感染症速報詳細

記事日付 20090610
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(61) PCR test
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 PCR検査の精度は90%であり、陽性はpresumptive positiveを意味するにすぎない
和文 http://www.smh.com.au/national/swine-flu-test-results-are-unreliable-who-warns-20090610-c2dl.html
死亡する可能性のある、ヒトの豚インフルエンザウイルスの確認に用いられる検査の診断精度は、およそ90%に過ぎないため、オーストラリア人の一部で、誤ってヒトの豚インフルエンザと診断される人がいる一方、結果が陰性であるため、感染者が自宅に帰されることもある。これまで1200人以上のオーストラリア人が、豚インフルエンザの検査の結果、陽性となった。NSW [New South Wales] Healthでも、インフルエンザA(H1N1)ウイルスの確認に、polymerase chain reaction testing(the PCR testingと呼ばれる)を用いている。9日同局は、それ以上のコメントを控えた。米FDA協力の、WHOの最新情報によると、新たに開発されたrRT-PCR "rapid" testing method(迅速RT-PCR検査法)は、インフルエンザ(H1N1)に対して、"presumptive positive(陽性が推定される)" という結果を与えるだけで、 "definitive positive(確実に陽性である)" というわけではない。このほか報告の中では、患者が実際はウイルスに感染しているのに、"false negative(偽陰性)"との結果が出る可能性も指摘している。PCR testingは、世界中でウイルス確認のため使用されている、WHO公認のbenchmark基準である。2009年4月FDAは、豚インフルエンザ感染流行で全米の検査機関が対応に追われる中、まだ開発中で承認を得ていなかったにもかかわらず、"rapid(迅速)" form のPCR検査法の使用を許可する、緊急使用認可を与えた。4月28日に発表されたFDAの文書には、rRT-PCR swine flu testing "may be effective(有効である可能性がある)"とだけ記載されている。このFDA報告には、陽性結果は、その患者が豚インフルエンザウイルスに感染していることが推定されることを示すが、the stage of infection(感染の事実?)を示すわけではないと書かれ、また、陰性結果だけで、豚インフルエンザウイルス感染の可能性が除外されるわけではない、とも記載されている。WHOは、この新たな検査法の使用にあたってのプロトコール(手順)を世界の検査機関に通達した。この文書では、検査は、豚インフルエンザの"presumptive positive(陽性=感染が推定される)" ことを示すに過ぎないとした上で、採取や送付、取り扱い上の問題などによって、検体中に十分なウイルス量がなければ、false negative[偽陰性=感染しているのに、間違って陰性となる] 結果がでることもあるとしている。このThe rRT-PCR testingは、世界的な大企業の製薬メーカーであるRoche社が開発した。この会社は、2種類の抗インフルエンザ薬の1つ、Tamifluの製造権も保有している。 Roche Diagnostics Australia社の関係者は、 the PCR testing methodの診断精度は"about 90 percent accurate."と述べ、多くの理由から100%の精度を期待するのは不可能だと説明した。その第1の理由は、ウイルスが変異して、少しでも検査対象のウイルスの型から変化すれば、全く検査はできなくなることだと説明した。先週(6月1日の週)、Roche社は予想外の需要により、オーストラリア国内のTamifluの備蓄が品切れになったと発表している。豪国内のH1N1ウイルス感染患者数は、9日に1207人から1224人に増加した。保健相は、豪でのウイルスは軽症であり、入院はわずかに10人前後だと発表している。
[Mod.TY注-インフルエンザA(H1N1)ウイルスの世界での感染拡大は急速であり、診断検査の開発への切迫漢が生じるのも不思議ではない。理想的には、診断検査には、対象となる病原体(この場合はインフルエンザA(H1N1))に対する特異度が100%であり、疑陽性例を出すことなく、全ての感染者を検出できる感度があることが望まれる。また、多数の検体が、安価に、素早く処理される必要もある。しかし、かつてこのような理想の条件を満たす診断検査はなかった。そこで、90%の精度の検査が、患者に適切な時期に治療を受けさせることや、インフルエンザの時間や場所の追跡に、有用であるかという点が問題となる。現時点では、陽性の結果が推定(仮定)だとしても、診断検査が全くないよりずっとまし、である。]

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