記事日付 | 20090508 |
タイトル | 鳥インフルエンザ-エジプト:ヒト(86) 年齢別感染率 |
国名 | エジプト   |
感染症名 | 鳥インフルエンザ |
概要 | Age-specific infection and death rates for human A(H5N1) avian influenza in Egypt. By J. P. Dudley, Science Applications International Corporation, Modeling and Analysis Division, Rockville, Maryland, United States、2009年5月7日。 |
和文 | http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=1919 エジプトで確認されているインフルエンザA(H5N1)患者の年齢特異性と死亡発生状況は、他国で記録されるものと明らかに異なっている。エジプトにおけるヒトのH5N1患者の致死率は34%であるのに対し、ほかの国々では平均66%となっている。エジプトにおいて、10歳以下の小児が占める割合は報告患者の48%を占め、世界全体の平均である約25%の約2倍である。しかもこの年齢層の患者には、2009年4月23日現在までH5N1による死者は認められていない。H5N1患者のうち、女性は2:1の割合で男性より多く、死亡した患者の90%が女性であった。エジプトのH5N1患者の有病率と致死率の、年齢と性による明らかなバイアスについて、調査と解析が必要である。 序文:初めてヒトでの鳥インフルエンザA(H5N1)感染がエジプトから報告されたのは、2006年3月のことであり、2009年4月23日までに報告された累積患者数は、死者23人を含め合計67人である。他のA(H5N1)感染を報告した国々と比較して、エジプトのインフルエンザA(H5N1)患者の年齢分布および死者の性比には、明らかな偏りがある。 方法:エジプトで報告されたヒトH5N1患者の情報を分析し、年齢特異性および性特異性感染と死亡パターンについて、エジプトの患者と他国の患者との、 1st order comparative analysis(一次階数?比較分析)を行った。23日現在入手可能な、the United States Naval Medical Research Unit No. 3 in Cairo, Egypt [2] および the World Health Organization (WHO)のデータを用いた。 結果:エジプトでは、H5N1感染患者の多くが10歳以下の小児で、全報告患者数のおよそ80%が30歳以下の年齢で起きている。エジプトでは、10歳以下の小児の報告された全患者数に占める割合は48%で、世界平均の25%のおよそ2倍近い数字である。2006年3月から2009年3月までにエジプトで報告されたH5N1患者の平均年齢は8才であり、一方、2003年11月から2006年11月までの期間にWHOが世界中で確認した患者の平均年齢は18才であった。エジプト、ナイジェリア、トルコを除く世界各国の累積データと比較した場合、エジプトのH5N1患者の年齢特異性および死亡状況は、アジアやインドネシアで記録された数字と、明らかに異なっている[オリジナルの文では2つの表で示されている]。2009年4月23日までにエジプトで確認されたH5N1患者の致死率はわずか34%であるのに対し、エジプト以外の世界中の国でWHOが確認した患者では66%であった(354人中死者234人)。エジプトにおける死亡発生は、大きく女性に偏っており(90%、女性21人に対し男性2人)、死者は9才より上の年齢の患者でしか報告されていない。他国では患者の性比がほとんど1:1であるのに対し、エジプトではおよそ2:1の割合(女性43人、男性24人)で女性が男性を上回っている。エジプトとトルコ以外の全ての国の0-9才の小児のH5N1による致死率の平均が59%であるのに対し、エジプトで報告されているこの年齢層の患者33人の中で、死者は発生していない。 検討:エジプトにおいて、年齢特異性や死亡患者での性比に明らかな異常があり、不顕性H5N1患者が発生への懸念が高まっている。エジプト国内で、ヒト-ヒト感染が発生したことを示す明らかな証拠はないが、エジプト国内でも家族内発生は報告されており、中国、タイ、ベトナム、インドネシア、パキスタンでは、ヒト-ヒト感染が強く疑われる集団発生も報告されている。致死性のH5N1ウイルス感染患者の最も特徴的な症状は、重症の下気道疾患に、肺胞組織の高サイトカイン血症を伴う病態である。多くのH5N1感染による死者の病理像は、severe acute respiratory syndrome (SARS)患者のそれに類似していたし、2003年11月に中国でSARSを疑われた患者は、後にH5N1感染による死亡例であったことが確認されている。年齢や性に関する偏りは、診断されていない死亡例や、非典型あるいは無症候性H5N1ウイルス患者の存在によってもたらされた可能性もある。ヒトのH5N1ウイルス感染では通常呼吸器症状が伴うとされているが、ヒトでのH5N1感染の臨床像には大きな幅があり、H5N1ウイルスは、肺、脳、大腸、小腸、髄液、腎臓、脾臓、肝臓、咽頭、血液、胎盤から分離されている。ベトナムとタイでは、死に至った非典型例のH5N1感染患者には、胃腸や神経症状のみが認められただけであったとの報告がある。無症候性のH5N1感染は、中国、ベトナム、日本、タイ、韓国から報告されている。H5N1高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルスによる軽症感染例は、多くの国の小児で報告があるが、エジプトのH5N1患者の死亡率が低いことは、疑い例の早期発見と早期治療が要因であると考えられる。世界のH5N1患者の発症から入院までの平均日数は4日間であるが、エジプトで確認された患者のおよそ50%は、初発症状が見られてから24時間以内に受診し、約70%が72時間以内に入院している。 結語:...エジプトのほとんどの患者に病鳥との接触歴があるものの、中国やインドネシアでは、明らかな病鳥との直接の接触歴のないH5N1患者の数も徐々に増加しつつある。H5N1患者の小集積のあった地域において、背景に無症候性もしくは軽症例の鳥インフルエンザ患者がどれほど発生していた可能性があるかの評価や、エジプトでのH5N1のヒト-ヒト感染が発生した可能性を評価する努力が行われるべきである。 |
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