記事日付 | 20090620 |
タイトル | インフルエンザA(H1N1)-世界各国:(70) リスク因子 20090619.2260 |
国名 | 世界各国   |
感染症名 | インフルエンザA |
概要 | Risk factors for severe swine flu a wide umbrella under which many stand |
和文 | http://www.google.com/hostednews/canadianpress/article/ALeqM5i7tXz_Z0bUPQEDkFZBk3vhcK4Tew 58才男性の男性でも、38才の女性でも、あるいは9才の男児についても、豚インフルエンザによる死亡の発表の際に当局者は、ほとんどいつも、"underlying health conditions(健康上の問題)" が死亡につながった可能性がある点に言及しようとする。喘息、心疾患、糖尿病、さらに肥満であっても、豚インフルエンザ感染によって入院が必要となり、季節性インフルエンザなら回復するはずの若年者が死亡する理由として使われてきた。新型H1N1インフルエンザウイルスで死亡したのは病弱な人だけ、という印象が生まれてもおかしくはないが、だれもそう主張していない。それどころか、WHOを含め、多くの関係者は、豚インフルエンザによる死者の1/3から1/2は、それまで健康だった人であると述べている。しかし、それまで健康だった、とはどの程度健康であったことを指すのだろう。それは、質問した(聞かれた)人によって違っている。 ウィニペグWinnipegの複数の病院のintensive care units (ICU 集中治療室)で、豚インフルエンザの患者の治療に当たっている、重症管理の専門家は、ICUの患者の中で、インフルエンザで悪化することが知られている健康状態であった典型的な患者はごく一部であり、多くの患者は、季節性インフルエンザの時に見られる典型的な入院患者より若く、発病前は元気な患者であった。大部分において、これらの若くて比較的元気な人々というのは、マラソンランナーのような人を指すわけではなく、ごく一般の人々であって、元気かと尋ねられれば、'Yeah, pretty healthy.'と答える様な人たちである、と答えた。 Ontarioオンタリオ州の公衆衛生当局の感染症対策の責任者は、くり返し使われている"underlying conditions"の用語は、一種の希望的観測 wishful thinkingを反映したもので、新型ウイルス感染により入院・死亡する患者の年齢が異常な範囲にあることの説明を、回避するために使われていると指摘する。このことに執着し、基礎疾患があったから仕方ないと済ませていると述べた。30才の軽症の喘息患者と、喫煙による重症肺疾患を持つ、心疾患のある80才の患者と比べて、同じ基礎疾患とすることに異議を唱え、それは不幸にしてインフルエンザで重症化する通常の患者グループであって、健康成人のグループではないと述べた。通常のインフルエンザシーズンに見られる、インフルエンザおよび合併症による入院患者や死者と比べて、このウイルスは、より若い(幼い)年齢の患者で重症化が見られる事に関する議論がほとんど見られないと述べた。トロントTorontoのMount Sinai Hospitalのインフルエンザ専門の医師は、これは高齢者 older adultsの病気ではないことは明らかだとしている。50歳以下の年代にとっては、季節性インフルエンザよりかなり重症の疾患(significantly more severe disease)であり、50歳以上の人々にはずっと軽い(much better)と説明した。しかし、50歳以下の人々は、ウイルス感染で重症となった完全に健康な人の例なのか、それとも大部分は、"持病があった"という大きな傘の下に入ってしまっている人たちなのか?ニューヨークNew York市の入院患者の41%に認められた喘息のような健康状態を、どのように考えるかで、質問の答えが変わってくる。そのほとんどは、患者にラベルを付けるのが目的であったとした上で、もしあなたに喘息があっても自分を病弱diseasedだと思って欲しくない反面、リスクがあるのだからインフルエンザワクチンはうって欲しいと思うと述べた。毎年のように、公衆衛生当局は、何らかの健康上の問題がある多くの人々が、"healthy"の範囲内にとどまるための盛りだくさんのエビデンスを提供してきた。喘息、糖尿病などの問題や女性の妊娠の有無を調べ、インフルエンザワクチン接種を勧めることを、ニューヨーク市の衛生局・インフルエンザ専門家は提案している。同市でも大規模な豚インフルエンザ感染流行が発生している。16日現在、700人以上の市民が入院中で、市内で23人が感染により死亡した。このような数字を受け、何かパターンがあるのではないかと予測するが、実際のところは、従来より、インフルエンザ感染によってもたらされることが知られているリスクのある健康状態が、重症の豚インフルエンザ患者でも同じように見られていると説明されている。これまでの死者のほとんどは、これまでよく知られている健康上のリスクを持った人たちで、リスクのない死者もいるかもしれないが、今のところそのような人は見られていない。さらに、新たなリスク因子を見いだすかも知れないが、適切な解析を行ったものではないため、確かなリスク因子と言うことはできないと述べた。その1つが、肥満である。米CDCの初期調査では、新型H1N1に感染した場合の予後を、悪化させる因子である可能性が指摘されている。WHOもその可能性に関心を寄せている。WHO・世界インフルエンザ計画のDr Nikki [Naoko?] Shindoは、肥満は世界的な問題であり、もし肥満がリスク因子だとすれば、肥満状態にある人々が非常に懸念されると述べた。ニューヨーク市の(豚インフルエンザによる)死者のうち4人が肥満であった。しかし、肥満がリスク因子とするのか、肥満それ自体か、それとも肥満と切っても切れない仲の、早期の心臓病や糖尿病などの何かが真のリスク因子となのか、についての決定を下すのは早すぎると、NYの当局者は述べている。この質問に答えることは非常に困難を伴うが、是非とも行わなければならず、今回のウイルス感染により最もリスクの高いのが本当は誰なのかを知ることで、利用可能となった場合の豚インフルエンザワクチン接種や、抗ウイルス薬使用の優先順位を決まるだろうと、述べた。 [Mod.CP注-明確に規定されたリスク因子が示されない中、高齢者は、以前に免疫学的に相同性のある病原体に曝露したことによって、ある程度の防御作用を有すると仮定することに、依然として正当性がある。