感染症速報詳細

記事日付 20090619
タイトル インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(69) 他のウイルス感染
国名 世界各国    
感染症名 インフルエンザA
概要 A variety of respiratory viruses found in symptomatic travellers returning from countries with ongoing spread of the new influenza A(H1N1) virus strain
症例定義によりインフルエンザA(H1N1)疑い例と診断された患者の50%以上が、他のウイルス感染だった
和文 http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19242
(北米の)influenza A(H1N1) virus 感染が確認されている各国に、最近の渡航歴がある79例の有症者から採取された臨床検体について、急性呼吸器感染の原因となる、広い範囲の病原体を対象とするmultiple real-time PCRによる検査を行った。この解析により、4例のインフルエンザA(H1N1)ウイルス感染例のほかに、検体のおよそ60%で他の呼吸器ウイルスが診断された。 influenza A(H1N1) virus発生中の各国において、多くの異なる種類のウイルスの感染伝播が同時に発生していることが、再認識された。この結果、臨床症状と疫学的基準による、the definition of suspected cases(感染疑い例の定義)では、インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染と他のウイルス感染症をほとんど区別できないことが分かった。
背景
新たなinfluenza A(H1N1) virus variantは、2009年4月に初めて姿を現したあと、世界中に拡大し、6月17日の時点で、WHOは39620例の患者を報告している。4月30日、欧州委員会は症例定義を提示し、ほとんどの加盟国が採用している。その勧告に従い、スウェーデンにおいては、呼吸器症状があり、38度以上の発熱を伴い、7日以内の感染発生国への渡航歴もしくは感染が確定した患者との濃厚接触があった場合に、インフルエンザA(H1N1)の検査を行うことを推奨している。通常の季節性インフルエンザの定点サーベイランスの期間が延長され、現在や輸入インフルエンザA(H1N1)ウイルスの同定と、接触者の追跡や抗ウイルス薬により二次感染伝播を阻止し、コミュニティ内での持続感染発生の時期を遅らせることに焦点が絞られている。初期予防策実施の可否を決めるための、より確実な根拠を提供する目的で、(人口150万人の)スウェーデンのVastra Gotaland 地域の、全てのsuspected cases(疑い例)患者からの検体について、様々な呼吸器感染症の病原体に対する拡大検査を施行した。
材料と方法
2009年4月24日から6月10日までの期間にインフルエンザ様症状を呈し、米国もしくはメキシコへの最近の渡航歴があり、検査を勧められた患者からの検体による報告である。診察は、Sahlgrenska University Hostpital/stra(in Gothenburg)の感染症医によって行われ、彼らの診察結果と検査結果に基づいた報告となっている。要約すると、投稿歴のある患者全79人のうち、90%に呼吸器症状があり、5%はなかった。残りの5%については呼吸器症状の記載がなかった。66%に38℃以上の発熱があり、29%は発熱が見られなかった;5%が発熱に関し不明であった。鼻咽頭スワブ検体が、Sahlgrenska University Hospitalのウイルス学研究室分子学的診断部に送付され、13 種類のウイルスと2種類の細菌を対象とするmultiple real-time PCR法により検査が行われた: 6 parallel multiplex PCRs on an ABI 7500 instrument。このPCR検査で、matrixタンパクを狙ったインフルエンザA構成成分検査に反応した検体は、追加のヘマグルチニンhaemagglutinin 遺伝子を対象とし、従来からのH3N2・H1N1と新たなH1N1ウイルス株に特異的に反応する、3つのPCR反応を平行して行う追加real-time PCR検査によって、サブタイプ分けされた[原文にprimers and probesの情報あり] 。
結果と検討
全体で、79人の患者からの検体が検査された(男性42人、女性37人、平均年齢30才、1-75才)。週平均10-16検体が採取され、ほとんどが北米への最近の渡航歴のある、呼吸器症状のある患者だった。the new influenza A (H1N1) variantの患者は4例で、興味深いことに、患者の56%から他の病原体が検出された。
Table. Viral aetiologies for the patients(suspected casesの定義を満たすもの), Apr-Jun 2009 (n=79)
病原体 / 症例数 / Percentage
Rhinovirus / 28 / 34
Coronavirus / 8 / 10
Influenza B virus / 3 / 4
Human parainfluenza virus types 1-3 / 3 / 3 / 4
Adenovirus / 2 / 2
Influenza A (H1N1) virus / 4 / 5
Metapneumovirus / 1 / 1
Enterovirus / 1 / 1
Respiratory syncytial virus / 0 / 0
Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia pneumoniae / 0 / 0
Negative / 32 / 39
Total number / 82 / 100
(3人の患者で、重複感染あり)
...the criteria for suspected cases of influenza A(H1N1)は、ウイルス感染の指標としては妥当relevantだが、インフルエンザA(H1N1)に特異的ではなかった。さらに定義を厳しくすれば、比較的軽症であったインフルエンザA(H1N1)ウイルスの患者が漏れてしまう。39℃以上とか筋肉痛などを入れた厳しすぎる(too strict)基準にすれば、感染流行が少なく見積もられてしまう恐れがあり、liberal(緩い)定義だと、多くの患者が他の病原体によるものとなってしまう。...感染流行の時期(初期とピーク時)によって臨床診断によるpositive predictive value(陽性予測値)は上下すること、流行時には、広範囲の病原体診断による他の病原体検出の割合は、50%から低下すると推察されること...PCR法の解説..新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスのような新興呼吸器ウイルスの初期検査に、broad diagnostic testが有効なツールとなりうるだろう。

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