感染症速報詳細

記事日付 20090506
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(11) coincident H3N2 variation
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 Recent mutations away from the 2008-09 influenza vaccine strain among North American A/H3N2 virus coincident with emergence of novel A/H1N1
和文 The BC [British Columbia ブリティッシュコロンビア] Centre for Disease Control (BCCDC) Virology Laboratory は定期的に、BC州全域の市中の医療機関や介護施設から、各シーズンごとに提出されるインフルエンザウイルス検体について、hemagglutinin (HA ヘマグルチニン)遺伝子の塩基配列を解析している。2009年2月中旬までは、BC州内のH3亜型ウイルスのHA遺伝子のアミノ酸配列は、antigenic site Bの1個所のLys189Gln change を除いて、ワクチン株[A/Brisbane/10/07 (H3N2)]に一致していた。しかし3月のはじめの介護施設内流行のウイルス株で、これ以外のワクチン株との相違が検出されはじめた(antigenic site B at Asp160Lys (as well as Lys189Gln) and at antigenic site D at Val229Ala)。この変化は、介護施設での感染流行ウイルスだけに見られ、定点医療機関からの検体には認められなかった。4月第4週の北米の新型A(H1N1)インフルエンザの報告後、BC州内でインフルエンザ類似症状が見られた帰国した旅行者その他の患者で、インフルエンザウイルスの亜型および塩基配列決定などの検査が行われた。4月24日から5月3日までにおよそ900件の気道検体が提出され、大部分はインフルエンザ陰性であった;インフルエンザAが検出されたうち、H1亜型とH3亜型は同数であった。メキシコから帰国した旅行者の患者から採取されたH3亜型ウイルスのうちの1検体について、HA遺伝子の塩基配列を解析し、上記と同じアミノ酸変化が認められた。これらのアミノ酸置換は、Coxによる有意の抗原ドリフトdriftに相当する基準(抗原部位A-Eと規定された2個所以上で、少なくとも2種類のamino acid substitutionsが必要)は満たしていない。しかし、HA遺伝子においてsignal important evolution(伝達上の重要な変化?)である可能性がある。2009年3月後半から4月初旬にかけて、異常な数の、H3亜型インフルエンザによる季節はずれの介護施設での感染流行を報告していた。このためわれわれは、A/Brisbane/10/07(H3N2) が、2009年の南半球および2009-10年の北半球のインフルエンザシーズン用のいずれのワクチンにも推奨されていることから、引き続き、H3N2の変化とreduced vaccine relatedness(ワクチンの効果減弱)を注視する必要がある。他国で現在行われているH3亜型ウイルスの遺伝子塩基配列に関する情報が寄せられれば有用である。BC州では、2009年3月早期のある時期に発生したH3変異があり、メキシコにおいてこのウイルス感染を受けた可能性がある少なくとも1人の帰国した旅行者(検体採取は4月26日のBC)を観察している。同時に、メキシコで3月中旬に初めて報告されたインフルエンザ類似疾患が、新型のA/H1N1ウイルスの新興に加え、このH3N2変異株にどの程度の影響を与えたかについても興味を持っている。
[Mod.CP注-今回の新たな報告では、次期インフルエンザワクチン計画の成果に影響を与える可能性のある、H3N2型季節性インフルエンザウイルスのHA遺伝子に、変化が発生し継続していることが明らかにされている。さらに興味深いことは、同じ新種の変異が、カナダの介護施設内の患者のウイルスと、メキシコから帰国した旅行者からのウイルスに、同じように認められたことである。著者は、2009年3月中旬にメキシコで初めて報告されたインフルエンザ類似疾患の特徴が、A/H1N1ウイルスの新興だけでなく、変異型H3N2ウイルスにも一部影響を与えていることを示唆している。今回の感染流行の異常な特徴の一部を説明できる可能性もあり、直ちに検討される価値のある問題である]

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