感染症速報詳細

記事日付 20090622
タイトル マラリア-インドネシア:カリマンタン 20090621.2278、P. knowlesi、ヒト
国名 インドネシア    
感染症名 マラリア
概要 _Plasmodium knowlesi_ found in several samples from Indonesia
インドネシア・カリマンタン島初の、_P. knowlesi_ 患者確認
和文 本報告は、インドネシア・カリマンタンKalimantanで初めて確認された、ヒト_P. knowlesi_ malaria患者の報告例である。Kalimantanの重症で合併症のないマラリア患者からの22の血液検体は、ドイツ・ミュンヘンMunichにあるわれわれの検査室における検査で、全てが、臨床的もしくは鏡検の形態学診断により、熱帯熱マラリアもしくは熱帯熱と三日熱マラリアの合併感染と診断された。種に関するmolecular determination(分子学的同定検査)のため、ヒトに病原性のある4種のマラリア全てについて、nested PCR (polymerase chain reaction, amplifying the small subunit ribosomal RNA gene)法による検査を行った。検体の由来と_P. knowlesi_に関する最新ニュースを得ていたため、Singhらが報告したthe _P. knowlesi_ specific primers (Singh B et al. Lancet 2004; 363:1017-24.)も、増幅反応に加えた。22検体中4検体で_P. knowlesi_が陽性となった。(陽性となった4検体)全てが_P. vivax_との混合感染で、_P. falciparum_の感染が有ったのは3検体のみであった。4検体目はvivaxとknowlesiだけで、_P. vivax_の弱いバンドと _P. knowlesi_の強いバンドが示されていた。the ssU rRNA gene の塩基配列解析により、このPCRの結果が確定された。BLAST and direct alignment programs (alignment with sequences from the ssU rRNA gene published in the nucleotide database of the NCBI)を用いて調べた結果、1つの遺伝子配列が、マレーシアで検出されたthe Nuri S-type strain (gi|86155927|gb|DQ350263.1|[86155927])と相同性があることが判明した;その他の検体も、多少の違いはあるものの、_P. knowlesi_ strainsに最も近いもの(match best with)であった。この4人の患者らのマラリア感染では、合併症なく経過し、artemether-lumefantrineにより治療されていた。the ssU rRNA geneやthe csp gene の他の部分の塩基配列解析が現在行われており、詳細について報告する予定である。Kalimantan(ボルネオBorneo)において_P. knowlesi_が報告されることは、ボルネオのマレーシア地域から報告されていることから、不思議ではないが、これまでにインドネシア地域から患者が報告されたことはなかった。保有宿主(_Macaca_マカク species)の分布や東南アジアで発生する患者を考えれば、インドネシアの他の地域や島においても_P. knowlesi_ が確認される可能性が極めて高い。近年、アジアのヒトにおいて、猿マラリア(simian malaria)が、単独感染、もしくは4種類のマラリアthe genus _Plasmodium_ (_P. falciparum_, _P. vivax_, _P. ovale_, and _P. malariae_)と混合感染し、マラリアを発症させたとの研究報告が出されている。20種類以上のthe genus _Plasmodium_がヒト以外の霊長類に感染するが、最近までヒトの猿マラリアの自然感染はまれと見られていた。しかし、アジアにおいては、予測されていたより、ヒトの_Plasmodium knowlesi_感染は多いと考えられる。初めて報告されたヒトでの猿マラリア自然感染は、1965年に東南アジアの任務から帰国した米軍職員であった。2002年にSinghらは、重症化や高度の寄生虫血症などの非典型的な臨床経過が見られる、_P. malariae_(4日熱マラリア)症例の増加を指摘した。この原虫は、鏡検では、形態学的に_Plasmodium malariae_と区別できなかった。鑑別には、PCRや塩基配列解析などの分子学的手法が必要である。nested PCR assayが確立され、これらのマラリア症例の50%以上が_P. knowlesi_であることが判明し、 _P. malariae_(4日熱マラリア)と間違って診断されていたことが分かった。2001-6年の間についての後方視研究では、Sarawak, Malaysian Borneoの患者960人の28%が_P. knowlesi_であることが明らかになった。またこのグループは、_P. malariae_が原因とされていた重症マラリアによる4例の異常死亡例が、後にPCR法で_P. knowlesi_であったことを確認している。このほかにも、ヒトの_P. knowlesi_ 自然感染例が、シンガポール、タイ、フィリピン、中国・雲南省や、これらの国への(フィンランド、米国、スウェーデン)旅行者らでも報告されている。

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