://www.cdc.gov/h1n1flu/guidance
参考項目 原文に多数紹介あり、参照願います
Table 1. Case characteristics for 30 hospitalized patients with novel influenza A (H1N1) http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm58e0518a1.htm?s_cid=rr58e0518a1_e
Table 2. Detailed clinical characteristics for 30 hospitalized patients with novel influenza A (H1N1) --- California, April 15, 2009--May 17, 2009  http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm58e0518a1.htm?s_cid=rr58e0518a1_e
[4] Mexico - MOH update 09:00 GMT-4
情報源: Secretaria de Salud website (MOH) [Trans]、2009年5月15日。http://portal.salud.gob.mx/contenidos/noticias/influenza/estadisticas.html
[5] News brief: 19 May 2009
米大陸:
USA - additional deaths confirmed: Missouri - 44 year old male http://www.columbiamissourian.com/stories/2009/05/19/st-louis-county-man-swine-flu-dies/
アジア:
Taiwan - 1st confirmed case, history of travel to USA (NY), detected through airport fever screening [in Chinese]
http://www.cdc.gov.tw/ct.asp?xItem=23662&ctNode=220&mp=1

原文リンク