使用可能となった場合に、若年者層に、swine-origin A (H1N1)-type vaccineの接種の優先順位を与え、もし使用できる状態にあれば、高齢者には季節性インフルエンザワクチンの接種を継続することが、妥当だと思われる。] [Mod.MPP注-今回の記事では、現行のインフルエンザA(H1N1)流行における、重症化に関与するリスク因子の同定という問題に関して、タイムリーな議論が展開されている。これまでのどのパンデミックインフルエンザのパターンとの比較でも、必ず強調されるべき1つの因子は、最終のパンデミック発生(the "Hong Kong flu" in 1968)から41年が経過していることであり、また最後のパンデミック以降、基本的な健康状態に大きな変化が起きたことである。例えば、肥満のパンデミックが発生し、もしも肥満がいつもインフルエンザ感染の重症化のリスク因子だとされたなら、リスクのある人の数は、氷山の一角のレベルを超えてしまう。また、多くの国々において、喘息の有病率や致死率が増加しているという変化も見られる。米国の喘息の蔓延率は、1978年以降増え続けている(表 http://www.lungusa.org/atf/cf/%7B7A8D42C2-FCCA-4604-8ADE-7F5D5E762256%7D/ASTHMA1.PDF あり、原文参照願います)。一方で、小児の間のインフルエンザに関するリスク因子の評価研究において、喘息は、いつも変わることなく、入院患者のインフルエンザとその関連死co-morbidityの、重要なリスク因子であり続けてきた。妊娠も、多くのウイルス性疾患において重症化のリスク因子として記述されており、現在のパンデミックにおける重症化のリスク因子の1つとして浮上しても不思議はない。1918および1957のパンデミックにおいて、妊娠女性に過剰死亡が発生している。1957年のパンデミック発生中のニューヨークの妊娠女性の過剰死亡について、同じインフルエンザ発生中の1958,1959,1960年と比較した解析が示されている。本moderatorは、"健康だったとされる人々はどの程度健康だったのか"とか、"influenza A (H1N1) 感染により重症化した'otherwise healthy(それまで健康)'という人々に、それまで気づかれていなかった基礎疾患があったのではないか"、との疑問に心が寄せられつつある。米国の大都市にある主要な救急施設で勤務する中、それまで指摘されていなかった慢性疾患がかなり進行した状態で、(初めて)受診する状況はさほど珍しいものではなく、それは恐らく医療機関を受診するずっと前からあったに違いない。急性疾患で受診し、救急室ではじめて "underlying disease(慢性の基礎疾患)"が判明する(co-morbidity)こともしばしばである。より若年者のグループで、インフルエンザA(H1N1)感染に伴う疾病が多発し、重症化している現象については、高齢者に以前感染循環したH1N1ウイルスの交差反応免疫が反映されている可能性や、初期に感染者がでやすいのは若年者であり、彼らの集合性が感染伝播に機能することのバイアスを反映している可能性、そして最も可能性が高いのはその両者が合わさった可能性である。季節性インフルエンザウイルスワクチン接種による、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに対する血清交差反応性抗体反応に関する研究ではbaselineレベルで、18-64才の集団では6-9%、60歳以上の集団では33%に交差反応性抗体が確認されたことから、若年者はより均一的に、インフルエンザA(H1N1)感染に感受性を有することが示された。これらの観察事項から言えることとして、ワクチン接種の対象には若年者を加えることが賢明であるが、高齢者でもわずか1/3が交差反応抗体を持っているに過ぎず、高齢者も対象に加えるべきである。よって、ワクチン生産は非常に困難な仕事となる。今回のように、パンデミックインフルエンザの活動性が、(文字通りまた比喩的にも)異なる多数のmicroscopes(顕微鏡)によって、前方視的に、これほどつぶさに吟味されたことは、かつてなかったことであり、医療関係者の間では、たくさんの"observations" や "theories."の検証または反証が行われている。... 参考文献(筆者略) 1. Prevalence, Clinical Presentations and Complications among Hospitalized Children with Influenza Pneumonia. Jpn J Infect Dis., 61(6): 446-9, 2008 http://www.nih.go.jp/JJID/61/446.pdf 2. Prevalence and Seasonality of Influenza-like Illness in Children, Nicaragua, 2005-2007. Emerg Infect Dis [serial on the Internet]. 2009 Mar [date cited] http://www.cdc.gov/EID/content/15/3/408.htm 3. Influenza, Pregnancy, and Fetal Outcome. Public Health Rep 1963; 78: 1-11 http://www.pubmedcentral.nih.gov/picrender.fcgi?artid=1915217&blobtype=pdf 4. Influenza and current guidelines for its control. Infect Dis Obstet Gynecol 2001; 9: 193-5. http://www.pubmedcentral.nih.gov/picrender.fcgi?artid=1784660&blobtype=pdf 5. Serum Cross-Reactive Antibody Response to a Novel Influenza A (H1N1) Virus After Vaccination with Seasonal Influenza Vaccine. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2009 May 22; 58(19): 521-4 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5819a1.htm |
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