記事日付 | 20090708 |
タイトル | リビアでペストの流行 |
国名 | リビア   |
感染症名 | ペスト |
概要 | ペストは、世界中の局所的な地域で規則的に流行しており、アフリカ以外では散発的な発生を引き起こし、またアフリカ諸国では、依然として風土病として定着しているか、限定的な集団発生を引き起こします。さらに、アジアでは顕著な流行が過去20年間に報告されました。最近、リビアの保健機関は5例の限定的な集団発生を報告しました。 |
和文 | ペストは、世界中の局所的な地域で規則的に流行しており、アフリカ以外では散発的な発生を引き起こし、またアフリカ諸国では、依然として風土病として定着しているか、限定的な集団発生を引き起こします。さらに、アジアでは顕著な流行が過去20年間に報告されました。最近、リビアの保健機関は5例の限定的な集団発生を報告しました。 はじめに ペストはペスト菌(Yersinia pestis)が原因となる人畜共通伝染病です。この疾病は、人類史上2億人以上の死を引き起こしたと想定されています。主にノミによって動物から動物からへと伝染します。人間は、通常感染したノミ(主にケオプスネズミノミ(Xenopsylla cheopis))に咬まれることによって感染します。したがって腺ペストの発生は、一定の時間と場所にノミ、げっ歯動物そして人間が存在した結果です。 紀元前430年、古代ギリシャで発生したとみられているペストの流行の最初の記述以来、ペストは、いくつかの流行の波を起こしながら世界中に広がりました。1998年から2008年の間に、11カ国で死亡者2,116例(致死率約9%)を含む23,278例を超える症例が報告されました。しかしながら23,278例の95%以上は、ペストが風土病と認識されている(主に3カ国、マダガスカル、コンゴ民主共和国、タンザニア)アフリカで報告されました。 腺ペストは、最も一般的な形の病気です(マダガスカルのペストの93%、米国のペストの81%)。適切な治療がなされなければ、腺ペストの致死率は50から90%です。腺ペストは、人から人への直接感染はしません。 肺ペストは、最も頻繁な形の病気ではありません(米国のペストの3%、コンゴ民主共和国のペストの8%、人から人への持続的な感染による発生は時々より頻繁に起こります)が、適切かつ適時の治療がなされないと殆ど全ての症例は致命的となります。この臨床症状から飛沫感染によって人から人への感染を起こすかもしれません。患者を隔離治療することそしてヘルスケア中には、飛沫および接触感染の標準予防策を遵守することにより人から人への感染を有効に防ぐことが現在の知見から分かっています。大規模に使用するための予防接種はありません。 流行の報告 2009 年6月14日に、リビアの保健機関は、改訂国際保健規則(IHR)に従って世界保健機構(WHO)に腺ペスト(1例の死亡例を含む)の疑似症例を報告しました。WHOによって提案された症例定義が用いられました。流行は半遊牧民の環境で起こりました。国際的なチーム による疫学の調査では合計5症例を確認しました。これらのうちの3例は、(エジプトとの国境の近くの)トブルク(Tobruk)の田園地帯の家族で集団発生しました。最初に確認された症例は、肺ペストの症状を呈し死亡した子どもでした。次に2人の兄弟が、腺ペストに感染していると特定されました。疫学的にリンクしていないその他の2例は同じ地区に住む若い女性でした。確認のための検査は進行中です。齧歯類の制御対策は局所的に実行されました。 現在まで報告されている最近の流行は2008年7月にアルジェリアのマグレブ(Maghreb)で発生しました。その時に、アルジェリアの保健機関はラグアト(Laghouat)の3例の死亡例を含む 4例を報告しました[WHOは公式発表していないデータ]。確認された全ての症例は、腺ペストでした。リビアの厚生省によって報告された最近の流行は、1984年に8例の腺ペスト(死亡例はなし)でした。リビアでペストによる最近の死亡例の報告は、1977年に流行した時の11例(うち6例死亡)です。 議論と結論 2007年に改定IHRと改善された監視の実施により、多くの国々において、国々とWHOの間の連携が強くなりました。公衆衛生警報の国境を越えた地域のやり取りを促進する地域のネットワークも誕生しました。リビア保健衛生当局は、ここに記載した流行を報告するのが速かったので、それにより制御方法の速やかな確認と実施が可能になりました。 マグレブ(Maghreb)はもはやペストの土着地域とは考えられません。しかしながら、最近の人間のペストの集団発生は、大きな病巣または数十年間も静止していたいくつかの限定的な自然の病巣が残存しているという問題を提起し、様々な日時と場所で「再発生」の可能性が存続しています。通常ペストの人間への集団発生は、散発的で限定的です。しかし野生動物において、必要とされる広範囲な齧歯類の制御方法では、恐らくペストの保有宿主を根絶するためには不十分であるため、制御方法が行われても発生し続けるでしょう。医療従事者には、もはや風土病でない病気の徴候をよりよく認識する訓練が必要です。ペストの流行地およびその周辺に住んでいる住民に知らせて認識を高めること、地域の保健制度を強化すること、そして患者周囲を対象とする公衆衛生の手段は、ペストが発生しやすい地域での制御戦略の鍵であり続けます。さらに、齧歯類がペストを保有している地域について知識を向上させることは、合理的に病原媒介昆虫と齧歯類を制御するために不可欠なことでもあります。 |
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