感染症速報詳細

記事日付 20090509
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(17)
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 Travel-associated influenza A (H1N1) with a virus containing a mutation in PB2
和文 7日、オランダ国内で2例目の検査で確定されたインフルエンザA(H1N1)患者が報告された。4月30日にメキシコのカンクンCancunから帰国した53才の女性1名である。航空機内で、痰を伴わない咳を認めた。2日後の5月2日、38.6℃の発熱と咽頭痛があり、一般医を受診した。診断用の検体が提出され、彼女とその夫にoseltamivirが処方された。この患者は後遺症を残さず回復し、4日後に採取された検体では陰性となった。同ウイルスに関しては、direct sequencingにより、ノイラミニダーゼ内の抗ウイルス薬耐性マーカーと、PB2タンパク内のヒト適合マーカーの有無についての解析が行われた。解析結果では、ウイルスはoseltamivirおよびzanamibirに対して感受性があることが示唆された。PB2の627番目のアミノ酸(glutamicacid) は、新たに発生中の豚インフルエンザA(H1N1)ウイルスと同じく、human-host-adapted(ヒト宿主適合性)ではなかった。しかし、グルタミン酸からグリシンへの1個所のアミノ酸置換が、PB2の677位で確認された。この変異は、2009年4月27日以降に提出されている、いずれのインフルエンザA(H1N1)ウイルスでも確認されていない。Lam et al. (2008)は、インドネシアのウイルスの、系統発生に基づくpositive selection(陽性淘汰?)において認められることから、この置換が、高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスの哺乳動物の宿主への適合性を反映する条件としている。この変異は、変異が起きる位置によってインフルエンザA(H1N1)ウイルスの複製が効率的になり、ヒト-ヒト感染伝播をより起こりやすくする可能性がある[PB2 is a polymerase component.]。このような所見がどの程度見られるかについて、現在も研究が続けられている。
参考文献  Lam TT et al., , Evolutionary and transmission dynamics of reassortant H5N1 influenza virus in Indonesia, PLoS Pathog. 2008 Aug 22;4(8):e1000130.
[Mod.CP注-オランダで分離された、2009年新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスPB2遺伝子(ウイルスのpolumeraseの主要部分をエンコードする)における単一変異の検出は、これまでは鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスの症例でしか報告されたことのない、興味深い所見である。このような変異が、感染伝播性とウイルスの宿主の範囲に影響する可能性あると考えられている。しかし、(オランダでは)他者へのウイルス感染伝播が継続して発生していないと見られ、このような結論に至るのは早計かも知れない。それでも、今後も監視が必要な部位であることは間違いない]

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