感染症速報詳細

記事日付 20090530
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(51) dynamics
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 [Mod.CP注-以下の2件の報告は、米国内のある学校での感染伝播効率の評価[1]と、cluster analysis(クラスター分析)によるthe 2009 A (H1N1) influenza virusの由来に関する調査[2]である。The transmission rate estimate(感染伝播効率の評価)は、以前に出されていた評価の下限値となり、Fraserらの発表に沿ったかたちとなった。The cluster analysis(クラスター分析)では、the 2009 pandemic influenza A (H1N1) virusが、ユーラシアと北米のブタで感染循環する複数のインフルエンザAウイルス間の、単回もしくは複数回の再集合に由来するとの、系統発生学アプローチから導かれた仮説を支持する結果となった。
[1] Transmission rate
Transmission rate of influenza A (H1N1) 2009 infection calculated from aschool-based outbreak
和文 インフルエンザ封じ込め成功の重要な決定因子の1つとして、その新型インフルエンザウイルス株のtransmission rateがある。Fraser et al (1) は、メキシコでのインフルエンザA(H1N1)感染流行におけるthe basic reproduction number (R0 基礎再感染数)が1.4-1.6の範囲にあり、R0は感染伝播性の重要な指標であり、構成員すべてが感染の感受性を持つ集団での二次感染者数を表すと述べた。この数字は、R0が2-3であったthe 1918pandemicと比較すると低値であった(2)。新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスの感染伝播性をさらに詳細に検討するため、最も大規模な報告のあったインフルエンザA(H1N1)の集団発生について、二次解析を行った。米国のthe St Francis Preparatory School outbreakにおける生徒らからのデータを用いて、学校環境下でのthe outbreak effective reproduction number (R)を計算した。R値は、感染流行中にある感染者から発生する二次感染者数の平均値で、R0にとの比較を行った。この調査では、2009年4月8日から28日の間に自己申告された、ILI (influenza-like illness  インフルエンザ様疾患-- fever AND either cough or sore throat:発熱 +咳/または咽頭痛)についてデータを収集した。 Vynncky et alの提唱した方法に従い、感染流行のgrowth rate(増加率)を用いてRを計算した。Parameter assumptions(パラメーター条件?)は、新型ウイルスの数値が判明していないため、文献などで一般的に報告されている季節性インフルエンザのestimates(概算値)に基づいた。それらは以下のとおり;感染期間は3日間、計算上のserial intervalは5日間。The serial intervalとは、初発患者の発症日から二次感染患者発生までの期間を指す。感染流行拡大局面で得られた毎日のデータから、Rは2.69 (95 per cent, CI 2.20-3.22)と計算された。推定される感染期間が5日間に延長された結果、Rは3.45 (95 per cent, CI 2.74-4.28)となった。RのThe confidence interval [CI 信頼区間] は、曲線推計の不確実性を前提としたMonte Carlo simulationから導かれた。Estimates of R(推計値)は、流行の拡大局面や感染流行全体から得られるデータの使用に対して、ややinsensitive(鋭敏性を欠く)結果となった。我々の計算したRは、学校という状況に特定されたもので、コミュニティでの感染伝播率はこれより低いと思われる(2)。季節性インフルエンザから推定されているパラメータを用いたことから、今後、the 2009 influenza A H1N1 virus(のパラメータ)での確認が必要である。今回の解析により、Fraser et al (1) らによる、今回のH1N1 virus のR0 estimatesは、the 1918 pandemicとの比較において低値であったとの見解を支持する結果となった。
参考文献
----------
1. C Fraser, et al. Pandemic potential of a strain of influenza A (H1N1):early findings. [Published online May 14 2009; 10.1126/science.1176062(Science Express Reports);  http://www.sciencemag.org/cgi/rapidpdf/1176062v1.pdf ].
2. G Chowell, H Nishiura, L Bettencourt. Comparative estimation of the reproduction number for pandemic influenza from daily case notificationdata. J R Soc Interface 22 Feb 2007; 4(12): 155-66; doi:10.1098/rsif.2006.0161 [ http://rsif.royalsocietypublishing.org/content/4/12/155.full ].
3. New York City Department of Health and Mental Hygiene - St Francis Prep Update: Swine Flu Outbreak. http://www.nyc.gov/html/doh/downloads/pdf/cd/h1n1_stfrancis_survey.pdf (30 Apr 2009, accessed 5 May 2009).
4. E Vynncky, A Trindall, P Mangtani: Estimates of the reproduction numbers of Spanish influenza using morbidity data. Int J Epidemiol 2007; 36: 881-9; doi:10.1093/ije/dym071 [http://ije.oxfordjournals.org/cgi/content/full/36/4/881 ]

原文リンク