記事日付 | 20090626 |
タイトル | 麻疹排除-西太平洋地域:最新状況2008 |
国名 | 西太平洋地域   |
感染症名 | 麻疹排除 |
概要 | Progress Toward the 2012 Measles Elimination Goal - Western Pacific Region, 1990-2008 2012年麻疹撲滅の目標への歩み-西太平洋地域、1990-2008 |
和文 | 2003年、WHO西太平洋地域WPR委員会は、麻疹排除を目標とすることを公式に宣言し、2005年、委員会は地域内での麻疹排除の達成期限を2012年と定めた。麻疹排除達成に向けてWHOから勧告された主要戦略として、1)定期予防接種と追加接種 supplemental immunization activities (SIAs)のいずれかまたは両者により、麻疹ワクチンを含む予防接種の2回(MCV1およびMCV2)接種を 、極めて高いカバー率(95%以上)を持って実施すること、2)質の高い症例に基づいた麻疹サーベイランス、3)麻疹疑い症例の検査と麻疹ウイルスの型判定のための、信頼性の高い麻疹検査ネットワークを利用可能とすることなどがあげられている。本報告では、2008年のWPR地域内の麻疹排除に向けた進捗状況について記述されている。 麻疹はWPR地域内にある37カ国のうち、24カ国では排除もしくは概ね排除されていると見られる。しかし、数カ国からは、多数の麻疹患者発生の報告が続いている。2008年の1年間に、合計13万1441人(人口100万人あたり98.4人)の麻疹患者が確認されており、地域内の人口の82%を占める中国と日本の2カ国から、それぞれから131441人、11015人の患者が報告された。これは、確定診断された麻疹患者数の97%以上にあたる。2012年の目標達成に向けて、WPR各国のうち、特に中国と日本の取り組み強化が必要とされる。 定期接種 WPRの37カ国のうち36カ国から、毎年WHOとUNICEFに対して、管理・サーベイランスデータとワクチンカバー率に関する報告が行われている。残る1カ国、人口約50人のPitcairn(ピトケアン) Islands は報告をしていないため、本報告から除外した。地域人口の85%を占める、中国は別に報告する...WPR地域の麻疹排除の歴史は、3期に分けることができる;the period of measles control (1990--1995), the period of accelerated measles control (1996--2002), and the period of measles elimination (from 2003 to the present)である。..この3期の間に、MCV1カバー率は平均80.8%から、89.0%、91.6%と上昇した。中国では、それぞれ85.5 %, 84.4 %, and 88.8%であった。ただし、2003年の85%から2007年には94%に上昇している。各国の1回目の接種時期(MCV1)は、生後9ヶ月未満が2カ国、9ヶ月が5カ国、12ヶ月が26カ国、15ヶ月が3カ国となっている。2003年までは、2回目の接種(MCV2)のカバー率を報告した国は少数であったが、2003-8年の期間に報告する国の数は16から24と変化している。中国を除くMCV2カバー率は、84.1%から96.4%の間にあり、平均92.5%となっている。2008年現在、MCV2の定期接種を行っている30カ国中、12カ国は13-23ヶ月、3カ国が5才、5カ国が6才、1カ国が7才で接種している。 追加接種活動 Supplemental Immunization Activities(SIAs) measles accelerated control (1996--2002) およびelimination (2003--2008)の期間中に、多くの国がSIAsを行った。中国以外のWPRの28カ国の9億4400万人の小児および青年が、SIAsによって接種された。中国では、2003-8年のSIAsにより、14省の約1億100万人の小児と青年の接種を行った。排除のゴール設定後のSIAsカバー率は概ね高くなっている。... サーベイランス活動 2008年までに全ての国で、382か所の研究所のネットワークであるthe measles and rubella laboratory network (LabNet)の支援により、case-based measles surveillanceが行われている。麻疹サーベイランスの質の高さの指標として、1)10万人の麻疹感染疑い症例あたり2人以上が、麻疹でないと除外診断される、2)麻疹疑い患者の80%以上に適切な調査(すなわち、発疹発現から48時間以内の、全ての基本的な検査データ)が行われている、3)発疹発現後28日以内に、80%以上の麻疹疑い患者の臨床検体が採取されている、4)検査室の検体受領後7日以内に、80%以上の検体で検査結果が判明する。2008年の地域内の指標の数値は、順に、1.6、47%、62%、76%となっている。