感染症速報詳細

記事日付 20090530
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(51) dynamics
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 [2] Cluster analysis
Cluster analysis of the origins of the New Zealand A (H1N1) virus
和文 http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19224
2009年3月および4月、新たなinfluenza A (H1N1) virus株がメキシコと米国で分離されている。初期の報告の後、世界中から1万例以上の患者がWHOに報告された。数百の分離株の遺伝子塩基配列が解析され、公開のデータベースに蓄積されている。我々は、新型ウイルス株の遺伝学的解析を行い、cluster analysis approachの手法により、最も近縁関係にある株を同定した。この新型ウイルスには、複数の豚インフルエンザウイルスに関係する遺伝学情報が混在することが示された。PB2, PB1, PA, HA, NP, and NSのセグメントには、北米で分離されたswine H1N2 and H3N2 influenza virusesとの関連性が認められた。Segments NA and M では、ユーラシアで分離されているswine influenza virusesとの関連性が認められた。
○導入:インフルエンザAウイルスは、セグメントに分かれた遺伝子の一本鎖RNAウイルスである。異なるインフルエンザウイルスが同じ細胞にco-infect(共感染)すると、progeny viruses(子孫のウイルス)には、双方の親ウイルスから受け継がれたセグメントが混在する新型ウイルスが生まれる可能性がある。初めてのパンデミックが報告された1918年以来、20世紀中にこのほかに2回のパンデミックが発生した。どのパンデミックにおいても、パンデミックウイルスは、人インフルエンザと鳥インフルエンザに由来する遺伝子のセグメントが、新たな形で再集合していた(1-3)。1918年のウイルス株の起源ははっきりとは分かっていないが、いくつかの研究から、鳥インフルエンザ由来であったことが示唆されている(4,5)。いつ、どのような場所でパンデミックの再集合が起きるのかは謎である。鳥類のウイルスでは、しばしば異なる亜型subtypes間の再集合が起きている。ブタにおいては頻繁に、豚インフルエンザ、人インフルエンザ、鳥インフルエンザの各ウイルスが共感染し、再集合がおきていることが報告されてきた(8-10,3)。さらにブタの気管にある細胞表面のオリゴ糖受容体では、ほとんどの鳥インフルエンザウイルスに親和性の高いN-acetylneuraminic acid-alpha2,3-galactose(NeuAcalpha2,3Gal) linkageと、人インフルエンザウイルスに親和性のNeuAcalpha2,6Gal linkageの、いずれもが発現している(11)。共感染は、アジア全体の小規模の自営農場におけるブタと家禽の共生が関係しており、また、ブタの体内にトリ型とヒト型の両レセプターが発現していることが、宿主の種を超えた再集合のほとんどがブタで発生するとの、the "mixing vessel(混合容器)" conjecture仮説が立てられている。最近、新型のインフルエンザA(H1N1)亜型ウイルスがはじめてメキシコで確認され、その後、瞬く間に世界中で報告されている。2009年5月27日現在、92人の死者を含む12954例の新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者がWHOに報告されている。このウイルス株の由来を知るために、様々なアプローチがなされている。sequence alignment toolsを用いた、 インフルエンザAウイルスの遺伝子を含む公開のデータベースの検討から、8つの各遺伝子セグメントに最も関連性が高いのは、過去10年間にブタで感染循環しているウイルスに由来するものであった(16-19)。これらのウイルスは、1以前にヒト、トリ、ブタで確認されたウイルスの遺伝子セグメントが、1990年代後半に混じりあった(combined)、"triple reassortant" swine viruses由来の遺伝子セグメントを含んでいた(20)。系統発生学的手法からも、同様の結論が導き出されている(16,21)。
○検体と方法:省略、原文参照願います
○結論:2009年5月27日の時点で、入手可能な新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスの塩基配列を比較したところ、数ヶ所のpoint mutationsを除けば、有意の(著しい)塩基配列のばらつきは認められなかった。このため、代表するウイルスとして、A/California/04/2009(H1N1) をその後の解析に用いた。系統発生学手法には多くの種類があり、それぞれに、computing genetic distances(遺伝学的距離のコンピューター解析)、 probabilities(確率)、その他の点で異なる進化モデルが独自に仮定されている。[このような問題点をもつ]系統発生学的手法と違い、cluster methodsは、それよりも複雑な構造を持つtree(系統樹)を検討する必要がない。遺伝子配列のデータをgroup features(まとまったグループ)として解析するため、詳細な系統発生の構造は分からない。このことが、たとえば遺伝学的距離の選択などの仮説を立てる際に、the clustering analysisはより強力な手法となった。監視のない方法によって、由来、宿主、time isolation(?)に関するこれまでに得られた情報に頼らずに、clustersを同定することができる。Figures 2a-2hには、偏差の割合に応じて、第1番目の2つの主構成分に投影したデータが示されている[上記URL参照]。この数字から、すべての患者において、新型ウイルスの塩基配列がブタのウイルスとクラスターをなすことが、はっきりと示されている。各セグメントの最も近い関係にあるものclosest matchesは、Table1にまとめられている。
Table 1. Closer clusters to the new influenza A (H1N1) virus
Segment / closest match / years
PB2 / swine, North America / 1998-2007
PB1 / swine, North America / 1998-2007
PA / swine, North America / 1998-2007
HA / swine H1, North America / 1985-2007
NP / swine, North America / 1985-2007
NA / avian/swine N1, Eurasia / 1982-2007
M / swine, Eurasia / 1980 - 2005
NS / swine, North America / 1998-2007
我々が行った解析結果は、the 2009 pandemic influenza A(H1N1) virus は、ユーラシアと北米のブタで感染循環するインフルエンザAウイルス間の、1回あるいは複数回の再集合に由来するとの仮説を支持するものであった。
参考文献:21件(原文参照願います)

原文リンク