感染症速報詳細

記事日付 20090514
タイトル インフルエンザA(H1N1)-カナダ:動物衛生(09)、ブタ、
国名 カナダ    
感染症名 インフルエンザA
概要 Risk of introducing new variant influenza A (H1N1) to the UK pig population - update
[20090428.1604の後の更新情報]
和文 http://www.defra.gov.uk/animalh/diseases/monitoring/pdf/h1n1-090506.pdf
(導入)カナダ政府当局は、カナダ・アルバータAlberta州のfarrowing(繁殖)/fattening(肥育) pigの1つの群れで発生した、新たな変異型インフルエンザA(H1N1)の感染流行を報告してきた。この種のウイルスの、ブタの集団での初報告である。同疾患は、メキシコを旅行して4月12日に帰国した1人により持ち込まれた。2000頭以上いるブタのうち、450頭が発病した。24検体中19検体でthe influenza A matrix gene(マトリックス遺伝子)が、15検体でH1遺伝子が陽性であることが確認された。部分塩基配列解析により、マトリックス遺伝子では100%、H1遺伝子でも99-100%の、米国とメキシコでヒトから分離されたウイルスの遺伝子塩基配列との相同性を有することが示された。2009年3月中旬以降、北米各地でヒトでの感染循環を起こしている、この新型の変異インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、(英国を含む)欧州、南米、アジア、中東、Australasia(オセアニア?)にまで広がっている。このインフルエンザは、基本的にヒトの間での感染が継続しており、ヒトでは一般的に軽症であるが、北米では死者も記録されている。
(状況評価) the Canadian Food Inspection Agency and Veterinary Authorities(カナダ食品監視獣医学当局)による調査では、今回の事例は、メキシコで休暇を過ごし帰国した農場労働者であるヒトからブタに感染した、弧発感染例であると結論づけられている。この労働者は、2009年4月12日にメキシコから帰国した後、インフルエンザ類似症状を発症した。4月14日には仕事に戻り、同14-29日の間に、この労働者、生産者、生産者の家族の全員が発症した。4月24日にはこの労働者は回復し、インフルエンザウイルスの検査は陰性であった。同日以降、ブタの間で食欲低下、発熱、呼吸器症状などの症状が見られ始めた。感染のあったブタは回復し、インフルエンザ感染と直接関係のある死亡は発生していない。豚舎は隔離されている。診断のための詳細な検査が続けられている。EU Rulesでは、カナダからEUへの、生きたブタ、豚肉および豚肉加工品の輸出が認められている。TRACES(the European Electronic Trade Notification System 欧州電子取引報告システム)によると、過去2ヶ月間にカナダから生きたブタが運搬された記録はない。ブタのインフルエンザ感染は、エアロゾルの吸入による。インフルエンザウイルスの中には、血中に入り、肉などの組織に侵入する能力をもつものがあることは事実だが、ブタのインフルエンザウイルス自然感染で確認されたことはない。ブタでの感染ではウイルス血症はおこさず、気道および所属リンパ節以外で、ウイルスは確認されない。従って、インフルエンザウイルスが、豚肉および豚肉加工品、またはブタの精液を通じて感染する可能性は極めて低い。欧州委員会(EC)は、カナダ政府当局が適切な時期に適切な対策を行っている、との声明を発表している。この情報に照らし、ECはカナダからのブタおよび豚肉加工品の取引上のルールを変更することはない。これはOIEの勧告にも沿うものである。1999年以来、英国および他のEU圏内では、ブタの間でのインフルエンザに対するサーベイランスが実施されている。その結果によると、全ての豚インフルエンザウイルス株(による感染)は、時折、新たな株による動物間での流行が発生しながら、低レベルを保っているものの、今回の新型変異H1N1ウイルスは、これまでのところ、英国およびEUでは確認されていない。感染発生地域内のブタにおける真の感染発生状況は、今もかなり不透明である。現在メキシコに派遣されているOIE FAOからさらに詳しい情報が得られるものと思われる。...
(結論)カナダからの合法的なブタおよび豚肉加工品の輸入による、英国への新型の変異インフルエンザA(H1N1)導入の可能性は無視できないと考えている。現段階のEUの生きたブタと豚肉加工品の取引のルールは、疾患の導入リスクを減少させるためには適切なものと考える。もう1つの、英国内のブタにインフルエンザが持ち込まれる経路としては、感染者が、養豚場もしくは養豚場の労働者に、直接または間接的に接触することによっておきる場合がある。感染国から最近帰国した畜産労働者、または、感染症症状のあるもの、あるいはいずれもあてはまる場合には、ブタや養豚場と接触すべきでない。このことは、インフルエンザに限らず、多くのヒトとブタに見られる疾患にあてはまる勧告である。当局は家畜業者に対して、on-farm biosecurity measuresの強化を行い、自らの家畜を守ることをアドバイスしている。
There remains no requirement to alter current trade rules for pigs or pig products from Canada.
参考文献 AQIS (1999) Porcine Semen Import Risk Analysis: Technical Issues paper.  http://www.daff.gov.au/__data/assets/word_doc/0020/15284/99-025a.doc
[Mod.AS注-上記で触れられている"AQIS (1999)"には、2.3.17 "Swine influenza virus"の項がある。30ページの"Transmission via semen"では;豚インフルエンザの感染は、エアロゾルの吸入により成立する。豚インフルエンザウイルスはウイルス血症を起こさない。気道および所属リンパ節以外の組織で、ウイルスは確認されない。精液からウイルスが分離されたことはない、とされている。Hareらは、同ウイルスは精液中に存在する可能性があるものの、人工授精による感染は恐らく起きないだろうと述べている。動物のインフルエンザウイルス感染は、ネコのHPAI H5N1ウイルス感染のように、しばしばウイルス血症がおきるが、(古典的)豚インフルエンザの場合は、一般的にウイルス血症は起こさないようである。まもなくthe Avian Influenza Community Reference Laboratory (at VLA, Weybridge, UK) が他のEuropean laboratoriesと共同で行う予定とされる、様々な種の動物における新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスの疫学に関する、実験的な研究の結果が、重大な関心を持って待たれる。豚肉の安全性に関わる、ウイルス血症の問題に関しても評価が行われることが期待される。]

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