2007年以降WPRの麻疹患者から採取された、地方病感染する麻疹ウイルスの遺伝型genotypesとして、日本のD5、ラオス、マレーシア、ニュージーランドのD9、中国、香港、ベトナムのH1などがある。さらにB3、D4、D8、G3などが分離同定されている。一部は他の地域から輸入された遺伝型であった。 麻疹発生のモニタリング 麻疹疑い患者の、検査(患者の抗麻疹免疫グロブリンIgMの確認など)、他の確定患者との接触による疫学、臨床診断基準(麻疹の臨床診断定義を満たし、検査その他の診断基準により、非麻疹患者として棄却できない)により、確定診断される。1990年以降、中国を除くWPR地域から報告された麻疹患者の年間報告数は、2000年に最大の10万6172人を記録した。2008年に中国以外で報告された患者は14724人で、86%減少した。中国は、2008年131441人の患者(人口100万人あたり98.4人)を報告した。日本では、大規模流行発生の結果、2007年に18000人(100万人あたり140.7人)、2008年にも11015人(同86.1人)を報告した。中国と日本を除くと、2008年の残りの地域の麻疹患者として、3564人(同11.8人)が報告されている。少ない国として、カンボジア1765人、フィリピン880人、マレーシア333人、ベトナム258人、ラオス117人となっている。 各国の排除状況 WPR内の複数の国は目標を達成しつつあり、2006年に韓国は、WHOの推奨する対策を見事に実施し、麻疹排除宣言を行った。2002年以降、オーストラリアの1000万人あたりの麻疹発生数は0.5から6.1の範囲にあり、そのほとんどが輸入または輸入関連の患者であることが証明されている。オーストラリアのワクチン定期接種カバー達成率は高いが、麻疹感染のサーベイランスが全国的には行われていないため、麻疹感染疑い例の報告の感度については、はっきりしない。マカオでは2001年以降は年間の患者数は5人以下であり、...21ある全ての太平洋の島国では、2007年と2008年の麻疹感染報告は0であった。 MMWR Editorial Note: WPR(西太平洋地域)は、2012年の麻疹排除達成に向け進んでいる。定期および追加の麻疹予防接種のカバー率の向上と、改良されたサーベイランスにより確認される麻疹感染例減少がその証拠である。しかし、多くの国で、サーベイランスが基準を満たさず、患者の区分ミスや過少報告につながっている。カンボジア、ラオス、パプアニューギニアは、公衆衛生基盤が弱く、定期接種率の低さから、2012年の達成は困難な作業となっている。...両国で地域人口の82%を占め、2008年の麻疹報告患者数の97%以上が発生した、中国や日本にも困難な点が見られる。両国は、2012年の麻疹排除目標達成に向け、新たな指針と計画を策定した。中国はMCV2の接種時期を早め(7才から生後18-24ヶ月に変更)、小児に接種した医療従事者に奨励金を供与し、入学時に2回の麻疹ワクチン接種証明をが必要とした。日本は、2007年12月に、全国麻疹排除計画を策定し、実施中である。麻疹排除の取り組みにより、麻疹感染による肺炎、下痢、微量栄養素欠乏による小児の死亡を減少させ、UNICEFのミレニアム開発目標No.4(2015年までに、5歳以下の小児の致死率を1990年の2/3に低下させる)の達成につなげることになる。...参考資料、多数 The Western Pacific Region includes 37 countries and areas: Australia, Brunei Darussalam, Cambodia, China, Hong Kong (China, Special Administrative Region [SAR]), Macau (China, SAR), Japan, Malaysia, Mongolia, New Zealand, Lao People's Democratic Republic, Papua New Guinea, Philippines, Republic of Korea, Singapore, Viet Nam, and 21 Pacific island countries and areas including American Samoa, Commonwealth of the Northern Marianas Islands, Cook Islands, Federated States of Micronesia, Fiji, French Polynesia, Guam, Kiribati, Marshall Islands, New Caledonia, Niue, Nauru, Pitcairn Islands, Samoa, Solomon Islands, Tokelau, Tonga, Tuvalu, Vanuatu, and Wallis and Futuna. |
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