感染症速報詳細

記事日付 20090521
タイトル Ehrlichiosis -米国:(ミズーリMO)
国名 米国    
感染症名 Ehrlichiosis
概要 80歳代の女性1名が今年はじめての患者となった
和文 http://www.moberlymonitor.com/homepage/x1518885372/First-case-of-tick-borne-disease-reported
2009年4月後半に、今年初めての患者が確認され、ミズーリMissouri州のダニシーズンが公式に始まった。初めての感染は、セントルイスSt.Louisの南に住む80歳代の女性1名に発生した。この第1例患者は入院したが、その後退院して回復している。この女性が感染したのは、ehrlichiosis [あるいはhuman monocytotropic ehrlichiosis]と呼ばれる疾患で、治療されないままだと、腎不全となる可能性がある。Ehrlichiosisは、the lone star tickが伝播し、突然の発熱と頭痛で発症する。患者はしばしば、倦怠感や筋肉痛、その他のインフルエンザ類似症状を訴える。直ちに治療が行われない場合、死亡する可能性がある。この疾患は、成人でも小児でも、抗生物質doxycyclineで治療可能である。昨年(2008年)も第1例目の患者は4月後半に報告されたが、ダニ刺咬によって記録的なダニ媒介性疾患が発生した。州衛生当局の統計によると、2008年のミズーリ州では、668例のダニ媒介性疾患が発生し、2007年と比べ、およそ100例増加した。州の住民1000人あたり11人のダニ媒介性疾患が計算となる。ミズーリ州で最も一般的なダニ媒介性疾患は、Rocky Mountain spotted fever(ロッキー山紅斑熱), ehrlichiosis, and tularemia(野兎病)である。重症化しやすい50歳以上の年代ではとくに、ダニのチェックは重要である。...以下、ダニ刺咬対策など
[Mod.ML注-偏性細胞内グラム陰性リケッチア類似細菌である_Ehrlichia chaffeensis_を原因とする、Human monocytotropic ehrlichiosis (HME) は、_E. chaffeensis_の自然保有宿主であるwhite-tailed deerの爆発的増加と、ベクターダニである_Amblyomma(キララマダニ) americanum_の生息域の拡大と個体数増加の結果、新興した感染症である。_A. americanum_ が広く生息する米国南東部および中南部に蔓延する。南東部ミズーリ州は、_E. chaffeensis_のwhite-tailed deer-lone star tick間の感染サイクルと、感染性ダニの刺咬への曝露があるという点で、 米国南東部のほとんどの農村地帯と同じ環境にある。南東部ミズーリ州で3年間に渡って行われたの1件の研究では、3日間の発熱(37.7℃以上)とダニ刺咬もしくはダニへの曝露があり、他の感染症の診断がついていない患者102人のうち、29人(28.4%)がHME感染の確定もしくは可能性例であったことが示されている。確定例の定義とは、a)PCR検査陽性で、血清中免疫グロブリンIgG値が1:64(64倍)未満から1:64以上に上昇、もしくはb)PCR陽性なしで、IgGの血清陽転(4倍以上)があり1:128以上、またはc)2つの別々の検査機関で行われたか、または2つ以上の遺伝子をターゲットにしたPCRが陽性、d)1回の血清IgG抗体価が1:256以上、のいずれかを満たすものである。可能性例とは、a) single IgG titers of 1:64 or 1:128, or b) positive PCR results in one laboratory for only one target geneとされた。この研究において、1997、1998,1999年の計算上のHME発生件数はそれぞれ、人口10万人あたり2,4.7,3件であった。臨床症状や検査所見としては、発熱 (100%), 頭痛 (72%), 筋肉痛・関節痛 (69%), 悪寒(45%),weakness衰弱 (38 %), 嘔気 (38%), 白血球減少(60%), 血小板減少(56%), AST上昇 (52%)が見られた。41%の患者が入院した。米国内では、_Borrelia burgdorferi_ (Lyme diseaseの原因菌), _Anaplasma phagocytophilum_ (a rickettsia-likeの微生物で以前_Ehrlichia phagocytophila_と呼ばれ、 human granulocytic anaplasmosisの起因菌) および _Babesia microti_ (babesiosisの起因菌) が、共通の節足動物のベクター _Ixodes scapularis_を共有する。このダニは、white-footed 別名 'deer' mouse (_Peromyscus leucopus_)と共生して、自然界でこれらの病原体を継続して保有する。これらの微生物に起因する疾患は、北東およびupper Midwest 中西部の北?米国内で、この限定されたダニが多く見られる共通の地理的分布を有し;_I. scapularis_ が感染伝播する疾患のいずれかに感染した患者は、同じベクターに伝播される他の疾患にも同時に感染する可能性がある。ダニベクターが異なるため、HME患者が_B. burgdorferi_, _A. phagocytophilum_, or _B. microti_に共感染する可能性は低い。]
診断と治療のガイドライン(tick-borne rickettsial diseases (Rocky Mountain Spotted Fever, HME, and anaplasmosis) 、The Infectious Diseases Society of America and the CDC編、MMWR 2006; 55(RR04); 1-27 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5504a1.htm
関連項目  20070607.1849.
Lone star tick (tick _Amblyomma americanum_): http://www.tickinfo.com/lonestartick.htm
Blacklegged tick or deer tick (_Ixodes scapularis_): http://entnem.ufl.edu/creatures/urban/medical/deer_tick.htm
White-footed or 'deer' mouse (_Peromyscus leucopus_): http://animaldiversity.ummz.umich.edu/site/accounts/information/Peromyscus_leucopus.html

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