感染症速報詳細

記事日付 20090613
タイトル 鳥インフルエンザ-ヒト:(102) H5およびH9抗体、家禽産業従事者
国名 ヒト    
感染症名 鳥インフルエンザ
概要 Antibodies against H5 and H9 Avian Influenza among Poultry Workers in China
和文 http://content.nejm.org/cgi/content/full/360/24/2583
中国南部の広洲市では、H5N1およびH9N2鳥インフルエンザウイルスのヒトでの感染が報告されている。ヒトでの鳥インフルエンザウイルス感染リスクの評価のため、同市で血清学的サーベイランスを行った。2007年3月から2008年7月までの期間に、7種類の職業の職場230か所から、健康な2191人の参加を募った。この調査は、広洲市CDCの倫理委員会の承認と、文書での同意を得ている。これらの対象者から血清検体について、不活化されたH5N2 virus strain A/Turkey/England/N28/1973およびH9N2 virus strain A/Chicken/Shandong/6/1996の、4つのhemagglutination unitsを含有する、hemagglutination-inhibition assayを使って、H5およびH9亜型鳥インフルエンザウイルスに対する抗体が調べられた。これらの結果は、以前に報告したように、neutralization assay against 100 tissue-culture infective doses of H5N1 strains A/Hong Kong/486/1997 and A/Vietnam/1194/2004 and H9N2 strain HK/2108/2003によって、さらに検証された。抗H5抗体の蔓延率は0.2%で、抗H9抗体は4.5%であった[原文では表形式となり、他の情報についても参照されたい]。抗H5抗体陽性であったのは、全員が家禽取引業者poultry retailers or wholesalers であったのに対し、抗H9抗体陽性者は、調査された集団の全てのグループで認められた。H5N1およびH9N2ウイルスが、市場の家禽とヒトの間で感染循環しているとの報告がある。家禽取引業者らにおいて、抗H5抗体陽性率が抗H9抗体陽性率と比較して著しく低かった:poultry retailers(H5 0.8% versus. H9 15.5%, P greater than 0.001)、wholesalers(0.8% versus 6.6 %, P equal to 0.001)。この違いは、家禽で広くH5ワクチンが使用されている一方、H9ワクチンがないことと関係があると考えられる。さらに、家禽のH9鳥インフルエンザウイルス感染では、症状が見られないまま、ウイルスが排泄されていることが多い。中国南部において、H9N2ウイルスと他の亜型鳥インフルエンザウイルスとの再集合発生が確認されていることから、H9鳥インフルエンザウイルスの公衆衛生上の潜在リスクが注目される結果となった。抗H9抗体陽性率が、poultry retailersで高かった (15.5%);これは他の6つのグループに比べ、極めて高率であった(P >=0.006)。同じ市場の他製品の取り扱い販売業者と比較しても、poultry retailersの抗H9抗体陽性率は高率(15.5% vs 1.8%)であったことは、生きた鳥類を扱うpoultry retailersは、特に家禽の処分の際に直接曝露することが原因と考えられる。また、H9鳥インフルエンザウイルスの市場内での感染伝播は、主に、家禽-ヒト感染であって、ヒト-ヒト接触によるものではないことが示唆された。また、poultry retailers(小売り)では、wholesalers(卸売り)と比較して、抗H9抗体陽性率が高かった(15.5%vs6.6%)。この違いは、小売業者が、複数の卸売業者から、複数の種類の家禽を購入するためと考えられる:生きたトリを扱う市場内での家禽同志の感染伝播対策として、ヒトでの鳥インフルエンザウイルス感染防止が重要な役割を果たすと考えられる。
[Mod.CP注-一般人口からの301人のうち、4人(1.3%)が抗H9抗体陽性であり、抗H5抗体陽性者は0だった。中国南部で、H9N2ウイルスと、他の亜型鳥インフルエンザウイルスとの再集合発生が報告されていることから、この発見により、H9亜型鳥インフルエンザウイルスの公衆衛生上の危険性が注目されると、著者は述べている。抗H5抗体反応がほとんど見られないことは、抗H5鳥インフルエンザワクチンが家禽に使用されていることによる可能性もある。抗H9抗体が比較的高頻度に見られたが、著者は、H9亜型鳥インフルエンザウイルスの市場での感染伝播は、主に家禽からヒトへの感染であって、ヒト-ヒトの接触によるものではないと解説している]

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