感染症速報詳細

記事日付 20090522
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(39)
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 Serum Cross-Reactive Antibody Response to a Novel Influenza A (H1N1) Virus After Vaccination with Seasonal Influenza Vaccine
和文 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5819a1.htm?s_cid=mm5819a1_e
2009年5月19日現在、全米で5469例の新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者が、確定または可能性例と診断されている。さらに41カ国で4774例が報告されている。新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス用ワクチンの開発には数ヶ月を要するため、季節性インフルエンザワクチンが、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに何らかの防御作用を示すかどうかの判断が重要となる。そこでCDCは、ワクチンの研究用に保存されていた、2005-06, 2006-07, 2007-08, or 2008-09インフルエンザシーズンの、ワクチン接種前後の小児と成人の血清検体を用いて、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスへの交差反応性抗体レベルについて調査した。この結果、ワクチン接種前には、小児においては、新型インフルエンザA(H1N1)への交差反応性のある抗体は確認されなかった。成人においては、接種前の18-64才の年齢層の6-9%に交差反応性抗体が認められ、60歳以上では33%に認められた。4回のシーズンのいずれかに、不活化季節性インフルエンザ3価ワクチン(TIV)もしくは生ワクチン(LAIV)を小児に接種されていても、新型インフルエンザA(H1N1)に対する交差反応性抗体反応は誘導されていなかった。成人では、季節性TIVワクチン接種により、18-64才の年齢層において、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスへの交差反応性抗体反応が2倍に増加したが、60(65?)歳以上では、"季節性"インフルエンザH1N1ウイルスへの交差反応性抗体反応は12-19倍に増加したものの;新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスへの反応の増加は見られなかった。これらのデータから、最近(2005-9年)に接種された季節性インフルエンザワクチンが、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対して防御作用のある抗体反応を誘導する可能性は低いことが示唆された。今回の新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対する公衆衛生対応目的に、各支援機関から提供された血清検体は、 1) 北半球の 2005-06, 2006-07, 2007-08, or 2008-09 influenza seasons用に開発されたTIVを筋肉注射 された、もしくは 2) 北半球の 2005-06 or 2006-07 influenza seasons用のLAIVを筋肉注射された提供者からの血清である。...Microneutralization (MN)およびhemagglutination inhibition (HI)assaysは、CDCにおいて通常の手順に従って行われた。今回の研究に用いられたthe seasonal influenza A (H1N1) viruses (A/New Caledonia/20/1999 [2005-06 and 2006-07], A/Solomon Islands/3/2006 [2007-08], and A/Brisbane/59/2007 [2008-09]) は、ワクチン製造と同じく、有精鶏卵上で増殖させた。使用されたThe novel influenza A (H1N1) virus はA/California/04/2009で、 Madin-Darby canine kidney cellsで培養され、全ての行程はbiosafety level 3 practicesに則って、biosafety level 2 laboratoryでお近割れた。The HI assayには0.5%turkey red blood cellsが使用された。血清検体はreceptor-destroying enzymesで処理された。血清中のnonspecific agglutininsは、heme-adsorbedの上、10:1の初期希釈で検査が行われた。MN assayのために、56℃30分の加熱によって不活化し、initial dilution of 1:10で検査が行われた。geometric mean titer (GMT 幾何学的平均抗体価?)は、10未満のtiterを 5、1280以上を1280とした。統計的有意差の検定にはpaired t-testを用いた。(原文で内容をお確かめ下さい)。まず、6-9才の小児28人、18-59才の成人30人、60歳以上の患者42人の血清について、HIとMNアッセイ間の初期比較を行った。...中略...
MMWR編集部注:本研究結果から、近年(2005-9年)に行われた季節性インフルエンザワクチンが、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対する防御効果を付与する可能性が低いことが示唆された。季節性TIVの成人への接種が、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス抗体をわずかに増加させる結果が得られたが、そのレベルの交差反応性抗体が、どの程度の防御効果を示すかは不明である。これらの結果は、ブタ由来である新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスと、最近の季節性ヒトH1N1ウイルスとの間に、かなりの遺伝学的相違があることと一致する:今回調べられた中で、A/California/04/09[=新型インフルエンザA(H1N1)]と、季節性インフルエンザウイルスとの間では、わずか72-73%しかアミノ酸が一致していなかった。因みに、本研究で用いられた、季節性インフルエンザワクチンウイルス株間の、HA1タンパク内のアミノ酸配列の相同性は97-98%であった。今回の分析で調べられた小児の血清数は少ないが、得られた数々の結果から、米国内の小児は概ね新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスにnaive(初めて接する)状態であり、季節性TIVおよびLAIVによって、測定可能なレベルの新型ウイルスへの交差反応抗体は誘導されていなかった。成人で得られた結果によると、ある程度の新型インフルエンザA(H1N1)に対する免疫が、すでに獲得されている可能性があり、特に60歳以上で可能性が高いことが示唆された。考えられる1つの説明として、この年齢の成人の一部は、遺伝子や抗原性の点で、現在の季節性インフルエンザウイルスよりも新型インフルエンザA(H1N1)により近いウイルスに、感染もしくはワクチン接種を通じて、以前に曝露していた可能性があることがあげられる。異なる年代における交差反応性抗体反応に対する評価が進められており、ある特定の年齢集団において、とくに交差反応性血清反応がより明確に示されることが判明するかも知れない。すべての年代の人々が、ウイルスに対する最良の防御効果を獲得するためには、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス株に特異的なワクチンの開発が必要である。
[Mod.CP注-成人への3価の不活化季節性インフルエンザワクチン接種によって、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対する抗体がわずかに増加したとしても、そのような交差反応性抗体が、どの程度の新型インフルエンザA(H1N1)ウイルへの防御効果を示すかは不明である。また、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対して、特に60歳以上の成人で、ある程度の免疫が以前から獲得されていることから、現在の新型インフルエンザA(H1N1)により近いH1N1ウイルス株に、かつて曝露していた可能性が示唆されている。結局、この報告によれば、最近(2005-9年)に季節性インフルエンザワクチンを接種されていても、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対しての予防効果は期待できないということである。全ての年齢層に最適な防御効果を付与するために、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対するstrain-specific vaccineの開発が望まれる]

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